第46話 クエストとカニ
鋭い眼光をこちらに向け、大きな両翼を持つそれは両足を巣の中心であり、俺たちの目の前に降り立った。
『ギャアアァァ!』
そして俺たちのほうへと体をしっかり向けるとひるみのステータスが1秒出るほどの大咆哮をしてくる。
【リザード・ドラゴン Lv40】
ボスマークこそついていないものの完全に格上のモンスターだ。
「やばいやばい、逃げろ!」
「卵どうするの!?」
「クエストでもない限り取る必要はとりあえずねえだろ。今回の目的は花だ花!」
「あ! それもそっか!」
俺とリーフは一目散にその場から洞窟の出口へと向かって走る。
『グルゥ――ガッ!』
ドラゴンはそんな声を上げて何かを飛ばしてきた。ただ、そっちを振り返る暇も正直ない。一つだけわかるのは壁にぶつかったそれが出した衝撃の轟音を聞くに食らったらまずいということだ。
「はぁ……はぁ……」
「はぁ……怖かった」
どうにか洞窟の入り口から飛ぶように森の中へと逃げ込むことができた俺達は、後ろから追っかけられてないことを確認して少し休んでいた。
「さすがにあればやばいね……」
「あとで掲示板にこの島にやばいのがいるって書き込んでおいてやる」
「優しぃねぇ……すでに何人か餌食になってそうなものだけど」
リーフが言ってるのも正しい。死んでしまったら元のフィールドに送り返されるから、掲示板に書き込むこともできないわけだからな。
「あれ? なんか通知きてる。クエスト?」
「あ、俺もだ」
逃げるのに夢中で気づいていなかった。
「『リザード・ドラゴンの討伐』『リザード・ドラゴンの卵採取』『リザード・ドラゴンの撃退』? 3つもでてる」
「あ、俺もそうだ……あれと戦闘状態になるとかがクエスト発生条件なのか?」
「でもレベル的に考えると卵採取が現実的だよねー。えっと、海にいる運搬船までひとつ運べばクエスト達成だって」
「何とも言えない条件なことで……報酬は?」
「ドラゴンの卵を運んだらドラゴンの食用卵が報酬でもらえるみたいだよ」
「……え? なに、あの巣においてあるのはしっかりと有精卵っていう設定がなされてるの!?」
「まあ、文面からみるにそういうことじゃないかなー……どうする?」
「ひとまず、今日は疲れたからやる気はないぞ……そうだな、海の運搬船でも確認しながら砂浜とかに何かないか探しに行ってみるか?」
「そだねー。綺麗な貝殻とか見つけられたら、アバターにも使えるし、あたしは大賛成」
ということで、洞窟で目的のもの自体はゲットできた。俺たちは島の砂浜へと向かってあるきだす。
日が天高く上がりきった頃に、砂浜にたどり着くことができた。現実では秋で肌寒くなっているというのに、ここは真夏のように感じる。
「水着いっとく?」
「断る。と言うか持ってきたのかよ」
「いや、水着ならすぐ作れるから」
「断る!」
何が悲しくて防御力落としてまで水着にならないといけないんだ。
「ぶー……あ、あの船そうじゃない?」
砂浜を少し歩いていると突然リーフがそう言って砂浜の端を指差す。そちらを見ると、たしかに大きめの帆船があり、中にいくつかのボックスが設置されている。
「もしかすると、ドラゴン以外にもなんか納品クエストがあるのかもな。この数は」
「だねー。フルコンプ目指しちゃう?」
「……考えておく」
帆船の中でボックスを確認して砂浜に戻ったところで地面の中から俺の肩くらいまでの全高のあるカニがでてきた。
「……茹で蟹?」
「いいね」
俺とリーフが武器や魔法を出す体勢をとるとさらに、数体のカニが地面の中からでてくる。だが、レベルはこちらのほうが8ほど上だ。敵じゃない。
「甲殻なんてしったことか!」
「『アース・ハンマー』!」
ものの数分で亡骸になったカニが砂浜に転がる。カニのハサミなどをそこそこ手に入れられたが、それ以上の収穫があった。
「リーフ、見ろ!」
「どうしたの?」
「カニから釣り竿がドロップした!」
「この島どうなってるんだろう……まあ、でも魚取れるようになったかな? スキルとってる?」
「とってないけど、スキルレベル1の特殊効果ついてるんだよこれ!」
「おぉ~。それはラッキーアイテム」
喜びながらふと空を仰ぐと、日が徐々に落ち始めている。大きな収穫とともにこの日は拠点へと戻ることにした。
「はしゃいでるアキちゃん可愛かった」
「突然なんだよ……てか、他の人に言うなよ」
「わかってるよー」
帰り道の途中でそんなやりとりがあった。たしかにちょっとはしゃぎすぎてたかもしれないな。
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