クロスライン
相葉 翔
イントロダクション
月明かりも見えない都会の夜の公園。そんな中霧のように突然現れる不気味な影、そしてそれを追う少年少女。
息も絶え絶えになりながら不気味な影の先を見る。公園の外の歩道もうすぐそこまで迫っている。
「行かせるかよ」
少年は拳銃のようなものを取り出すと影に向かって2回引き金を引く。かちり、という音に少し遅れて影の一部が削れる。影は突然の出来事になすすべもなく転倒し、もがき苦しむ。
それに合わせて少女は左腕に付けていた大きな宝石のついたブレスレットに右手で何かを描く。
するとブレスレットは形状を変え、瞬く間に刀へと変化する。鞘に収めたままいつでも抜けるように小さく構えると短く、そして強く息を吐きゆっくりと空気を吸う。同時に腰を低くし、さらに速度を上げて影へと迫る。
少年も同様に拳銃のようなものの銃口を刃に見立て少女と同じ体制を取り、いつでも刀を抜けるように構え、腰を低くして速度を上げる。すると銃口から先に不自然なほど長い刃がどこからともなく出現する。
そして影がもがきながら少年少女を見た瞬間―
交差した2つの刃に影の体は何が起こったか理解する前に霧散した。
「なんとか、終わった…」
乱れた息を整えながら、少女は刀を元のブレスレットの形に戻し、その場に座り込む。周囲には時折通る車のエンジン音と少年少女の荒くなった呼吸のみ。
幾分息が整い、少女は立ち上がろうとするのと同時に後頭部に固いものを押し付けられ一瞬で体が硬直する。
「じゃあ、そいつを渡してもらおうか」
息を整えながら拳銃のようなものを少女に突き付け、少年は静かに言い放った。
交わることのないはずだった二人の出会い。それは少女の日常から非日常へ踏み入れたことで起こったもの。
長く日常と非日常を行き来する少年との出会いは、多くの運命の歯車を動かす始まりに過ぎないことに、まだ誰も知らない。
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