MIROKU

犬ガオ

彼と彼女の奇妙な生活・2


「ねえココロ」


 ベランダに立っている彼女の髪が風に揺れる。絹糸のような艶やかさが揺れるたびに黒髪を煌かせる。


「……」


 彼女に呼ばれた彼は、ベランダに設置された白い円形テーブルセットの椅子に座っていた。彼は読むことを止めない。少女は構わずに話しかける。


「不死者は嫌い?」

「当たり前だ」


 彼は即答した。その言葉だけに脊髄反射したような速い回答。


「そう……」


 彼女の声のトーンが下がった。しかし、彼は本をテーブルに置き、さっと彼女を見て言葉を続ける。


「だけど、あんた、じゃなくてミロクの料理は嫌いじゃない」


 その言葉を聞いて、彼女は少し驚きつつ軽く笑った。


「ご注文はなんでしょう?」


 足を交差し、白いワンピースを少しつまんで、使用人のように礼をする。


「ライ麦パンと生ハムのカルパッツァ、冷たいパンプキンスープには多めにクルトンを」


 彼はその冗談に気付かず、真面目にランチの要望を伝える。


「はいはい、わかりましたわ」


 いよいよ笑いが堪えきれなくなったのか、彼女は彼の横を通りすぎ、自分の城になった台所へと駆けていった。

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