夜をおくる

ハローイチイチゼロサン

夜をおくる

家に帰ったら、まずお茶を入れようと思っていたのに。


コートを脱ぎ、

ストーブをつけて、

座ったら、なにもできなくなってしまった。


特段難しいことがあったわけではない。

厭になるほど疲れるようなことも、ひどく悲しい出来事もない。

自分の気持ちに理由をつけられるような出来事は何もなかった。

ただ座って、電気ヒーターの赤い光を見つめている。


今日がもうすこしだけ暖かければよかった。

ほんのすこしでも、暖かければよかったのにと思う。


こんな日は、ただじっとして、

じっと心を固めて、頭の上から夜が通り過ぎるのを待つ。

ひとつ、ふたつ、時が過ぎて、

みっつ、よっつ、音を数え、

朝が来たなら、きっとすこし楽になる。

素敵なサプライズや正体不明のヒーローに期待するよりも、それがずっと確実なチェックポイント。



カーテンの隙間から覗く雪。積もる音がやけにうるさい。

アルミサッシの鍵は閉まっていて、窓の端がすこし曇っていた。

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