不死者たち
「オクトパス……? ミスターオクトパスは確か七十後半のはず」
しかし、ココロの目の前にいるのは、どう見ても二十代の青年だ。
「貴方、完全不死微小機械を使いましたわね?」
ココロの後ろから姿を現したミロクは、冷めた目でオクトパスを観る。
「その通り」
青年がかけていた丸眼鏡が光を反射する。
「傷つけど再生する体、底知れぬ体力、溢れるほどの若さ、これに私の頭脳が加われば、世界を救うことも容易い!」
オーバーアクションを取りつつ、底知れぬ力を見せつけるように演説するオクトパス。
「世界を救う?」
ココロはその一言に、何かの引っかかりを感じた。
「そうだ。君は知らないだろうが世界は崩壊へ進んでいるのだ。それを救えるのは選ばれた者、つまり私しかいないのだよ」
力強い、強すぎる自信。狂っている、とも取れるその言葉にミロクは肩を落す。
「……妄念、ですか。そういう類は亡くなった女性だけにして欲しいですわ」
オクトパスは動ぜず、両手を広げる姿を崩さない。
「はははは、何とでも言い給え。この力さえあれば私は神にでも成れる!」
「馬鹿ですわね。生きているのにカミサマになれるとでも思っているのですか?」
ミロクの呆れた声。それに対して、オクトパスの顔が少し引きつる。
「神は不死だ、ならば私も神になれよう!」
強引な結論。それは明らかにミロクの言葉に押されていた。
「馬鹿ですわね。カミサマは生まれたときから死んでますのよ。生きていないのに死ぬことなどできましょうか」
元々終わった幻想なのですから、とミロクは締めた。
「うるさい娘だ。同じ力を得た同士と思っていたが、とんだ勘違いのようだな」
オクトパスの声に怒気がこもる。顔は既に蛇のようにミロクを睨んでいた。
「貴方と同士だなんて、虫酸が走りますわね」
しかしミロクは臆することも無く、そう言い切った。
「――――君を験体として完全不死の研究を進めるのも良いな」
オクトパスはスーツジャケットのポケットからペンサイズの装置を取り出し、ボタンを押した。
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