第3話 音なき歌(前編)

「お、蝉がくっついてるぞ」

 とてもじゃないが彼の生徒たちには見せられない格好――Tシャツにトランクス、手にはうちわ、真っ昼間だというのに窓枠の上には缶ビール。聖が、網戸越しに外を覗き込んでいる従兄弟に「何ゼミ?」と尋ねると、彼は自信たっぷりに言った。

「知らん」

「頼りない先生だなあ。理科も教えてるんでしょ?」

「正直、そんな細かいことまでは教えないからな。ほら、ここ見てみろ」

 嘉章が網戸を指さしているので、聖もじりじりと窓際まで移動する。窓の向こう、アパートの裏はすぐ川が流れ、その向こうに広がる雑木林から蝉の声が聞こえる。きっと、そちらから飛んできたのだろう。

 その音を背景に蝉が一頭、しっかりと網戸にしがみついていた。しかし、素人の二人には腹側から見たところで蝉の種類など分かるはずもない。聖は頼りにならない小学校教師を無視して、小学生のころに図鑑で仕入れた知識を必死に思いだそうとした。いちばんよく見かける蝉は、確かもっと黒っぽくて大きかったはずだ。

「ほんとだ。アブラゼミ……じゃないことは分かるけど」

「じゃあ何て蝉だ?」

「ちょっとは自分でも調べてよ」

 聖の抗議が聞こえていない振りをして、嘉章は窓を閉めたり網戸を開けたり、蝉を部屋に引き入れようと躍起になっている。こういうとき妙に子供っぽくはしゃぐ従兄弟を見るのは割と好きだったので、聖は文句を言いながらもパソコンの前に座って検索を始めた。すぐに、子供向け昆虫図鑑が引っかかる。

「ヨシ兄、大きさどれく――」

「おっし、捕まえた! 入れ物! 台所あたりに何かないか」

 やはり聞いちゃいない。

 聖が振り向くと、嘉章が虫かご代わりにした両手を得意げに差し出していた。間近で羽音が聞こえるということは、その手の中には蝉がいるのだろう。慌てて台所に走るとインスタントコーヒーの空き瓶が洗って乾かしてあったので、それを取って戻る。

 こうして見る蝉はただの小さな虫でしかなく、瓶の中で羽ばたく様子はやや頼りなげ。少し期待はずれにも思えて嘉章を見ると、彼は捕らえたことを責められたと考えたのか「何だよ。あとで逃がしてくるよ」とやや不機嫌そうに呟いた。

「違う違う、思ったより小さかったからびっくりしただけ。……これはヒグラシ、かな?」

 夏、朝や夕方になると物悲しげな声で歌う小さめの蝉。その美しい鳴き声は耳に優しく、聞いていると暑さが和らぐような気がして聖は好きだったが、こんな姿をしているとは全く気に留めたことがなかった。

「ふうん。ヒグラシって日が落ちてくると鳴くんだよな。この辺、特に裏の林にはたくさんいるぜ」

「そうなんだ。実は僕、捕まえたの初めてだよ」

「この都会育ちめ。……あ、そうだ。ひー、お前蝉の声聞こえないのか?」

 嘉章は瓶を傾けながら聖を見つめ、ニヤリと笑った。

 この従兄弟は『聞き耳』の数少ない理解者で、小さい頃から時には気遣い、時には励ましてくれながら、聖の言い分を笑わずに聞いてくれた。都会で暮らせなくなった自分の保護者代わりを引き受け、この集落の中学校を勧めてくれたのも嘉章。たまにちゃらんぽらんな言動もするが、聖にとっては父親的存在にも近い兄貴分だ。

「もちろん、無理にとは言わない。お前の身体の許す範囲でいいから」

「いいよ、今なら周りに誰もいないし」

 聖が恐れているのは、人の悪意や悲しさを聞き取ってしまうことだ。人や、澪のような人外のモノがいない今なら、多少耳を使っても自分を悩ます音は入ってこないだろう。

 近頃は不完全ながら、力をコントロールする感覚が掴めてきていた。これくらい近い場所の様子を聞くのなら、耳栓は外さなくても大丈夫。聖が目を閉じて耳を澄ますと、外の音がゆっくり、じんわりと頭の中に染み渡ってゆく。

 いちばん強く聞こえるのは、裏の川のせせらぎや水しぶきの音。蝉の声はするが、カナカナカナというヒグラシ特有の物悲しい鳴き声は聞き取れない。他には虫や蛙の鳴き声、林の木々のこすれ合う音、そして羽ばたき。その中には瓶の中の蝉と同じ羽音もあった。

「虫の羽音はするよ。たぶん、この蝉と同じ種類の」

「さすが聞き耳様。……部屋にいても蒸し暑いだけだし、こいつを仲間のところに戻すついでに林の方を偵察してくるか」

 要は自分が外で涼みたいだけなのだろうが、聖は彼の提案に乗ることにした。裏の林の中はこういう機会でもないとなかなか奥まで行けないのだ。少々頼りない気もするが、一応先生が一緒なら大っぴらに探検できる。嘉章は瓶を指で弾くと、「じゃ、着替えてくるからこれ見ててくれ」と言って自分の部屋に消えた。




「蝉のシーズンなんですよね」

 次の日、聖が澪にそう報告すると「しいずんとは何じゃ?」と怪訝そうに聞き返された。

 積極的に覚えようとしているらしく、澪は聖が口に出した外来語をその都度尋ねてくる。熱心さが裏目に出てそのたびに会話が止まってしまうのだが、現代のことを知ろうという澪なりの努力を無駄にしないよう、聖はなるべく丁寧に意味を説明するように心がけていた。

「しず? ずん?」

 そんなことを考えている間にも隣の澪は首を傾げてブツブツ呟いていたので、聖は慌ててフォローを入れる。

「あ、ごめんなさい。シーズンっていうのは、季節っていう意味です。……蝉の声が楽しめる時期になりましたよねって言いたかったんです」

「うむ、季節、な。……夏も盛りじゃからのう。この辺りは蝉も多かろう?」

「恥ずかしながら、昨日、生まれて初めて手に持ったんですよ。ヒグラシっていうんですか? 家の中に入ってきて」

 実際は嘉章が部屋に招き入れたような気もするが、細かいところは考えないことにした。林の中まで連れて行ってあげたのだし、ヒグラシさんにはそれで何とかチャラにしてもらいたい。


 あの後、嘉章と聖は林へと出かけた。実際行ってみると二人の部屋の近くには蝉の声がそう多くなく、聖の耳を頼りに少し奥へと分け入ってからヒグラシを放した。割と長い時間をかけて歩いてきたから、この辺りからとなると結構な距離を飛んできたことになる。

「もう俺らの部屋なんかに来るなよ。お前の仲間はここだぞ」

 嘉章が瓶のふたを開けると、小さな蝉はその声を聞き届けたかのようにぶるぶると羽を震わせて飛び立った。まっすぐに側の木の幹へと向かい、見事に木肌に飛びつく。開放感に溢れた飛びっぷりだった。自然のものは自然の中にいるのが一番いい。さようなら、と聖は蝉に向かって軽く手を振った。

『頑張れよ』

 隣から、ヨシ兄の心の声――柄でもない励ましが聞こえる。特に意識してその声を聞こうとしたわけではなかったのだが、蝉の鳴き声を探そうとしていたからか、聖の耳は周りの音に敏感になりすぎているようだった。

『……どうもありがとう。ご恩は忘れません』

 ちょうどその時、女性の憂いを帯びた小さな声が聞こえたような気がして、聖は辺りを見回す。今、ここにいるのは自分と嘉章だけ。となると、声の主はどう考えても先ほどのヒグラシだろう。

「雌、だったんだ」

 つい口に出して呟いてしまい、聖が嘉章の突っ込みを覚悟して横目で見ると、彼は今逃がしてやった蝉に向けて優しい眼差しを送っていた。意外といいとこあるじゃない、とからかうつもりだった聖だが、心を盗み聞きしたようで気後れしたのと、嘉章の表情があまりに穏やかで驚いたのとで、結局言わずじまいになってしまった。


「すごく綺麗でしたよ、お礼を言った声が」

 一言しか聞いていないにも関わらず、張りつめたような透明感があって、それでいて弾むような丸い印象の声色は、聖の耳に強烈に残っている。ヒグラシの鳴き声を人間のものに置き換えたような美しい声だ。

 それでも聖の中では澪の声には及ばないのだが、澪本人にはまだ面と向かって伝えたことがない。

「綺麗、か」

 一方の澪は、聖の無邪気な笑顔を前にして迷っていた。具体的には二択。目の輝きを曇らせてでも過酷な自然の掟を教えた方がいいのか、それとも笑顔でいられるようにこの話題を流すのか。

 聖は聞き耳であるがゆえに、今後、本人が望まなくてもさまざまな出来事に巻き込まれていくことだろう。現に今、澪が復帰して山に力が満ちつつあるためか、この辺りの森は異形の住人たちで徐々にざわつき始めている。澪のような『あちら側』のモノたちがじわじわと動き出してきているのだった。

 そんなモノに出遭ったとき、使える知識は少しでも多い方がいい。澪は気が進まないながらも、前者を選ぼうと腹を決めた。

「生を必死で全うしようとしておるから美しいのだと、心して見るがよかろう。……蝉の寿命は二十日程度。土の中で何年も何年も過ごし、地上にいられるのはたったそれだけじゃ」

 蝉の成虫は短命だとは知っていたものの、聖は澪の話に衝撃を受けた。昨日、ネットで調べたときはそんなことまで気にしなかったが、空での生活は予想していたよりも遙かに短い。

「他にも、例えば――お主、雌の蝉が鳴かぬ理由を知っておるか」

「いえ、知らないです。そういえば、昨日の蝉も雌みたいでしたけど」

 確かに昨日の蝉は鳴かなかった。聖が素直に首を横に振ると、澪はやや沈んだ声で答えを教えてくれた。

「雄はな、雌を呼ぶ声が大きく響くよう腹が空になっておる。……雌の腹は卵が詰まっておる。だから声が出せぬ」

 聖は、蝉を探すかのように背を預けた杉の梢を見上げた。今日もこの山のあちこちで、雄は相手を求めて声を嗄らし、雌は誰かの声を待っている。決められた時の中で命懸けで恋をし、生き抜こうとしているのだ。

 澪は聖の顔色をうかがいながらも、さらに話を続ける。

「儚さと一途さが、人の心を動かすのであろうな。……これ、そんな顔をするでない。良かれと思って話をしたのじゃが、余計な世話であったかもしれぬ」

「いえ。……綺麗だとか可愛いとかしか感じなかったのが、恥ずかしくて」

「きっと、お主はそれで良いのだ」

「ありがとうございます。……でも、世の中の陰の部分とか、悲しい現実とか、僕はきっと他の人よりたくさん聞いちゃうと思います。そもそも僕がここに引っ越してきたのは、周りの人の話をたくさん聞き過ぎて考え過ぎて潰れそうになったからなんです。人口が少ないこっちなら、うまくやれるんじゃないかって。せっかく覚悟して来たんですから、少しずつ慣れる努力をしていかないと。だから、僕の知らないこと、どんどん教えてください」

 澪ははっとして聖を見つめた。聖には重苦しい話や暗い顔は似合わない、早まったと後悔していた澪だったが、彼の横顔に固い決意のかけらを読み取って考えを改める。

「のう、聖。お主のような優しい者には、その耳は辛いのではないか」

「辛いときもありますけど、聞こえないふりはできないです」

「損な性格よのう。……損だが、立派なものじゃ。頑張るがよい」

 澪が励ますと、彼は照れくさそうに鼻をこすった。

「ええ。これ、澪さまのおかげでついた決心なんですよ」

「何?」

 二度は言いません、といたずらっぽく笑う顔はすっかりいつもの聖に戻っている。

 聖が大人になるのは、澪にとってはごく近い未来でも彼にとってはもっともっと先のことなのだろうとばかり思っていたが、どうもそうでもないらしい。聖もまた、人間という美しくて一途な生き物の一つなのだ。長い時を生きる変化のないモノ、成長を止めたモノはこの世に自分くらいなのかもしれない、と澪は少し寂しく彼を眺めていた。


 それからしばらく経ったある日。

 自宅で夕食を取っていると、嘉章が神妙な表情で「最近、女の子と良く会うんだ」と言い出した。意味が分からないまま、聖は答える。

「ヨシ兄、ストーカーでもしてるの?」

「あの子がストーカーだろう、この場合。……ええと、半月くらい前からな」

 小学校、つまりは職場への行き帰りや仕事の合間にふと外に目をやると、女性がこちらを見て立っているのだという。

「いや、あんな可愛いストーカーなら歓迎だけど。ただ、さすがに毎日見かけるとさ、気になってくるだろ? で、今日はその子と初めて接触してきた」

 ストーカー呼ばわりされたのが気に入らないのか、嘉章はむっとした表情のまま今日の出来事を説明し始めた。

「今日はさ、プール開放の見張りで学校に行ってたんだ。そしたら、プールの外のフェンスに寄りかかるように彼女がずっと立っててな。最初はプールに泳ぎに来た子の父兄だと思って話しかけたんだ。誰かのお姉さんですか、って。付き添いならプールサイドの方に来ませんかって誘ってみた」

 彼女は驚いたのか目を丸くしていたが、やがて笑顔で首を横に振った。一旦は引き下がった嘉章だったが、夕方になり、プールを閉める時間が来ても彼女が同じ場所に立ったままなのを見かけ、再度話しかけたそうだ。

「『プール終わっちゃいましたけど、誰かを待っているんですか』ってさ。そしたらあの子、また首振ってそこに立ってるんだ。……変だなとは思ったけど、彼女に見送られつつプールから引き上げてきたよ」

 ざっと話を聞いてみて、この従兄弟に限ってそれはあり得ないとは思いつつも、聖にはやはり重度の嘉章ファンとしか思えなかった。ただし、嘉章の仕事ぶりを遠くから眺めたい女性が果たして存在するのかどうかは怪しいが。

 聖の前でこそ多少軽めでいい加減そうな印象であるものの、実際の嘉章はしっかり芯の通った好青年という評判で、生徒たちからも慕われている。聖だって、引受人が嘉章でなかったら恐らくこの村には来られなかっただろう。

 長い話に一区切り付けて再び箸を動かし始めた嘉章に、聖は疑問をぶつけてみた。

「何だろうね、それ。ヨシ兄の追っかけの人?」

「未だかつてファンがついたことはないな」

「学生? おばさん?」

「年はお前よりはちょっと上くらいに見えたから学生かな。夏休みだから帰省してきたのかもしれない。黒っぽい服を着てて、長い髪をこう、後ろに三つ編みでまとめてて」

 言いながら、嘉章は髪を束ねる仕草をした。

「……ま、そうは言ってもあの子が誰だかは分からないんだけどな。中学校とかその周りじゃ、そういう子を見かけたり噂を聞いたりしなかったか?」

 嘉章に尋ねられて、聖は一応は記憶の中からそれらしい少女を検索していたが心当たりはない。仕方なく謝ると、嘉章は苦笑いで頭を掻いた。

「だろうな。いや、いいんだ。職場の同僚とかプールに来た親御さんとかにも聞いたけど収穫なかったし、最近引っ越してきた人なんだろ、多分」

「何か分かるといいね。……そんなに気になるってことは、ヨシ兄その人のこと好きなの?」

 それまでは顔色を変えずにしらっと答えていた嘉章が、聖の言葉に明らかに動揺し始めた。飲みかけのビールの缶を両手でもてあそび、瞬きを繰り返したり唇を舐めたりしながら次の言葉を探している。

「好きって、お前よく恥ずかしくなく正面から聞くよな。いや、何だ、ええと――その……可愛いのはもちろんそうなんだけどな。俺は一目惚れとか赤い糸とかそんなもの信じないタチだが、どうしてもあの子から目が離せないんだ。こんなこと今までなかったのにな。……よく分かんねえ。俺、ちょっとおかしいよ」

 軽い気持ちで聞いた聖自身もどぎまぎする嘉章につられてか、赤面していた。恐らく、澪の声に一発でノックアウトされた自分を棚に上げて冷やかしたことも一因――自爆だ。うちは元来、惚れっぽい家系なのだろうか。

「……でもこればかりはどうにもならない」

 嘉章はビールを一気に飲み干すと、深いため息と共にごく小さな声で呟いた。もちろん特別仕様の聖の耳にはしっかりと届いていたが、その声色があまりに深刻そうだったので口出しはしないでおいた。静まりかえった部屋に響くのは、扇風機の音と蝉の声だけ。

「あ」

 聖はそこで、逃がしてやった蝉は雌だったなと思い至った。蝉が人間の姿を取って嘉章に会いに来るなんてことがあるだろうか。もし本当にそうだとしたら、いったい何のために?

 そんなことを知るよしもない嘉章は、思わず声を上げてしまった聖をじろじろと見つめながら、「何だよ、難しい顔して」と訝しげに言い返してきた。

「ね、僕もその人見てみたいな」

「何でだよ」

「……えっと」

 言葉を探し、聖は固まった。

 昔、社会になじめず辛い思いをしてきた経験が、今でも聖を臆病にするときがある。嘉章がいくら聖の力に理解があるとはいえ、『その人、蝉なんじゃない?』と尋ねるのは怖かった。たとえ好意的な反応が返ってくるとしても、答えを待つ間を想像しただけで息が詰まりそうだ。

「僕が直接会ってみれば、誰か分かるかもしれないと思って」

 言わなければという気持ちと受け入れられなかったらという不安から、蝉うんぬんという言葉は聖の喉の奥に留まる。しかし、あれからすでに二週間は経っている。澪によると蝉の成虫の寿命は二十日だから、万一聖の予想通りだとすると、彼女が嘉章の前に現れる理由を確かめられるのは差し引き七日程度の短い間しか残っていない。それは、嘉章が彼女に思いを打ち明けられるタイムリミットでもある。

 嘉章はといえば聖の語調の変化を敏感に聞き取っていて、聖が耳を使おうかと暗に提案しているのに気づくとやんわりと断った。

「お前な。……まあそんなに心配するな。今度会ったら俺が自分で聞くから」

 力を使うことが少なからず聖の心の負担になると理解しているからこそ、不安にさせないようにと、嘉章は微笑んだ。人の心が聞こえてしまうために、人が少ないこの村に転校してきた従兄弟。聖は優しいから、自分の耳があれば解決することを放ってはおけないのだろう。しかし、人の腹の中は決してきれい事だけではできていない。

 冷や汗すらかき始めている聖の緊張を吹き飛ばすように、嘉章は冗談めかして彼の頭をばしばしと叩いた。

「ちょっと、やめてよ。背が縮むじゃない」

「おお、悪い悪い。……男としてはそれくらいはしないとな。残念ながら、今回はお前の出る幕はないの」

「そっか。それもそうだよね。じゃあ僕、応援だけは勝手にさせてもらっていい?」

「勝手になら、いくらでもどうぞ。……ありがとな。さ、メシの続きだ」

 嘉章が箸を取ったのを見て、聖も食事を再開する。この話はこれで終わりのはずだった、のだが――。

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