第3章 アップデートと初イベント
第32話 文化祭準備と嫌な予感
月末にOAOの大型アップデートを控えながら、学校では来月に行われる文化祭の準備が始まっていた。
今は、既に数回目となる文化祭でうちのクラスが何をやるかという話し合いが行われている。
「男装喫茶!」
「メイド喫茶だ! 妥協してもウェイトレス!」
候補はかなり絞られてきたのだが、前回から一向に進まなくなっている。男女の意見が別れたのだ。
男子はメイド喫茶やら少なくとも、制服的なもののある喫茶店をやりたいらしい。逆に女子は男子が表に出ないことを妥協しても男装喫茶がやりたいという珍しい意見の一致がおきたようだ。
ちなみに女子のこの提案で男子も裏方でなく表にでるなら普通に男装となるらしく、デメリットはこっちのほうが圧倒的に少ない。
しかし、クラスの男子8割方の奴らがたとえ、数人を女装の犠牲にしてでもメイド喫茶とかそっち方面をやりたいということらしい。ちなみに残りの2割の男子と一部女子は早く決めて欲しいという子や、自分たちがやりたいことは既に候補から外れたのでどちらにしても裏方いかせて欲しいというスタンバイ組だ。
俺もそこに含まれる。
「だいたいメイド喫茶とかありきたりなのよ!」
「男装喫茶だってわりとありきたりだろ! そしたら収入を考えればこっちのほうがいいにきまっている!」
「それは偏見よ!」
リーダー格となっている2人がヒートアップしている。
「早く終わんねえかな……帰ってOAOしてえ」
「口に出すな、隼人。否定はしないけど」
行事好きな隼人だが、自分の出したものは既にみんなの頭の隅に残っているかどうかというものになってしまって、ふてくされてる。多分、決まって自分のやることきまったらやる気出すんだろうけどな。
「だいたい今年のコンテストのテーマだって、制服なんだからな。合理的だ」
「男装だって執事服とかなら制服じゃないのよ!」
でも、2回つかってこの話し合いが終わらないのは嫌だな。
かと言って打開案も思いつかないんだけどさ。
「仕方ねえ。オレの本気を見せてやる」
「隼人……嫌な予感しかしないんだけど気のせいか?」
ゆっくりと席からたち、言い争っている二人の間に入る。
「落ち着けお前ら。ちょっと、オレの話を聞いてくれないか」
「なによ隼人くん。そっちにつくの」
「隼人にもメイドの良さ、制服の良さがわかったか!」
「いや、そうじゃない。オレはぶっちゃけ楽しければどっちでもいい。だから、一旦話は保留にして別のことを決めないか?」
「別のことってなんだ……役割とかは、これが決まらないと無理だぞ」
「そうよ」
隼人はチョークを手にとって黒板に『代表』という文字を書く。
「コンテストに今年出る代表者を決めようぜ!」
何を言い出してるんだこいつは。
ちなみにコンテストとは、他校の文化祭でいうミスコンやミスターコンを指すわけだが、どこかのクラスとかに一任したりすると不味いテーマとかになる可能性もあると危惧して、数年前より生徒会が主催となって毎年テーマを発表して行われている。
今年のテーマはさっきの話題でもでたが『制服』だったわけなんだが。この制服の捉え方はそれぞれらしい。
ちなみに全クラスから代表者を出す決まりとかはないけど、だいたい誰かはでてくる暗黙のルールができあがっている。
「今年って性別は決められてたかしら?」
「たしか決まってないし、制服の捉え方もそれぞれに任せるものらしい。ただし、毎年のごとく肌の露出が制服の夏服よりも多いものは不戦敗になるだったかな」
「ミスコンに出すやつは仕事なしにしようぜー」
いつのまにか話もそっちにうつってるし。本題はどこに飛んでいった。
「むしろ、採寸とか色々必要だしね……やるなら、クラス一丸となってよ!」
「そうだな……しかし、誰を出すかだ」
「とりあえず自己推薦者挙手!」
隼人がクラス全員に向けてそう言ったが、誰一人として手を挙げない。
「じゃあ、他者推薦。ただしクラス内のやつのみ」
今度はそう言うとぼちぼち手が挙がる。まあ俺には関係ないかな――去年でたし、2年連続は飽きちゃうだろ。
数十分後。
俺は両手両足を地面についてうなだれていた。
「決まりだな」
『異議なーし』
クラス殆どの奴らの声が揃った。黒板に書かれた数人の名前と――俺の名前の下に並ぶ数多くの正の字。
「そしてオレは思ったことがあるんだよ」
「なんだ隼人」
「どうしたの隼人くん?」
これ以上何を言う気だこいつは。
「秋乃みたいなやつがいるんだから性別片方によらせるよりも、このさい使用人喫茶にしたほうがいいんじゃね」
「「はっ!?」」
なんでそこの2人は電撃が走ったような顔で固まってるんだよ。というか、俺の例いらないだろ!
「みんなもそれでいいな!」
いつの間にか隼人がリーダーみたいになっている。
そしてクラス内もそれでいいという雰囲気になっている。いや別に使用人喫茶自体は別にかまわないんだけどさ。
「先生。決まったので今日は終わりでいいですか」
「停滞してた所決まったしいいぞー。次で役割分担だけど、学級委員長は生徒会提出用のプリント書いて今週中に提出すること。通るとは思うけど、通らなかった場合また企画から考え直しだからな」
こうして本日解散となった。
「ふぅ、これで帰ってゲームできる。そんじゃ、帰ろうぜ秋乃」
「ちくしょぅ、隼人お前ぇ……」
「俺が言わなくてもどうせ出されてたろうしいいじゃねえか。それに制服なら男子用のものだって大量にあるしな」
「そ、そうだな! 去年は女装というかテーマ的に女子よりだったけど、今回は選択肢多いもんな!」
「そのとおりだ。だから帰ろうぜ、な」
「おう……あとで一発殴る」
「後でにしてくれ」
嫌な予感の正体はこれだったんだな。こうして俺は2年連続で、文化祭に行われるコンテスト出場が決まったのである。
ちなみに智愛は男装喫茶で翠花はどっちにもつかない立ち位置にいた。
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