第71話 勘違い
青空に花火の音が響き渡って文化祭が始まった。
一般人も入場自由の学園祭のため、毎年賑わっている。
「それで、何処か行きたいとこあるか?」
俺は文化祭実行委員によってつくられたマップを片手に智愛と並んで校庭を歩いていた。
校庭は運動部の屋台などが立ち並んでいて中央にステージが作られている。さすがに朝なので他と比べれば人通りは少ない。
「午前中って体育館は何がやってたかしら?」
「えっと……最初にオープニングセレモニーも兼ねた吹奏楽部の演奏で、その後に演劇とけいおん部のライブってなってるな。そんで、午後になったら……」
「ミスコンね」
「そうです……いく?」
「うぅん、別に吹奏楽部に仲がいい友達がいるわけでもないのよね。それより朝早く来すぎたし、昼からは忙しいだろうから、なにか少しお腹に入れたいわね」
「そんじゃあ、どっかの喫茶店でもやってるクラス行ってみるか」
「そうしましょう」
俺たちはそう決めて校舎内へと入っていった。
喫茶店は各学年でいくつかやってるクラスがあるほどに人気だ。その上でどの店を選ぶかということになる。
「名前とかコンセプト見てると2年と3年のはがっつり系が多い気がする」
「まあ、遠慮なくやってる感じはあるわよね。逆に1年生のは初めてっていうのもあって、結構自重してるというか、落ち着いてる気がするわ」
「1年のがよさそうだな」
「そうね。じゃあこのまま1階ね」
昇降口から中に入って、階段前を通り過ぎて1年生の教室のある廊下へと足を運ぶ。
たどり着くと、入口前で宣伝とかをしている子たちや、お客さんで賑わっている。幾つかのクラスは列ができてるようだ。
「えっと、3組が菓子系で5組はスイーツ系らしいけど、どっちがいい?」
「うぅん……」
あるきながら悩んでいるうちに3組の前にたどり着く。
外の壁にメニューが張ってあって、智愛はそれを見て首をひねる。
「5組も見てからきめよっ」
「あいよ」
決め手になるメニューがなかったのか智愛はそう言ってさらに廊下を進んでいく。
俺も置いてかれないように続いて歩いて行くが、流石に賑わっているから距離を狭めざるを得ない。
途中で、すれ違う人とどうしてもぶつかってしまう場合があり、智愛が少し後ろに押し流されてきた。
「大丈夫か?」
ひとまず、受け止めておく。
「だ、大丈夫……」
「まあ、混んでるから仕方ない」
気づけば5組の近くまでついていたようで、5組の勧誘の子が廊下で頑張っていた。
そんな一人の子がこちらにターゲットを向けてくる。
「そこの先輩方! うちのクラスでどうですか! カップルメニューも用意してますよ!」
そして盛大に勘違いされているようだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます