第59話 夜の番5

 早いことで時間は夜になった。


「お兄ちゃんは明日が大仕事なんだから休んでてよかったのに」

「そうはいかんだろ……といいたいけど、単純に落ち着かないんだよな」


 焚き火を囲んで草をすりつぶしながらナツとそんな会話をする。

 水中の遺跡については俺とティアの2人で行くことになってしまった。というのも、火山の上に遺跡があるが、耐熱対策がどうしても見つからなかったらしい。

 イベントも明後日の昼がタイムリミットだ。せめてこのクエストはクリアしたいという気持ちがみんなにもあるらしく、火山は大人数で回復を繰り返しながら攻略するという方針になったらしい。

 その結果が水中遺跡の少数精鋭だ。まあ、その他に水泳できる人間がいない状態にあったのもあるらしい。どんだけ人気ないスキルなんだよ。


「絶対好きな人とかいそうなものだったのにな」

「今生き残ってるのって戦闘とか攻略に慣れてる人が、お兄ちゃんたちみたいに徹底的に生存優先で探索妥協みたいなことしてた人たちばっかりだからね。そうなると水中戦闘ってそこまで主流じゃないし、今のところ必須ではないから」

「そういうもんなんだな」

「そういうもんなんだよ。むしろ、そんな中でお兄ちゃんたちだけで遺跡探索って心配だけどね」

「俺も心配だよ」

「えぇ……なつもいこうか?」

「ひとまずは頑張ってくるさ。ダメだったら午前中で撤退って予定だしな。男の意地を見せてやる」

「その姿で言われてもな~。リアルでも着て見れば?」

「断る……でも、そうだな。終わったら少し外で遊びたいかもな。映画とかでも見に行くか」

「へへっ、いいね。なつもどっか行こうかな」

「まあ、まずは文化祭だけどな」

「……それもそだね。って、お兄ちゃんすりつぶしすぎてすごいことになってる」

「ん? ……うおっ!?」


 気づけば手元ですりつぶしていた氷結草がドロドロになっている。もともと氷属性でもはいっているのか水をだしていたらしい。


「……うん?」

「どしたの?」

「いや、なんかこのままでも飲めそうだなと」

「いや、さすがにそれはやめたほうがいいとおもうけど!?」

「まあそうだよな……」


 でも、何か気になる。ただの感だけど、この状態にしたことが今までなかったから気になる。

 俺はアイテムインベントリから解毒ポーションをとりだして混ぜてみた。


「何してんの!?」

「いや、実験……おっ?」


 解毒ポーションは氷結草の成れの果てと混ざり始めると、白い液体になった。そして空き瓶にそれを入れてみるとアイテム化された。


「【耐熱ドリンク・弱】……できちゃった」

「へ? お兄ちゃん、今耐熱ドリンクっていった?」

「ほ、ほら」


 俺は思わずアイテムをナツに渡す。


「……うわ、ほんとに出来ちゃった。あれ、調合って一個つくればクオリティ気にしなければレシピ制作できるんだよね?」

「お、おう」


 正直、なんで解毒ポーションと混ぜて完成したのかはわからないが、その夜交代の時間になるまで材料の限りアイテムを作り続けた。そして、交代のミドリにも作り方を教えてから就寝した。

 思わぬところで大きな前進を起こすことができたのだ。

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