Not alone

HAL姉

Not alone

アレン

「あの時、確かに僕らはそこにいた。

それぞれが違う道を歩みだし、次第に互いの背中も見えなくなっていったけれど…

僕らは、この記憶を共有し、胸に抱いたままそれぞれ生きていくのだ。

この有限の命をーーー」





ノゾム

「たーいーくーつー!」


アサミ

「ちょっと、ここ公の場所なんだから、そういう格好やめてよ…恥ずかしいじゃないの」


ノゾム

「んん、そういう格好って〜?」


アサミ

「そのあられもない格好の事!

ファミレスでテーブルに突っ伏してるのなんてノゾムしかいないからね」


ノゾム

「はいはい、もう、アサミは真面目なんだから〜。

しょうがないじゃないよ〜」


アサミ

「待ちぼうけで退屈なのは分かるよ?

分かるけどさぁ、TPOをね…

一緒にいる私の身にもなってよ」


ノゾム

「だって待ち合わせの時間とっくに過ぎてるじゃん。

まさか場所違うとかじゃないよね?」


アサミ

「まさか…あ、来たみたいだよ」


アレン

「ごめ〜ん!遅くなった!!」


ノゾム

「遅いよホントに〜、今何時だと思ってんの!?」


アレン

「いや、それがさぁ…」


ルト

「悪かったよ、今回は俺が全部悪かった!

時間間違えてたんだよっ」


アレン

「って事で、俺もさっきやっと合流したんだよ」


ノゾム

「ルトって結構抜けてるとこあるなぁ、もう」


ルト

「今日は流石に言い返せない」


アサミ

「ルト…久し振り、だね」


ルト

「…あぁ、アサミも…来てたのか」


アサミ

「…う、うん…ごめんね…」


アレン

「ん?…何かあったのか、お前ら?」


レイジ

「おっす、おいっす、おっぺけぺー!

いやあ〜、遅れちゃってめんごめんご〜!」


ノゾム

「レイジ!帰ってたの!?」


レイジ

「おう、昨日成田着いた!」


アレン

「急に呼んだりしてごめんな、レイジ」


レイジ

「いやいや、久し振りの日本でさ、何かもう浦島太郎の気分味わってたとこだったから良かったよ〜。

こうして昔馴染みに会えるとホッとするっていうかさ。な、ルト?」


ルト

「あ、あぁ…」


アサミ

「…ねぇ、久し振りにこうして集まったんだしさ、場所変えて話さない?」


アレン

「え?あ、あ〜、うん…そうだなぁ…」


ノゾム

「あ、じゃあさ、昔みたいに公園行こうよ」


ルト

「はぁ?このクソ寒い時期に!?」


ノゾム

「そうだよね〜、寒いよね〜…」


レイジ

「高校時代のあの頃はそのクッソ寒い中でも平気だったのにな。

あ〜、あの頃は若かった…うんうん」


アサミ

「ふふっ、レイジは相変わらずだね」


レイジ

「そう言うアサミは綺麗になったなぁ」


アサミ

「ふえっ!?」


ノゾム

「レイジ〜、あたしもいるんだけど?」


レイジ

「うんうん、ノゾムは化粧が上手になった!」


ノゾム

「ちょっとそれ、どういう意味よ!

アサミとの差酷くない!?」


レイジ

「あはははは!逃げろ〜!」


ノゾム

「こらっ、待ちなさいっ!」


アレン

「…とにかく、店出ようか…」


アサミ

「そうだね…このままじゃ強制退場させられちゃうもんね…」





ルト

「さむ…」


アサミ

「そんな薄着してるからだよ。

寒がりなくせにいっつもそんな格好して…」


ルト

「…ほっとけよ」


アサミ

「……うん、ごめん」


アレン

「あれっ、あいつらどこ行った?

ったく…もうガキじゃないんだからさぁ…

ちょっと俺探してくるから、お前らここで待っててよ」


アサミ

「え、あ…アレン!

……行っちゃった…」


ルト

「……っくし!」


アサミ

「………これ、あげる」


ルト

「…何?」


アサミ

「…今日、アレンにルトを連れて来てって頼んだのあたしなんだ。

どうしても、渡したい物があったの。

ずっと渡しそびれてて、でも捨てられなくて…」


ルト

「……うん」


アサミ

「受け取ってくれるだけでいいから。

…ダメ、かな…?」


ルト

「…開けていい?」


アサミ

「う、うん…」


ルト

「…ふうん…マフラーか」


アサミ

「…ごめん、やっぱりーーー」


ルト

「髪切ったばっかで首寒かったから丁度良かった」


アサミ

「ルト…」


ルト

「はーあったけぇ……あいつら遅いな〜…」


アサミ

「…うん、そう、だね…っ」





ノゾム

「ねぇ、これでいいの?」


レイジ

「オッケーオッケー!

万事打ち合わせ通り!」


ノゾム

「…レイジってさ、結構損な性格してるよね?」


レイジ

「ん?それってどういう意味かな〜」


ノゾム

「昨日の電話の時も思ってたけどさ、どうしてレイジって、人の事はすっごく大事にするのに自分の事はおざなりなの?」


レイジ

「…ノゾムは相変わらず人の機微に敏感だなぁ。

それとも俺が分かりやすいだけか?ははっ」


ノゾム

「…誰にでも敏感な訳じゃないんだけどね……」


アレン

「あ、いたいた!

も〜お前ら勝手にいなくなるなよ、せめてもう少し近くにいてくれよ!

はーもうめっちゃ探したじゃん…」


レイジ

「あー悪い悪い、今戻る所だったんだよ。

な、ノゾム?」


ノゾム

「あ、うん、そうそう」


レイジ

「それにしてもどこ行くかな〜。

何かもう俺んちでもいっかぁ?」


アレン

「あれっ、あの部屋って渡米する時に引き払ったんじゃなかったっけ?

よく俺らが溜まってたとこだろ?」


レイジ

「そうだけど、今度は買った!」


ノゾム

「…買った…?」


レイジ

「うん」


アレン

「…マジか」


レイジ

「おう、マジマジ!

いい所だぜ〜、超夜景が綺麗なんだよ!

おし!俺んち決定〜!!

さぁお前ら、黙って俺に着いてこい〜♪」


アレン

「…あいつ、アメリカで何やってきたんだ…?」


ノゾム

「…取り敢えず分かってるのは、レイジがとんでもない事してきたって事じゃない…?」


アレン

「だな…俺あいつ敵に回したくねぇ…」


ノゾム

「うんうん、激しく同意!!」





レイジ

「よし、皆グラスは持ったな!

コホン、ではでは、皆様お手を拝借〜!」


アレン

「それは締めだろ!

グラス持ってんのに何させる気だよお前、グラス割れるわ!」


レイジ

「あれー?そうだっけ?

じゃあこういう時の挨拶の手本をやって貰おうじゃないか、ルト君!」


ルト

「はぁ!?何で俺がーーー」


レイジ

「さんはいっ!」


ノゾム

「うわぁ、すっごい無茶振り」


アサミ

「良かった、あたし指名されなくて…」


アレン

「うんうん、激しく同意!

ルトさんご指名入りまーす!」


ルト

「お前ら他人事だと思って…

俺がこういうの苦手なの知ってんだろ!?」


レイジ

「バカ野郎!そんな事言ってちゃアメリカで大成出来ないぞ!

苦手なら尚更手数踏んでモノにしないと!」


ルト

「アメリカで大成する気無ぇし!

てかツッコミ所満載過ぎて言葉も出ねぇよ」


ノゾム

「じゃあアレンがやってよ。

こういうの得意でしょ?元生徒会長だもんね〜」


アレン

「えっ、俺??いやいやいや…卒業してから何年経ったと思ってるんだよ」


アサミ

「…もう8年かぁ…早い様な、長かった様な…」


レイジ

「そこ!遠い目をしない!

つーかもう誰でもいいから早く乾杯コールしてよ、俺もう喉カラッカラ」


ノゾム

「あはは!

じゃあじゃあ、再会を祝してカンパーイ!」


アレンを除く全員

「カンパーイ!」


アレン

「ええっ、今何言おうか一生懸命考えてたのに乾杯された!?」


レイジ

「アレンは相変わらずクソ真面目だなぁ」


ノゾム

「うんうん、激しく同意!

アレンって頭良いくせに、要領悪いっていうか」


レイジ

「うんうん、なかなかのイケメンなのに、超奥手っていうか」


ノゾム

「絵に書いた優等生なのに、案外ドジっ子というか」


レイジ

「結構ひょろっとしてるくせに、なかなかどうして運動神経いいんじゃない?っていうか」


レイジ・ノゾム

「ねー」


アレン

「うう…褒めるかけなすかどっちかにしろよ、お前ら!」


アサミ

「あはは、このノリ懐かしい」


ルト

「変わってねぇな、こいつら…8年という歳月は無駄に過ぎたのか…」


レイジ

「いいじゃんいいじゃん、このメンバーで集まれるの、多分今日が最初で最後だろうからさ。

楽しくやろうぜ?」


ノゾム

「…え?

やだな、レイジったら…最初で最後だなんて、何言ってるの?」


レイジ

「ゴクゴクゴク…プハー!

はー、五臓六腑に染み渡る〜っ!!

ん、何か言ったか?」


ルト

「お前先に呑んでんじゃねぇよ!

おいアレン、一気呑み勝負しようぜ」


アレン

「えっ、俺あんまり酒強くないんだけどなぁ〜」


レイジ

「お、いいぞ、やれやれ〜!」


アサミ

「ホント男子って、幾つになってもバカなんだから」


ノゾム

「…何か、変だよね?」


アサミ

「ん?何が??」


ノゾム

「レイジ。

さっき言ってたの、どういう意味なんだろ…」


アサミ

「どうせあいつの事だから、大した意味無いんじゃないかな?

バカ騒ぎしてるし」


ノゾム

「………なら、いいんだけど…」


レイジ

「そうだ、せっかくだから夜景見ながら呑もうぜ!」


アレン

「あ、それ言おうと思ってたんだよ。

あんだけ豪語してたし期待してたんだけど、勝手にカーテン開けたら悪いかな〜とか思って」


レイジ

「アレンは相変わらずだな、すぐ言えば良かったのに」


ルト

「夜景か…確かにこの高さだったら綺麗だろうな。

…あれ、このカーテンどうやって開けるんだ??」


レイジ

「てれれてってれーん!

カーテンのリモコン〜!」


ルト

「ドラえもんか!!」


アレン

「…今って何でもリモコンだよね…

俺、どれがどれだか分かんなくなりそう」


アサミ

「ねー、何やってんの?」


アレン

「あ、アサミもノゾムもこっち来なよ。

百万ドルの夜景が観れるって」


アサミ

「百万ドルの夜景だって!ノゾム〜!」


ノゾム

「ち、ちょっと待って…今足痺れて動けない…っ」


ルト

「何やってんだよあいつは」


レイジ

「うーん、ちょっと待つか?」


ノゾム

「あ、いいよいいよ、ここからでも見えるでしょ?

早く開けてみてよ〜」


ルト

「ちょっとリモコン貸して、俺やりたい」


アサミ

「出た、新しモノ好き!」


ルト

「うるせぇな〜、男なんて皆こんなもんだっつーの」


アレン

「それは否定しないけど、ルトは特別だと思う…家電からゲーム機から携帯から、果ては車までポンポンポンポン買い換えるもんなぁ。

新しいのばっか買って、使い方分かんないとかならない?」


ルト

「あ、俺活字中毒だから説明書読んだりすんの苦痛じゃないんだよね。

どうせなら使いこなしたいじゃん」


アレン

「俺説明書読まない派〜」


レイジ

「カーテン、オープン〜!!」


ルト

「あ!レイジひでぇ、俺やりたかったのに!!

って……おお〜、いいじゃんいいじゃん」


アサミ

「うわ〜、綺麗〜!

予想以上かも!!」


レイジ

「だろだろ?」


アレン

「…こうやって見ると、地元じゃないみたいだな…」


アサミ

「ノゾム〜、そこからでも見える?」


ノゾム

「…ぜーんぜん見えないから、今そっち行く〜」


レイジ

「足痺れたのもういいのか?

何ならこの俺様がお姫様抱っこしてやろうか」


ノゾム

「は?な、何言って…ちょっと、本気でやろうとしないでよ!!

もう大丈夫だからっ!」


アサミ

「…そっか…そういう事か…

はいはいレイジ、セクハラだからやめようね〜?」


レイジ

「セクハラ!?

ちっ、それを言われたら男は黙って引き下がるしかないな。

ノゾム、早くこっち来いよ〜?」


アレン

「調子に乗り過ぎなんだよ、レイジは」


ルト

「まぁでも、それがレイジとも言える」


アレン

「確かに」


ノゾム

「あ、アサミありがと、助かった!」


アサミ

「うん。

…ノゾム、ちょっといいかな?

余計なお世話かもだけど…」


ノゾム

「え?何が??」


アサミ

「…顔、真っ赤だよ?」


ノゾム

「あ、あはは〜、お酒もう回ってきたのかな〜、そんなに呑んだつもり無かったんだけど…

久し振りに皆に会えたからテンション上がってるのかも!」


アサミ

「ま、いっか……分かった、今はそういう事にしとこうね」


ノゾム

「…察しのいい親友って、こういう時困るけど助かる〜」


アサミ

「男どもは気付いてないだろうから、取り敢えずあっち行こ?

あんまりコソコソ話してると怪しまれるよ」


ノゾム

「あ、そーだね…分かった」


レイジ

「へぇ、アレンってIT企業に勤めてんのか!

超エリートじゃん!!」


アレン

「そこまで大手企業じゃないけどね。

まぁでも最近は、チーム任される事も増えてきたかな」


レイジ

「ほうほう、で、ルトは何やってんの?」


ルト

「ん、俺は一応自営業、かな」


レイジ

「自営業??」


アレン

「聞いて驚け!

ルトは新進気鋭の作家さんなのだよ!」


レイジ

「作家!?

え、うっそ、お前って文才あったっけ!?」


ルト

「アレン、言い方大袈裟。何とかやってるレベルだし」


アレン

「いや、単体で生活出来るってなかなか難しいと思うよ?」


レイジ

「へぇ〜、意外だなぁ、そんな才能があったとはなぁ」


アサミ

「何の話してるの?」


ノゾム

「うわぁ、ホントに綺麗〜!」


アレン

「ん、現況報告してるとこ。ていうかさ、俺はレイジの方が気になるんだけど?

大学卒業と同時にいきなり渡米したって聞いてどんだけビックリしたか!

何やってたんだよ?」


ルト

「あぁ、それは俺も知りたい」


アサミ

「私も!」


ノゾム

「あっ、あたしも知りたいっ!」


レイジ

「まぁ待て、待てってお前ら!

どんだけ前のめりなんだよ!

そうだな〜、詳しく話すと長くなるんだが…」


ルト

「長くなんのか、なら座って聞くかな」


アレン

「俺はここでいいよ。

実はずーっと気になってたからさ、早く聞きたい!」


アサミ

「レイジっていっつも調子いい事言って、上手い事はぐらかすもんねぇ。

で、あっちで何してたの?」


レイジ

「うーん…腕試し、かな」


ルト

「腕試し?」


レイジ

「そ。まぁあんまり詳しくはまだ話せないんだけど、ある意味俺も自営業みたいなもんかな〜」


アレン

「おおっ、何か凄そう!!」


ノゾム

「…あ、レイジ、お酒空だよ?」


レイジ

「おっ、マジだ!

次何呑もっかな〜、酒さけ〜」


ルト

「何だよノゾム、これから詳しい話聞けそうだったのに」


ノゾム

「あ、ごめんごめん、気になっちゃってつい」


アレン

「まぁまだ時間はたっぷりあるんだし、ゆっくり聞けばいいよ。

俺はちょっと酔い冷まそうかな…」


ルト

「え、まだ1杯しか呑んでねぇじゃん」


アサミ

「お酒弱いのに一気呑みなんてするからでしょ。

ルトは結構強いんだね」


ルト

「どうかな、付き合いで呑む機会が多いだけだと思うけど」


アサミ

「そうなんだ、お仕事関係で?」


ルト

「それもあるし、ダチとかにも呼ばれたりするしな。

俺も酒追加するか…」


アサミ

「あ、うん。

……良かった、普通に話せて…」


ノゾム

「…ねぇ、アサミ?」


アサミ

「ん?」


ノゾム

「あたしの勘違いだったらごめんね?

あたし、アサミは今でも、ルトの事好きだと思ってたんだけど…違うの?」


アサミ

「んん〜、現在進行形でって事?」


ノゾム

「うん。でも何か、今のやり取り見てたらちょっと違うのかなって」


アサミ

「そうだね、まぁあれから8年だし……私も色々あったしさ。

ルトの事好きなのに変わりは無いけど、ずっと引き摺ってるのも嫌なの」


ノゾム

「ん〜、それは、これからの発展はナシって事?」


アサミ

「ナシかなぁ、多分だけど」


ノゾム

「…色々、複雑なんだね?」


アサミ

「ノゾムよりは複雑じゃないと思うけどね」


ノゾム

「え?それってどういうーーー」


レイジ

「あはははは!マジで!?」


ルト

「マジマジ、アレンはいっつもどっか抜けてんだよな〜」


アレン

「ちょっと本気でやめてくれる?

俺の黒歴史暴露大会じゃないんだからさぁ…」


レイジ

「いやぁ、いい肴だわこれ。他にも何か無いの?」


アレン

「無い、無いから!」


ルト

「そうだな〜、じゃあこれは先月の話なんだけど…」


アレン

「やめろ!ほんっきでやめろよぉ!!」


レイジ

「あはははは!」


アサミ

「男子って、悩み無さそうでいいなぁ〜」


ノゾム

「ホントだね…」





レイジ

「はー、呑んだ、食った、笑ったぁ〜…眠くなってきた…」


ルト

「お前まで寝るなよ…おいアレン、起きろって」


アレン

「んん〜…やめろよ…吐く…」


ルト

「ゲッ、マジかよ、呑ませ過ぎたか…

レイジ、ちょっとトイレ借りるなっ」


レイジ

「あいよ〜」


アレン

「うう〜、寝かせといてくれよぉ…」


ルト

「このままじゃ病院コースだろ。

ほら、肩貸すから歩けって」


アレン

「ふぇ〜い…」


レイジ

「ダチっていうより保護者みたいだな、ルト」


ルト

「いつでも代わってやるけど?」


レイジ

「いや〜、俺にはそんなお役目勿体無いから辞退しとくわ〜。

ふわぁ〜、アレンは頼むよ、おっかさん」


ルト

「はいはい…もう突っ込むのもめんどくせぇ。

あ、そういや女子は?」


レイジ

「寝室案内したよ。

男はその辺で雑魚寝でもいいけど、流石に女子には強要出来ないっしょ」


ルト

「そりゃそうか」


レイジ

「何か敷いとくから早くアレン介抱してやって」


ルト

「はいはい…ほらアレン、歩いてくれ頼むから」


アレン

「うう…頑張る…」


レイジ

「さってと…流石にフローリングに直は体痛くなるよな…敷くモン…あ、寝室に全部置いてあったっけ…

起きててくれればいいけど…」





ノゾム

「無駄、無駄過ぎる…」


アサミ

「ん?何が無駄なの?」


ノゾム

「レイジのマンションだよ!

高層マンションの最上階、だだっ広いリビング、お洒落な寝室まであって、見てないけど多分まだ他にも部屋あるよね!?」


アサミ

「あー、そうだねぇ、あるだろうねぇ」


ノゾム

「それで一人暮らしでしょ!?

えー、もう何が何だか…」


アサミ

「あぁ、納得した。

それでさっきわざと話切ったんだね」


ノゾム

「さっきって?」


アサミ

「仕事の話してた時の事だよ。

レイジの事聞くの、怖くなったんでしょ」


ノゾム

「…アサミさんってエスパーか何かですか…?

あたしは今、アサミの方が怖いよ〜」


アサミ

「接客業してるからかなぁ…何となくなんだけど、表情とかである程度読める様になったんだよねぇ。

で、当たりでいいのかな?」


ノゾム

「…うん、そうなのかな、多分…

あーでも、もう忘れてたと思ってたんだけどなぁ〜」


アサミ

「久し振りに会ったら、やっぱり好きだって思った?」


ノゾム

「どうだろ…あたしだってアサミとおんなじで、今まで色んな事があったし、お付き合いしたりとかもあったし」


アサミ

「そうだよね、8年、だもんね…」


ノゾム

「だから、自分でも今良く分かってないんだ、自分の気持ち」


アサミ

「それでいいんじゃない?」


ノゾム

「え?」


アサミ

「簡単に分かっちゃったら、きっとつまんないよ」


ノゾム

「……そう、だね。

何かアサミと話してたら、ちょっと気が楽になった。

ありがと」


アサミ

「どー致しまして。

じゃあそろそろ寝よっか」


レイジ

「コンコーン、失礼、淑女の御二方、まだ起きていらっしゃいますかー?」


ノゾム

「レイジ!?」


アサミ

「あたしに任せて。

はいはーい、起きてるよ〜」


レイジ

「開けても大丈夫〜?」


アサミ

「今開けるね。

どしたの?」


レイジ

「いやぁ、寝具一式ここに置いてたからさ、取りに来た」


アサミ

「そっか。

話ししてただけだから入っても大丈夫だよ」


レイジ

「サンキュー!

ええっと……あ、これでいいか…

っしょっと、邪魔したな諸君、また会おう!」


ノゾム

「…やっぱりよく考えてみる…」


アサミ

「まぁあれはあれで、面白いけどね」





レイジ

「んん…眩しいな…

あ、カーテン開けっぱだったのか…ふわぁ〜…」


アサミ

「あ、レイジ起きた?」


レイジ

「お日様に起こされた…」


アサミ

「じゃあそこに転がってる2人も起こしてよ。

勝手にキッチン借りたからね〜」


レイジ

「道理でいい匂いがすると思った…

おーい、アレン〜、ルト〜、起きろこら〜!」


ルト

「ってぇ……はぁ?

お前、起こすにしたって足蹴にする事無ぇだろ!?」


アレン

「痛い…酷い目覚めだ…」


レイジ

「そんな事言っていいのか?

じゃあチューして起こしてやろうか!」


アレン

「ぎゃー!寄るな気色悪い!!」


ルト

「やっべ、逃げとこ…」


アサミ

「騒いでないで、そこ片付けてよ〜。

置き場無いじゃないの」


ノゾム

「早く食べよ〜、お腹空いた〜」


ルト

「え、飯作ってくれたのか。

へぇ…美味そう」


アサミ

「あり物で作ったから大した物じゃないけどね」


レイジ

「いやいや、充分大したモンだよ。

さあお前ら!ちゃっちゃと片付けるぞ!」


ノゾム

「寝起きでこのテンション凄いなぁ…」


アレン

「あ、ヤバイ…匂いで一気に腹減った…

レイジ〜、布団ってどこに運べばいい?」


レイジ

「そこら辺に重ねといてくれればいいよ、後でやっとくから。

それより俺は早く食いたい!」


ルト

「それには激しく同意、だな」


ノゾム

「それそれ、流行ったよねぇ。

懐かしいなって思ってた、昨日から」


アサミ

「そういや昔、事あるごとに使ってたっけ、激しく同意」


ノゾム

「しつこい位にね。

何だろね、あの頃って特殊っていうか、別世界みたいな……今思うと、だけど」


アサミ

「青春って事でしょ?

あ、これで全部運んだかな」


ノゾム

「うん、食べよ食べよ〜」


レイジ

「よし、全員座ったな?

では美味しい朝食を用意してくれた2人に感謝して、頂きます!」


アレンを除く全員

「いただきまーす」


アレン

「ええっ、普通、普通だった!

絶対何か来ると思って構えてたのに!」


レイジ

「まだまだ修行が足りんなぁ、アレン君」


アサミ

「ねー、今日は皆予定あるの?」


レイジ

「あ、悪い、俺は飯食ったら抜けるわ」


ルト

「何だよ、仕事?」


レイジ

「ちょっと連絡入ったからなぁ。

って事で、食い終わったら場所変えてちょーだいね君達?」


アレン

「まーしょうがないかぁ、元々急に呼び出したんだし、宿を提供してくれたのにこれ以上無理は言えないしね」


アサミ

「そーだね」


ルト

「俺は帰るかな〜、夕方から打ち合わせ入ってるし」


アレン

「ルトも抜けんの?

そーか、じゃあ厳しいな〜…また次にして、解散にするかぁ」


アサミ

「そうしよっか。

ノゾムはどうする?

今日休みだって言ってたよね?」


ノゾム

「……」


アサミ

「…ノゾム?」


ノゾム

「へ?…あ、ごめん、聞いてなかったかも…」


アサミ

「…ノゾムは私が面倒見るか…」


レイジ

「ごっそさん!

美味かった〜、ひっさびさに手料理食ったわ〜」


アレン

「レイジの現況が分かったね」


ルト

「しょっぱいな」


ノゾム

「えっ、お味噌汁しょっぱかった?」


ルト

「そっちじゃねぇよ、レイジの事だよ。

味噌汁は美味かった。ごちそーさんでした!」


ノゾム

「何だ、紛らわしい事言わないでよね」


アレン

「ふ〜、朝からちゃんとしたの食うのっていいなぁ。2人ともご馳走様ね」


アサミ

「喜んで貰えて良かったよ」


ノゾム

「あ、レイジ…もう時間無い?」


レイジ

「そーだなぁ、タイムリミット5分前ってとこかな」


アサミ

「えっ、そんなに時間無いの?」


レイジ

「悪いな。

あ、片付けはやっとくからこのままでいいよ」


ルト

「んじゃそろそろ行くとするかぁ」


アレン

「な、何か急にせわしないな。

レイジ、昨日今日とありがとな!」


レイジ

「ほいほい、俺も楽しかったよ」


ノゾム

「片付けしないで帰るの申し訳ないなぁ〜…」


レイジ

「いやいや、追い出すのこっちだし、作って貰ったからそんだけで充分だよ」


ルト

「じゃあレイジ、世話になったな。

また来てもいいか?」


レイジ

「都合が合えばね」


アレン

「あ、待てって俺も駅まで一緒に行くから!

じゃあレイジ、また!!」


レイジ

「ああ…気ぃ付けて帰れよ〜」


アサミ

「ノゾム〜?

まだ〜?」


ノゾム

「ちょっと待って、カバンが……ごめん、先行ってて!」


アサミ

「はいはい。

じゃあレイジ、ちょっとだけ相手してやってよ、またね!」


レイジ

「へ?…あ、ノゾム、カバン見付かったのか?」


ノゾム

「うん、大丈夫。

…ねー、レイジ?」


レイジ

「ん?何だよ改まった顔しちゃって」


ノゾム

「…何か、隠してる事無い?」


レイジ

「隠してる事って〜?

別になんも無いけど」


ノゾム

「ホントに?」


レイジ

「ホントホント。

大体俺に、隠し事とか似合うと思う?

そういうキャラじゃないっしょ」


ノゾム

「…うん、分かった…

じゃあ、帰るね。楽しかったよ」


レイジ

「おう、俺も」


ノゾム

「じゃあ…また会えるの、待ってるから」


レイジ

「え、あ、ノゾム…?」


ノゾム

「待ってるから、絶対帰ってきてね?」


レイジ

「お前、何言ってーーー」


ノゾム

「じゃあね!」


(扉閉まるSE)


レイジ

「…何だよ、意味深な事言って…

ってやべ、時間だ……はー面倒臭ぇな〜……

あれ、俺ここに置いてたっけ…ちゃんと閉まってた筈…

…………そっか、あいつそれであんな事…」





アサミ

「ノゾム、ちゃんと話せた?」


ノゾム

「どうだろ…ちゃんと、は話せなかったかも」


アサミ

「あたしもそんなに詳しくは無いけど、あの量だもんね…

見付けちゃったのは偶然だし仕方ないとして、話してくれてもいいのにね…」


ノゾム

「…きっと、1人で闘うつもりなんだよ…」


アサミ

「男ってそういうとこあるもんね」


ノゾム

「だから、待ってるって言ってきた」


アサミ

「うん、それでいいと思うよ。

私達に出来る事はそれしか無いんだもん。

例え、話してくれたとしても、何の力にもなれないんだから」


ノゾム

「話して欲しいっていうのは、結局こっちのエゴだもんね。

それを押し付けちゃダメだよね…」


アサミ

「1人じゃないって事だけ、分かっててくれればいいんだよ。

あたしも今回は自分の中で整理ついたし、これから先に進めそうかな〜」


ノゾム

「1人じゃない、かぁ…

そうだよね…時々無性に寂しくなる時があるけど…何か、頑張れそうな気がする」


アサミ

「さ、それじゃあ行こっか」


ノゾム

「うん!」



レイジ

「僕らは、有限の命を生きる…

無数の出会いや別れを繰り返しながら、その中に奇跡を見出しながら…

全てをさらけ出す必要は無い、全てを受け入れる必要も無い。

ただそこにあるのは、目に見えない絆。

何年、何十年経っても切れない絆を胸に…一歩ずつ、歩いていこう。

自分だけの道を、歩いていこう…

それは、一人旅ではない事を忘れないで」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

Not alone HAL姉 @scruffs

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る