手の中のことば
花ほたる
0、声を運ぶ娘
巡る気持ちを、その手に預けて。
追いかける風、包むことば、届けて。
声の包み方。
そう、とてもかんたん。
両手を上に向けて、水を受けるみたいに差し出して、包みたいことばを話して。そして手をぎゅっと握って、そのまま伝えたい人のところへ歩いて行って。
そっと手を開けば、そこから流れるのはさっき包んだ自分の声。
「おはよう」
届けたい人……いまは両親。親は笑っておはようと言った。上手になったねと褒めてくれた。
みんなが生まれながらに持っている「贈り物のちから」、それがわたしにはこの、手に声を包むちからだった、ってこと。
でも、運んでいる途中で手を開いたらそこから声はこぼれていく。欠けた言葉は戻らない。だから慎重に、だいじに運ばないといけない。わたしはわたしの小さな町で、あてにならない伝言係として重宝されていた。
これはそういう、お話。
あとはいいかしら、それじゃあ語り手、お願いね。
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