尾道にて幽霊の正体を見たること
尾道は男女が入れ替わる「転校生」という映画でも世に知られし、街なるが誠に不思議な街なり。確かに不思議な街なりし。実は昨年の真夏のことになりしが、三原の道の駅を夜の休憩所と思い定め、昼間から夕刻にかけて尾道の街を散策したることありき。誠に暑き日なりしが、夏祭り真っ最中のとある神社の階段を登りたる途中にあまりの人の多さに突然、目眩を感じ階段を踏み外し倒れかけしを屈強な若者に助けられたことあり。その瞬間に吾の脳裏には過去に不幸な縁のありたる多くの者を見たり。すでに去りし父の顔や、関係をせし女性たち友人などの顔でなりし。多くは行方は知らねど、すべてを吾を恨みたる者なり。しばし目眩は続きしが、多くの周囲の表情は顔の面の脱ぎたるごとく本来の顔に戻りたる。あたか仮面を取るがごとく一人本来の顔に戻りたるが、しばし吾の顔を見たる彼らは鬼や悪魔を見たるがごとく顔を醜くゆがめたり。やっと呼吸も整いたる頃に、周囲を囲みたる顔も善意あふれる人々の顔にて戻り、真剣に吾の体調を案じている様子なり。
その時は恐怖を覚えざるが、今は真に恐ろし体験なり。提灯の灯る夕刻の神社の鳥居に下に幽霊を見たりと実感せり。
認知症の入院したる前に義父は多くの不気味なことを口走りたり。糞尿を垂れ流し。連れ添いし妻の顔の判別できず、すでに他界したる父や母のことを行方を聞き、真っ白な白い障子を指さし鎧甲の武者が立ちたるが、誰ぞと真顔で問いたる時などはさすがに不気味なりし。一瞬たりと言えど、吾も義父と同じ幽霊を見たること違いにあらず。吾が尾道にて体験したことを人に語り、多くの人が吾の悪行とともに語り継ぎたれば、勧善懲悪の怪談として成立せることもありなん。尾道のとある神社にて生きた人生に値する恐ろしき体験を生きながらにしてしたることなり。すなわち良き人に交わり、良き景色を眺め、良き人生を歩むべしと。
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