第31話 球技大会とフレンド
夜になっていつも通りにOAOにログインする。
薬草を集めをしてデイリークエストを終わらせた後は球技大会も控えているので寝てしまおうと思っていた。
そしてやることをやり終えた頃に、ひとつのメッセージが届いた。
『完成したけど、いつ受取にくるー?』
リーフからだ。どうやら依頼してたものが出来上がったらしい。まあそれくらいの時間なら全然大丈夫だし、今日のうちに行っちゃうかな。
「『今からで大丈夫か』っと」
すぐに大丈夫だという返信がくる。俺はそれを受け取ると、リーフの店へと小走りで向かった。
最初の頃は少し迷いかけたりもしたが、数回くるうちに道は完璧に覚えてたどり着くことができる。
扉を開けるとカウンターの奥にリーフがいた。扉を開けた時になる鈴の音でこちらを向いた。
「あ、いらっしゃーい」
「どうも」
店内を歩いて進んでいくとが、この前よりまた服が増えたというか、種類が変わってる場所がいくつかある気がする。
「どうかしたー? 欲しい商品があるなら、売るわよー。お店だからね」
「いや、商品が変わってるようなーって思って」
「ゲーム内でも紅葉とか始まったから秋物に衣替えしただけだよ」
「あぁ、そういうことか。納得した」
ゲーム内でも四季が反映されてるんだから、服だって衣替えしないと違和感出るもんな。
まあ、全然気にしない人だっているんだろうけど。ゲーム内だし。
「それで受け取りに来たんだよね?」
「まあ、そんな感じ」
「それじゃあ、トレードトレード」
そう言ってすぐにトレード申請がきたので、画面を開く。
【L.C 虹色の花飾り】
毒耐性・強 植物アイテム採取率UP
効果を見てみるとこれかなりすごいんじゃないか。毒耐性は言わずがなも植物アイテムについては、【調合】を始めたばかりの俺にとっては、とても役立つ能力だ。
装備しようと思い手の中にだしてみる。
虹色の少し大きな花のついたヘアピンのような装飾品だ。正直、嫌な予感とは言わないまでも想像はしていたが、男がつけるには抵抗があるようなないような。
まあ、カチューシャとかで花満開とかよりはいいと思っておこう。
ただこれ、どこかで見た気がするんだよな。
「どうかした?」
「いや、すごい効果ついてるのと見た目がすごいなって」
「でしょ! かわいいよね! 絶対アキちゃんに似合うと思って!」
悪気は感じない。まあ、いいか。俺はヘアピンを装備してみる。
頭部の右よりでつけてみるが、鏡でみるとどうにも複雑な気持ちになる。
「すごい似合ってるよー。もうこのままスカートいこう!」
「それはお断りする」
「ぶー……」
鏡を改めて見るが女にしか見えない。ゲーム修正が入ってるのもあるからだろうけど、たしかにこれは間違えるかも――いやいや、それでも俺は男なんだ。
ていうか、やっぱりこれ見たことある気がするんだよな――俺はそこでひとつの記憶にたどり着いた。
今日の委員会後にあった出来事を鮮明に思い出した。あそこに描かれていたのは、色は塗られていないものだったが、このヘアピンそのものだった気がするし、装着例として描かれていたキャラの髪の長さとかも、ゲームの俺そっくりだった気がする。
でも、このくらいの髪の長さは女子キャラならかなりいるだろうし、どうなんだろう。そもそも、もしもそれがあっているとしたらリーフという存在とあの子が同一人物になるわけだけど――。
「リーフ、ちょっと答えたくなかったら答えなくてもいいんだけど、質問していい?」
我ながら突然だと思うけど、まあ世間話程度のノリで聞いてみようか。
「え? なにかな?」
「今日の午後4時半ごろに、ノート落としたりしなかった?」
「……へ? ど、どうしてそんなこときくのかな?」
「いや、なんとなく」
時間までピンポイントに聞かなければよかったな。探り通り越してストレートと変わりないしこれ。
「まあ、落としたけど……なに? もしかしてリアルでのストーカーさんだったりするのかな? キャー」
「いや、そんなことはしてないけど……ついでにこれも答えたくなければ答えなくていいんだけど、ここ数ヶ月の間で、女と間違えた男っていなかった?」
「…………」
リーフの目がものすごい泳ぎ始めてしまった。
「も、もも、もしかして、関係者さんでしょうか」
そして、雰囲気というか見た目リーフのままに、完全にあの子みたいになってしまう。
「いや、俺男って言ったじゃん?」
「い、いや、アキちゃさんみたいな、可愛い子が女の子のわけ……あっ」
ちゃさんってどんな混ざり方だよ。最後は気づいたかのように、小さく声を出して固まった。
「ま、また今度」
「あっ、ちょっと!?」
そのまま逃げるようにリーフはログアウトしてその場から消えた。
流石にログアウトされてしまっては俺も追うことはできないので、店の扉においてある【営業中】の看板を中にしまってログアウトした。
翌日の球技大会開始前。早めに着替え終わってから、それぞれの集合場所に行くわけだが、体育館へきていた。
俺はサッカーなので校庭集合だけど、ひとつ心当たりがあるのと話しておきたい人がいるからだ。
館内を見渡すとクラスごとに固まっているので、その人物はすぐに見つけることができた。
「おはよう」
後ろから挨拶をひとまずする。
「えっ? あ、え、い、お、おはようございます」
「あぁ、いやそんな怖がらないでも」
後ろに下がられて少しショックだ。
「い、いえ、その」
「落ち着いてくれな」
ひとまずそう言っておこう。葉月は深呼吸すると少し落ち着いたようで、目の若干横を見てくれる。絶妙に目が合わなくて、不思議な感覚になる。
まあ、でもまえから目は誰とも合わせてくれてなかった気がするし、まだがんばってくれているのかもしれない。
「あ、あの、この前と言うか、今までのことはすみませんといいますか。その」
「あぁ、気にしないでいいよ。頼んだのは俺だったし、楽しいからこれからもよろしくってこといいたかったんだけど」
「い、いいんですか?」
「うん……まあ、無理なもんは無理って言うし」
「それも、そ、そうですね」
「ってことで、リーフは葉月ってことであってる?」
「えっ、と……は、はい。あってます」
「ネッ友だと思ってた人がまたリアル関係だったか。ネットは案外狭いな。まあ、あんまり気にせずこれまでと同じでいてくれってそれだけだ」
「は、はい」
少し表情が明るくなった気がした。
「全然関係ないけど、ネットだとなんであんな感じなんだ?」
「えっと、服とか見た目とかで自分自身をプロデュースできる気がして、それと、その、やっぱりゲームっていう部分があるから」
「そういうもんなんだな……まあ、うん。ゲーム内でも辺に気負わず今まで通りでいてくれていいぜ。それじゃあ、今度こそまたな! 俺はサッカーだから!」
「え、は、はい。が、がんばってください」
「葉月もな」
そう言って体育館をでる。はたしてフォローしきれただろうか不安だ。
「あれ、アッキーじゃんどしたの、体育館で?」
出入り口でギャル子と出会った。葉月と同じ競技でるのか。
「いや、ちょっと葉月にようがな」
「はっちーに?」
「まあもう終わったからいいよ。頑張ってな」
「自分のクラス応援しろっつの」
そう言って体育館の中へと入っていった。
「ギャル子にもフォローを頼む……いや、ダメだな。それじゃあ問題解決にならん。戻ろ」
なんとなくスッキリしない気がする。そんな状態で校庭までの道を歩く。しかし、次の瞬間に俺の気持ちは快晴の青空のようになった。
スマホが震えて通知を見る。
『なんかよくわかんないけど、はっちーみたことないくらいテンション高いんだけど、なにいったん!?』
ギャル子からだった。
勝手な思いだが、俺が不安がるような風なことは起きていない気がした。
「『まあ、俺も友達になれたんですよ』っと」
今まではおどおどされていたが、これこそ友達だと思う。
『あーしがはっちーの友達一号ですしー。あ、ついでに、なんかアッキーの話ししてたらLIMEのID教えてって言われたから教えておいていい?』
『もちろんいいぞ。つうか、教えておいてくれ』
『りょかー。アッキーもがんばー』
『お前らもな』
そしてやり取りを終えると、別の人から通知が来る。
『これからもよろしくです。あと、ファイト』
チャットでまでたどたどしくなるわけもなく、そんなエールが送られてきた。だが、俺も単純で、結構やる気が出た。
さて、球技はそこまで得意じゃないけどがんばるかな。
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