CHILDHOOD ISLAND

銘尾 友朗

プロローグ

 男は窓辺にたたずみ、外の夕闇に包まれた景色を眺めていた。カーテンには細やかな刺繍が施され光沢があり、質の良さがわかる。傍らのテーブルや椅子も落ち着いた黒光りする上質な物だ。

 男は優雅な動きで、テーブルからベルを取って振った。チリンと軽い音が鳴る。背後で影が揺らぎ、別の男が現れた。


「お呼びでしょうか、マスター。」


「パーティーの準備は、どの程度進んだのだ?」


「会場は、もうすぐ配置し終えるところでございます。」


 配置、と含みを持った言い方に、男は満足そうな高笑いを暗い室内に響かせた。


「素晴らしいぞ!…では、招待状の準備をせねばな。」


「そちらの方も、手配を始めております。」


「そうか。楽しみにしておるぞ。」


「おまかせください、マスター。では、準備に戻ります。」


 二人目の男は来たときと同じ様に、音もなく去って行った。マスターと呼ばれた男は、薄雲の中にぼうっと光る月を見ながら、まだ来ぬその日を思い浮かべ、微笑んだ……。

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