第58話 水中の建造物

 酸素ゲージが視界上に表示されたのを確認しながら潜水を開始する。

 やはり、スキルがあるだけで全然違く、かなり動きやすいし酸素ゲージの減りも遅い。

 湖の中はそこそこ深く、底が見えるが若干ぼやけているといったところだ。


「さて、モンスターは今のところいないけど」


 この前、釣ったやつがいる時点でどこかにはいるはずだ――いない一つの可能性はあるけど、ありえるのか微妙だから、ひとまず底がしっかり見えるように下に向かって潜水する。

 近づいていくと底には、倒れて中に落ちたと言わんばかりの木が何本か横になって転がっているのと――どでかい建造物が存在した。


「遺跡さん発見しちゃったよ。前はなかったよなこれ」


 湖のしようか水面からじゃさっぱりわからなかった。だけど、前に潜った時に流石にこの大きさを見逃すほど自分が間抜けと思いたくない。

 そして、モンスターは未だに見えないがもしかしての想像がつき始めた。


「レベルさがあるうえで、この前は水中適性ないから襲ってきたのか? ってことは、本能的か動きを見て俺からむしろ隠れてるとか……このゲームのAIならありえるな」


 まあ、水中で考察してる場合じゃないな。俺は遺跡に近づいてみる。このまま方向でもいいけど、入り口が開くからくらいは確認しておいたほうがいいと考えるからだ。いざ、報告して明日に態勢を整えてきたら開かないとか笑えないからな。

 扉に手で触れて見ると、当たり前だが石のざらついた感じがする。


「とりあえず押してみるか」


 少し力を入れて押して見る。水中だから力入れにくいんだけどな。

 最初は微動だにしない――ついでに横にも開こうとしてみるが、結果は変わらず。


「マジかよ……」


 少し遺跡の周りを泳いで観察してみる。他にも特に扉らしき場所は見当たらない。ただ、ちょうど正面の扉から反対側に位置する場所についたところで、違和感を感じる。水中では鷹の目はしっかりと発動しない仕様になっているらしく、近づいて確認してみる。


「通れるか……?」


 岩が砕けて穴ができている。大柄な体とか装備をしてなければ通れそうな気はするが先がどうなっているかわからない。だが、男は度胸という言葉がある。俺は慎重にその穴にはいっていく。感覚的に進行方向は遺跡内部な気がするんだけど。

 細いその通路は最初は下に向かって進んでいくが、途中から上向きになっていた。そして40秒ほどしたところで通路を抜けることができた。


「ぶはっ!」


 通路を抜けると水のない空間にたどり着いた。石の色とかを見る限りはここが遺跡内部のようだ。


「入口これかよ……とりあえず、入れるだけいいか」


 俺は水から上がりはせずに再び通路を使って外へと戻ってみんなのもとへと戻った。


「お姉ちゃんどうだった?」

「遺跡があった」

「マジで!?」

「ただ、正面の扉は水の圧なのか設定なのか開かなくてな。小さい穴通って中に入るしかない。多分、がっちりした金属鎧だときついと思う」

「それは、べつに泳ぐときだけ装備変更しておけばいいんじゃ……」


 ナツに言われて俺は思わず無言になった――確かにその通りだ。


「アキ……どんまい」

「うぅ……」


 絶対、今顔真っ赤になってる。めちゃくちゃ恥ずかしい。なんであんなに自信満々に説明しちゃったんだよ。少し考えればわかることじゃん。


「ほ、他に気づいたことはありますか?」


 ヒノカちゃんの苦笑いが、なんとも言えない。その優しさはダメージになりかねないよ。


「多分、水泳とってないとモンスターに水中で襲われると思う。この前はもってない状態で水中に引きずり込まれて、容赦なく襲われたから。今回全く出てこなかったのはそれくらいしか理由が思いつかない……まさか、釣りしてるときだけでてくるとか都合のいい条件じゃないと思うし」

「そうですか……となるとやはり攻略メンバーは水泳持ちか水泳をとるってことになりますね」


 俺はひとまず着替える。髪だけはどうにもならないけどドライヤーなんて持っていないし、電気がないから使えない。


「ひとまず、戻りましょうか。遺跡が見つかっただけでも十分な収穫です!」

「だね!」


 こうして俺たちのパーティーの探索は、重要な手がかりを発見して終了することになった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る