一般ヒーロー制度

平沼 優

第1話「僕がヒーローになったワケ」

「ここ……だよね?」


 瓦落がらく市役所5階、第1会議室――その扉には「2017年度一般ヒーロー説明会」とゴシック体で印刷された紙が貼られている。4階まではそれなりに人がいたのに、5階に上がった途端に廊下から人が消え、まるで入ってはいけない場所に迷い込んだみたいだ。


 僕は扉にそっと近付き、中の様子を探ろうと耳をそばだてた。今の僕の精神状態のせいなのか、それとも元々そうなのか、市役所のドアというものはやたらと大きく感じられる。1月の空気に冷やされた重く冷たい木の塊は、たかだか高校1年生のガキが気安く触れてはいけないもののように思えた。


 ――何も聞こえない。普段は会議室として使われている部屋のようだし、防音が万全なのだろうか。あるいは単純に、誰もいないのかもしれない。再び手元の封筒から書類を引っ張り出し、そこに書いてある文章を読み返す。


“日時:1月8日(日) 13時集合”

“場所:瓦落市役所5階 第1会議室”


 今度はポケットからスマホを取り出し、時刻を確認する。今日は間違いなく1月8日だし、時刻は12時30分。少し早いかもしれないが、誰もいないってことはないはずだ。

 僕は意を決して、そのドアノブに手を掛けた。カタン……という音が、空気の凍りついたような廊下に響き渡る。


 その部屋は、高校の教室よりも広かった。3人掛けの長机が、ゆったりとした間隔を空けてざっと20個は並んでいる。普段はここで瓦落市のお偉いさんたちが市政について語り合っているのだろうか。そう思うとやはり自分は場違いな感じがして、今すぐにでもここから立ち去った方がいいような気がした。


 ――と、視界の端で黒い影が動いた。だだっ広い会議室の片隅に座る女性が、じっとこちらを見ている。目が合ったものの、なんて声を掛ければいいのかわからない。ほんの少しの沈黙の後、相手が会釈をしたので僕も返し、その姿勢のままそそくさと近くの椅子に座った。

 座っている場所からして、僕と同じく一般ヒーローに選出された人だろうか。きちんと整えられた黒のロングヘアが印象的な女性。年齢は僕とそれほど離れていないように見えるが、大人びた雰囲気で、スーツがよく似合っている。……スーツ?

 はっとして、自分の服装を見る。黒のダウンジャケットにジーパンという、ごくごく平凡な“冬の私服”といった感じ。外を歩いている時には気にならなかったが、よく考えればこんな格好で市役所を訪れるなど無礼にもほどがある。僕はスーツを持っていないが、せめて高校の制服を着てくるべきだったのではないだろうか。「やっちまった」という感情が、チリチリとした痒みを伴って背中を上がってくる。それが頭頂部に達すると同時に、髪を掴んで無理やり拭い去った。


「大丈夫……書類に服装の指定はなかった……僕は何も間違っていない……」


 机に伏せ、ひたすら自分に言い聞かせる。そうしなければ、僕の体はすぐにでもこの部屋を飛び出し、どこかへ走り去ってしまうような気がしたからだ。


「遅いですね、あとの3人」


「へっ?」


 突然話しかけられたせいで、間抜けな声を出してしまった。当然、声の主は先ほどの女性だ。


「……そ、そうですね。もう集合時間の30分前なのに……」


 慌ててそれっぽい返事をするが、まるで脳を通さずに話しているかのように、自分の言っている言葉が入ってこない。


「先に自己紹介しておきましょうか。浜地はまち 若菜わかなです」


「あ、えっと……登呂とろ まさるです」


「そんなに緊張しなくて大丈夫ですよ。肩の力抜いてください」


「あ、はい……」


 当たり前のように緊張していることを見透かされ、余計に恥ずかしくなる。


 不意にドアが開き、スーツ姿の男女二人が入ってきた。


「これじゃ入りづらいでしょうが。ドアは開けっ放しにして、紙は横に貼っとくんだよ」


「はーい」


「このやり取り、前にもした気がするぞ」


「それより深山みやまさん、もうヒーローの人来てますよ」


「あっ……」


 深山、と呼ばれた初老の男性が、慌ててこちらを振り返る。


「いや!お騒がせしてすみませんでした!」


「深山さん、いっつも声が大きいんだから」


「うるせっ」


 どうやらこの二人は関係者――つまり、一般ヒーロー管理委員会の人たちらしい。「管理委員会」という言葉の持つイメージとは裏腹に、やけに賑やかな雰囲気だ。


「全員揃われるまで、もう少々お待ちください」


 深山さんはそう言うと、部屋の入口の紙を貼り直し始めた。もう一人の女性はというと、それを眺めているだけだ。さっきの様子では深山さんの方が上司っぽかったけど……。


「一般ヒーローの方ですか?ああどうぞ、こちらです」


 廊下から深山さんの声がして、別の人物が入ってきた。白髪交じりの男性で、どこか気難しそうに見える。年齢は50代といったところだろうか。僕にとって嬉しかったのは、この男性が僕と同じようなダウンジャケットを着ていたことだ。これで服装に関する居心地の悪さは解消された。ところでこの人、どこかで見たことがあるような……?


「お好きな席へどうぞ~」


 そう言われると、男性は一番前の真ん中の席に座った。


「すみません、道路が混んでて遅くなりましたー!」


 集合時間の2分前、ボサボサの髪で無精ヒゲのある、がっしりした体格の男性が入ってきた。年齢は30代くらいだろう。声の調子からしても、「頼れる兄貴分」といった感じの人物だ。


「そういや、今朝市内でドラゴンが道路を破壊したとかで、一部通行止めになってたな」


 深山さんが言った。

 そうか、じゃあそっちの方面から来る人は遅れても仕方ないな。


 そして集合時間を迎え、ようやく最後の一人が姿を現した。薄桃色のセーターに身を包み、赤い細縁メガネを掛けた、ポニーテールの女性。


「あ、すみません……」


 部屋に入るなり、申し訳なさそうに頭を下げる。


「いいんですよ、ヒーローは遅れてやってくるものですから」


「ふはっ!」


 管理委員会の女性が言い放った小粋なセリフに笑ったのは、ついさっき来たばかりの無精ヒゲの男だけだった。


「さて、全員揃いましたので、これより2016年度一般ヒーローの説明会を――」


「17年度な」


 深山さんが遮る。


「あ、そっか」


 この女性、どうも抜けているところがあるようだ。


「これより、2017年度一般ヒーローの説明会を始めます。私は皆さんの担当のシャーリーです」


「おい」


「いいんです。今年の私はシャーリーなので」


「……」


 さも当然のように名乗るので本名かと思ったが、深山さんの反応を見る限りは違うようだ。


「これから皆さんは12回の訓練を受け、4月から1年間、瓦落市の一般ヒーローとして戦っていただきます。そこで、まずは皆さんそれぞれ自己紹介をお願いします」


 シャーリーはそう言うと、端っこに座っている浜地さんに視線を向けた。


「じゃあ、名前と年齢と、一般ヒーローとしての意気込みをどうぞ」


「はい。私は浜地 若菜、21歳です。短大を卒業してからずっと求職中ですが、思うように職に就けず、一般ヒーロー経験があれば就職の際に優遇されるということで参加しました」


 げっ……真面目そうに見えたのに、思っていたより歯に衣着せぬ物言いをする人だ……。就職目当てなんて、普通思っていても言わないんじゃないのか?もっとこう、建前みたいなものを用意するだろう……。


「じゃあ次、登呂さん」


「えっ」


 浜地さんの発言にまったく動じないどころか、それがごく一般的な理由であるかのように流された。というか、僕はまだ何を話すか考えていない。


 ――事の始まりは、去年の7月。何やら興奮した様子の母さんに叩き起こされたのだ。見ると、その手には水色の封筒が握られている。僕は半分寝ぼけた状態でそれを受け取り、中の紙を引っ張り出した。


“2017年度 瓦落市一般ヒーロー選出のお知らせ”


 文字を読んでから意味を理解するまで、数秒のラグがあったと思う。ようやくその書類が何であるかに気付いた僕は、目を見開いて封筒を見た。


“一般ヒーロー管理委員会事務局”


 その下には郵便番号と住所、電話番号やHPアドレスが記されていた。間違いなく、一般ヒーロー管理委員会からの書類だ。


 「一般ヒーロー制度」――それは2000年に施行された、「一般人から選ばれた人物が1年間ヒーローとして戦う」という制度だ。


 この世界の住人は、「ネイティブ」「プロテゴ」「オスティス」という3つのカテゴリーに分けられる。僕のようにごく普通の人間は「ネイティブ」と呼ばれており、人口の最も多くを占める。

 「プロテゴ」と「オスティス」は、どちらも別の世界からやってくる様々な者たちの総称だ。人間のほかに動物やロボット、妖精や怪物など、その種族は多岐にわたる。彼らは皆、「どこか別の世界で生きていた」という記憶を持つが、それぞれの指し示す世界観はバラバラであり、今なお「別の世界」の存在の証明には至っていない。


 古くは「プロテゴは創作物の主人公、オスティスは悪役がこの世界に顕現したもの」と言われていたようで、実際にプロテゴは人間に対して友好的な者が多く、オスティスは敵対的なものが多いと言われる。しかし、彼らが主人公や悪役となったような創作物は見つからず、この説は疑問視されている。

 とはいえ、この世界ではプロテゴもオスティスもありふれた存在であり、特別に問題になることはなかった。……少なくとも、かつては。


 1970年代ごろを境に、プロテゴやオスティスの数は目に見えて増加し始めた。特に日本はアメリカと並んでその動きが顕著であり、彼らの急増に伴って様々な社会問題も発生した。人口増加による土地不足や食糧不足、超人的な能力を持つ者たちに雇用が奪われたことによる就職難なども懸念されたが、最も対処が急がれたのは「治安の悪化」だった。特にオスティスは凶暴な者が多いため、都市部で大きな被害が出ることも少なくない。


 過去にはこうした事件が発生した際、有志のプロテゴがオスティスを鎮圧することが多かった。しかし、プロテゴとオスティスの人口比率には大きく差があり、昨今の急増も含めて「手が足りない」状態になったのだ。

 そうして生まれたのがこの「一般ヒーロー制度」というわけである。


 僕は、昔からヒーローに憧れていた。毎週悪役を倒すテレビ番組のヒーローもそうだし、現実でオスティスと戦うプロテゴの戦士やネイティブの一般ヒーローもかっこいい。

 けど、僕はあくまでネイティブ。一般ヒーローに選ばれない限り、ヒーローとして戦うことはできない。「なぜネイティブは有志でヒーローになれないのか」と制度を恨むこともあった。


 ネイティブの人間が一生のうちに一般ヒーローに選ばれる確率は0.02%未満と言われている。一般ヒーローは各市町村から毎年5人選出されるため、人口の少ない地域ならばそれだけ選ばれる確率は高くなるが、その場合はヒーローとして活躍する機会が少なくなる。実際、地方の限界集落などでは一般ヒーローに再選することもあるらしいが、そういった地域では任期の1年間どころか、施行以来十数年の間、まったく出動事案が発生していないなんてこともあるそうだ。

 瓦落市のネイティブ人口はおよそ120万人。普通に考えれば途方もなく低い確率だ。選出は各市町村の担当者が任意の手段で行うため、なんとかして担当者の目に留まればヒーローになれる可能性もなくはない。しかし、具体的に何をすればいいか、まったく見当がつかなかった。

 そんな有様だから、表向きには「選ばれるわけない」と思いつつも、心の中では「もしかしたら選ばれるかもしれない」という希望を捨てきれずにいた。万が一にも選ばれた場合に備えて、ひっそりと筋トレをしてみたりもした。

 だからこそ、あの日の僕は夢のような気分だったのだ。


 ――しかし、しかしだ。ここで「ずっと前からヒーローに憧れていました」なんて言うのはカッコ悪くないだろうか。まして「就職のため」と言い切った人の後で、だ。ここは建前でもいいから、何かそれらしい理由を言わなければ。


「登呂さん?」


「はい。登呂 大、16歳です。えー、僕は現在高校1年生なのですが、大学に入る際、一般ヒーロー経験者は有利になると聞いていたため、参加することにしました」


 少し待って、周囲の反応を窺った後、小声で「以上です」と付け加えてから座った。


「なるほど、最近の子はあんまりヒーローとか憧れないものなのね……」


 シャーリーが少し残念そうに言った。その表情を見て、なんだか申し訳ない気持ちになる。


「まあ、彼らにとっては受験や就職の方が現実に直面してる問題ってことなんじゃないの?」


「それもそっか」


 シャーリーは深山さんの言葉で納得したようだ。


「次は私か……」


 最前列に座っている男性が立ち上がった。


伊倉いくら 重徳しげのり、54歳。職業は瓦落中学校の非常勤講師です。最近は体力の衰えを感じてきていて、トレーニングも兼ねてと思い参加いたしました」


 あっ、そうか。どこかで見たような気がすると思っていたけど、中学の時にたまに廊下ですれ違っていた人だ。授業を受けたことはないから、名前は知らなかったけど。


 と、無精ヒゲの人が顔を押さえて笑っているのに気付いた。次は彼の番だけど、何がそんなに面白いのだろうか?


「えぁ、俺?はい……フフフッ……」


 男は立ち上がり、なおもプルプルと震えている。


多摩たま 五郎ごろう、36歳です。郵便局員やってます。今年小学校に上がる娘にかっこいいところを見せたくてヒーローになりました」


 彼はなんとか笑いをこらえて自己紹介を終えた。……と思ったが、そのまま座らずシャーリーの方を向いた。


「あの、フフッ……ヒーロー候補者の選出って、誰が?」


「私が選びました」


 シャーリーが答える。


「えっと、これって……寿司……クフフッ!」


「おっ、お気付きになりましたか!」


 シャーリーが目を輝かせた。それを見て深山さんがため息をつく。


「すみませんね、こいつ毎回こういう選出するんですよ」


 途端に、多摩さんが笑っている理由に合点がいく。「登呂とろ」「浜地はまち」「伊倉いくら」……多摩さんは「たまご」か。全部寿司ネタの名前だ。

 僕は名前のせいで、小学生の頃から「大トロ」というあだ名をつけられることが多かった。呼びやすいのは確かだし、あだ名自体が嫌だったわけではないが、時々「なんでこんな名前なんだろうなー」程度には思っていた。しかし、まさかそれが夢にまで見た一般ヒーローに選出されるきっかけになるとは……世の中、何が起こるかわからないものだ。


「名前がコンプレックスの方もいらっしゃるとは思いますが、どうか大目に見てやってください」


 深山さんが頭を下げる。僕としては、むしろ感謝したいところだ。


「じゃあ、最後」


 シャーリーが部屋の後方に座っている薄桃色のセーターの女性を指した。


「はい……私は左門さもん 桃香ももかといいます。えっと、『サーモン』担当になるんですかね?昔からよく言われるので慣れてます」


 多摩さんは笑いをこらえるのに必死なようだ。


「……あ、年齢は25歳で、瓦落科学研究所っていうところで働いてます」


「ほう、あそこですか」


 伊倉さんが口を開いた。

 瓦落科学研究所といえば、瓦落市が誇る大きな研究施設だ。科学者たちが利用する研究棟と博物館のような展示棟に分かれていて、展示棟の方は一般人でも入れる。最先端技術が結集する施設であり、僕も小学生の時に何度か訪れた記憶がある。


「はい。ヒーローとしての経験が今後の研究に活かせるかもしれないので、一般ヒーローに参加しました」


 ああ、やっぱりこういうところで働く人はしっかりしているな。自分の浅はかな建前がとても安っぽいものに思える。


「じゃあ、深山さん。例のものを」


「あいよ」


 窓際辺りに座っていた深山さんが立ち上がり、小さな段ボールを持って前に立った。


「一般ヒーロー管理委員会、中国地方管轄の深山です。これから皆さんにヒーローデバイスをお渡ししますが、説明が終わるまでは絶対に箱を開けないでください」


 そう言って、深山さんは僕たちに小さな白い箱を配り始めた。大きさは大きめのお菓子の箱くらい。ずっしりというほどではないが確かな重みがあり、いかにも「精密機械が入っている」という感じ。その表面には赤いマーカーで印が付けられている。ほかの人は別の色の印があるので、おそらくこれは「着用するスーツの色」だろう。一般ヒーローに参加する際に提出した書類に、好きな色を3つ書く場所があった。赤なんて人気だろうからまず手に入らないと思っていたけど、見事に手に入れることができた。今の僕はつくづく幸運だ。


「さて、皆さんご存知かと思いますが、ヒーローデバイスはその気になれば人殺しにも使える危険な道具です。現在の制度で限られた人間だけが持てるようになっているのも、これを悪用されることがないよう、所持者を管理するためです。すなわち、これを持つからには、常にその行動に“ヒーローとしての責任”が伴うということを自覚してください」


 深山さんの話し方はよく声が通る。なんとなく既視感があると思ったら、体育教師の声の出し方にそっくりだ。50人は優に入れるであろうこの部屋の隅々まで、彼の声が響き渡る。その雰囲気は先ほどまでとは打って変わって、どこか脅迫じみてさえいる。それがヒーローを管理する立場としての責任なのだろう。


「では、それを踏まえた上で、自身の行動に責任が持てるという方だけ、箱を開けてください」


 伊倉さんが深々と頷き、箱を開けた。それを見てほかの人たちも箱を開封し、中からビニールに包まれたデバイスを取り出す。僕も同じように開けようとするが、その手がピタリと止まった。


 僕は本当に、ヒーローになる資格があるのか?僕にはヒーローとしての責任を背負えるだけの器があるのか?そもそもこんなことに迷いが生じる時点でヒーローに向いていないのではないか?この箱に入っているものは、単なる「ヒーローへの憧れ」程度で軽々しく持っていい代物ではない。ただの16歳の子供でしかない僕が、その重みに耐えられるのか?


 そんな思いが、ぐるぐると頭の中を回り始める。考えれば考えるほど、「僕はヒーローになってはいけない」という方向に傾いていく。


「登呂さん」


 不意に浜地さんから声を掛けられて、我に返る。


「大丈夫だって。ポンコツの私でもヒーローになれるんだから」


 ポンコツ?こんな真面目で頭の良さそうな浜地さんが?


「さっきは就職のためって言ったけど、本当は私も、ずっとヒーローに憧れてたクチだからさ」


「えっ……」


「私たちは何千、何万分の一って確率の中から選ばれたんだから。ヒーローの素質なんて、それで十分でしょ」


「浜地さん……」


「おーい、開けてくれないと話が進められないんだ。早く開けちゃってくれ」


 深山さんが言った。その声にさっきまでの威圧感はない。


「あ、はい!」


 僕は再び自分の指に力を込め、手にした小さな箱を開いた。

 これが、僕が長年の夢を叶えた瞬間であり、その後の運命を決定づけた瞬間でもある。

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