ワンダフルライフ~素晴らしきかな、冒険者生活~

大谷 山人

プロローグ

 この眩しい朝日は、きっと自分のこれからの未来を暗示しているに違いない。

 そう思うのは、根拠のない期待によるものか、不安に押しつぶされないよう自分に言い聞かせているだけなのか。


 リーゼロッテ=マイヤー――リズは空を見上げて、そう思った。

 ショートボブの赤髪は陽光を反射しルビーのようにきらめいている。使い込まれた胸当てと腰の剣から受ける印象は男装の麗人風である。しかし、猫を思わせるようなハニーブラウンの大きくつぶらな瞳がかわいらしい印象を与え、彼女がまだ少女であることを教えてくれる。


 今日から、この王都で冒険者として生きていくのだ。この道を自分に示してくれた兄様のためにも頑張らねば。


 三十年ほど前に王都の北東に生まれた迷宮。そこは魔物の源泉であり、王都に大混乱を巻き起こした。

 王国軍の活躍もあり、魔物たちを迷宮まで押し戻すことはできたが、根絶やしにするには至らなかった。

 しかし、際限なく湧き出る魔物たちに王国軍だけで対応することは困難であり、国王は冒険者を募り、迷宮の攻略をなし得た者に報奨金を与えることにした。

 結果として、多くの冒険者が迷宮探索に乗り出すこととなった。そして、冒険者による人口増加は需要が増えるということでもある。冒険者向けの商店や宿屋を提供する者たちも王都へ集まり、いまや迷宮は王都の主要産業の一つとなった。


 この迷宮探索で名を上げる――それが、リズの目標だ。譲れない思い、叶えたい願いのためにここに立っている。立たせてもらっている。

 よし、と自分に気合を入れ期待と不安を胸にリズは冒険者ギルドへと足を向けた。

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