ご近所スペースオペラ おとなりエイリアン

福本丸太

プロローグ

 様々な人間関係において真に得がたいものは何か。

 友人、恋人、配偶者。父、母、息子、娘、兄、姉、弟、妹。それらは人生のずっと後になっても手に入ることがある。しかしどれだけの努力やいかなる奇跡を用いてもあとからでは決して手に入れることができないものが一つ。それが幼馴染。双子ならあり得る生き別れさえ、幼馴染には通じない。

 俺、八十八宗やそはちたかしにはその幼馴染がいる。そいつは同じ日に同じ病院で産まれ、母親がすぐに亡くなったせいで隣家である我が八十八家でキョウダイ同然に育てられた。いつでもそばにいる当たり前の存在。真実を知るまではそう思っていた。というのはそいつが普通の人間とは違ったからだ。

 真実を知ったのは七年前。当時俺は五歳で、山の中虫取りの最中足を滑らせ木から落ちた。幸い土の柔らかい所に落ちたおかげで大した痛みもなく、生え変わりでぐらついていた歯が弾みで抜けたことに感動すら覚えたくらいだ。

 ただ擦り傷ができていて血の滲んだ膝を抱えた俺のことを指差し、そいつはこう叫んだ。

「タカくん宇宙人だ! 血が変だよ!」

 隣家との間に立ちはだかる種の壁は高く複雑に、こちらとあちらを絶望的に隔てている。

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