散文詩弐・命の値段

ある日、生徒がこう言った。


「先生、命はおいくらですか?」


先生は、笑って答えた。


「命はいくらでもないよ」


そう、命は金では買えないのだ。


「先生、なら命は無価値ということですね」


生徒の言葉に、先生は怒る。


「そんなことを言うんじゃない」


と。


でも、と生徒は続けて言った。


「だって、人は簡単に、自分の命を終わらせちゃうじゃないですか」


「だって、人は簡単に、他人の命を終わらせじゃうじゃないですか」


「だって、人は簡単に、


誰かの命を笑ったり、


テレビの向こうで、遠くの何処かで、


誰が死んでも、


気にする事すらしないじゃないですか。


たった一つしかないのに。


なら、命はお金で買えないんじゃなくて、


お金を出す価値も無いのでしょう?


壊れたら捨てればいい。


捨てたモノは気にしない。


命は結局そんなものなんですね」


先生は、言葉に詰まる。

それは何故?


「ねぇ、先生、私はまだ子供なんです。


だから教えてください」



―命は、おいくらですか?



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