第14話 新技と小さな約束
洞窟をさらに進むこと数分。ラットマンに更に2度ほど遭遇したが、難なく退けることに成功した。
そして辿り着いた行き止まりは、ごつごつと岩が飛び出ている壁になっている。
「じゃあ、採掘するからしばらく見張りよろしく。たまにラットマンとかくるのよ」
「おう」
そういうと、ティアはハンマーを近くに立てかけてピッケルを取り出した。そしてそれを壁の出っ張った部分や、割れ目ができてる部分に振り下ろしていく。
「ラットマン以外はでてこないんだな」
「お兄ちゃんはもう少しいろんなフィールドに興味をもつべきだよ。でも、ここはラットマン以外の敵だと、全部出現率低いからね。代わりにでてくると、かなり厄介なのばっかり」
「前にティアと、その他に武器の注文をしてきた戦士の方と一緒にここに来たときは、ブラックロックがでてきて大変でしたよ」
「うわぁ……でもティアさんいたからいいじゃないですか」
「そんなにめんどくさい敵なのか?」
俺は名前をきてもピントは来ない。ロックと言われても音楽のジャンルとかがでてくるし。
「大きめの岩に小さい岩が繋がって手と足みたいになって、大きさはこのくらいだよ」
そういいながら、ナツは自分の胸の少しした程度あたりに手をやる。小さいモンスターだから動きが早いとかか。
「それで岩は岩でも鉄鉱石とかの鉱石とか原石がコアになってるので、打撃武器の大きな一撃じゃないとダメージが入りにくいんですよ。魔法も風は切断的な攻撃が最初の方は多いので、抵抗力が強くて」
「ハンマーとかメイスじゃないと相性が悪いってことか。それで戦士といえば剣だもんな」
「そういうことです。結果的にティアのハンマーがなければ1回くらい死んでたかもですね」
「なつもパーティーできた時にブラックロックにあって大変だった。光魔法育ってないから威力でないけど、剣はどうせ弾かれるんだもん」
「俺は魔法は覚えてないし、武器は槍だからぜひ、でてこないで欲しい相手ってわけだな」
ピッケルが振り下ろされる音と、アイテムが出て来る音をBGMに警備を続ける俺たち3人だったが、ここで聞き覚えのない音が元の道から聞こえる。
「ラットマンの鳴き声じゃないよな……?」
「うん。でも、ブラックロックはまず声ださないし、他にでてくる敵だと……」
「鳴き声だすのはあれしかいなかったとおもいますよ」
「……あ。ちょっと、どころじゃなくやばいかも」
少し血の気が引いたような顔になってるナツを横目に警戒を始める。
「お兄ちゃん……ぶっちゃけいおう。なつたちのパーティーは相性がさいっあくな敵がくるから、本当に気をつけて」
「対抗策とどういうやつかを教えろよ」
「ちょっと、わたしの防御力だと不安なので後ろに下がらせてもらいますね」
「ミドリさんは下がっててください。なつのお兄ちゃんで気を引くので、タイミングよくお願いします」
2人は理解してるようだな。
「お兄ちゃん。今から来るモンスターは【ロックリザード Lv12】だよ。なつもレベルは武器的にどっこいだけど、この洞窟の鉱石を食べたせいで、鱗が頑丈になってる設定のモンスター」
「うげっ。つうことは槍きかないのか」
「うん。だけど、尻尾の岩は攻撃してると剥がれるようになってるから、そうすればダメージは通せる。もしくは口の中に攻撃を叩き込む。けど大きさはそこまで大きくないから、武器だと危なくて、魔法任せにしたほうがいいの」
「つまり隙を作れってことか」
「そういうこと。お兄ちゃんは左と尻尾。なつが頭と右側狙うね!」
「はいはい」
戦闘においてどころかゲームにおいては、俺よりなつとおそらくミドリのほうが先輩で玄人だ。その指示に従うほうがいいだろう。
そういっているうちに、暗闇の中から松明の光の範囲に4足歩行のトカゲのようなモンスターが現れた。
しかし先程聞いたとおりに、頭部から尻尾にかけて小さい山ともいえるかのように岩が張り付いている。いや、生えているのかもしれない。
「いくよ! 【シャイン】!!」
ナツが叫ぶと、その手に装備してある指輪が強く光る。それに反応するかのように、眼の前にいるロックリザードは鳴き声を上げて標的を定めたかのように視線を向けた。
俺はその間に走って左後方まで移動する。目の前には岩の尻尾。
「よいしょぉ!!」
もしもブラックロックと同じ原理なら、切断や刺突よりも打撃のほうがダメージがはいる。俺は槍の石突や持ち手を使って、尻尾を叩きつけてみる。
「お兄ちゃんペース早い!」
「すまん!」
だが、加減がわからずやりすぎたようで、ロックリザードは俺の方を向いて、大きくと突進してくる。
「ぐほっ……思ったより痛いな」
俺はその突進を食らって少し吹き飛んだ。その間にまたヘイトがたまったのかナツたちのほうへと標準を向ける。まだ、序盤の洞窟だからかダメージなどが強くても行動はわかりやすいようだ。
「初披露、【フォルン・スラッシュ】!!」
「ナツさん、横に飛んでください! 【ウィンド】!!」
前方はよく見えないが、うまくやっているようだ。尻尾の岩は、俺の方を向いている間に2人が攻撃したのか、もう少しで剥がれそうになっている。
「唯一の男が寝てられるか!!」
再び槍の打撃攻撃を尻尾に与えまくる。そして岩が全部剥がれたことを伝えるようなエフェクトがでて、最後の岩がはじけ飛ぶ。
「槍のアーツ。使い方あってるかからんけど、もう当たって砕けろ! 【ソニックニードル】!!」
口から発したワードに反応して槍のアーツが発動し、本来よりも早いスピードで槍がロックリザードの尻尾に突き刺さった。
「――――ッ!」
声にならないような苦悶の表情をみせたロックリザードは、こちらを攻撃しようと視線をこっちへと向ける。HPは残りもう少しだというのに、動きが衰えないとか嫌だな。
尻尾で薙ぐようにしてナツを牽制しながら体ごとこちらを向いた。俺は、それに対して防御もできないが、道も狭くて横にかわせそうにない位置にいて、絶体絶命だ。
だが、俺自身の視線はすぐにリザードから上へと移った。
「【アークブレイク】!!」
淡く光った打撃武器の思い一撃が、ロックリザードの顔を地面へとめり込ませる。
「いや、ごめんごめん。夢中になってて気づかなかったみたいで。大丈夫?」
「ギリギリだっつうの」
ティアの最後の一撃でロックリザードは地に伏したようだ。
その後、鉄鉱石などで持ちきれないぶんを持たされながらセンターシティへと戻ってきた俺たちは、ティアの露店へと足を運ぶ。
「よし、倉庫に自分でもって多分預けてきたから、渡した分頂戴」
「言わなくてもわたしてやるよ。加工もなにもできねえし」
俺はそういって鉄鉱石などのアイテムをティアに渡した。
「なっちゃんもごめんね。なんか私のことばっかりになっちゃって」
「楽しかったから無問題! それにね。ふっふっふ、さっきロックリザードの部位破壊で落ちたドロップ品がレアアイテムだったの!」
「いつのまに拾ってたんだよ……まあ、俺も拾ったけどただの鉱石だったわ」
「え、もしかして私に渡した分に混ざっちゃってる?」
「いらなかったからいいよ」
「いや、流石にそれは鍛冶師や商売人をここではやっているからダメよ……うぅん、そうね。でもここでお金で払っちゃうと、なんか遊んだって感じじゃなくなっちゃうし。あとで、何かで返すから少し待っててもらえるかしら?」
「別に俺はいいんだけどな……まあ、楽しみにしておくよ。そういうなら」
「ミドリには、今度DEX補正のアクセ作るから」
「ありがとうございます」
「あ、じゃあティア姉! このアイテムであとで武器作って! なつはそれでいいから!」
「任せなさい! 優先的に作ってあげる!」
まあみんなが納得するならそれでいいかな。俺は楽しかったし、マジで礼とかそういうのはいらないんだけどな。
ふと時間を見てみると、結構いい時間になっていた。
「それでは、丁度いいのでわたしはこの辺で、また学校……の前にゲームで会えそうですね~。まあ、また~」
「私も早めに寝て明日は宿題の仕上げしてから日中プレイするわ。またね、アキ」
「おう、ふたりともまたな。ナツはどうする?」
「もう少しプレイしてくる」
「俺は寝るから」
「おやすみ。ミドリさん、ティア姉にお兄ちゃん!」
そう挨拶して各々解散となる。
俺はログアウトしてからゆったりを風呂に入ってすぐに寝た。
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