都編
義平と右衛門督
1159年 12月 9日 京 義朝屋敷
翌日、義平は隊列をきちっ整え、源氏の白旗を堂々と掲げ入京した。都の義朝屋敷へ一路向かった。京の義朝屋敷は
義平は、これまた、時期悪く丁度、
大概、こういったものは、一番えらい人物のところでところに家臣が
藤原信頼は、馬に乗れるのか心配なぐらいの肥満で、それが逆に周りに威圧を与える押し出しにもなっている、この肥満のことから当時からすでに唐で乱を起こした
この
義平が引き連れた、坂東武者一行は、義朝の京屋敷に着くと、主だった将だけ義平が率いてそのまま大広間にとおされた。無論、
百人は入れるかというような大広間で此度の襲撃事件に参加した、公家、主だった武者が全員そろっていた。
上座には、二人。左側に畳一枚敷き差をつけ、
河内源氏の武者はある程度、上洛したことのない義平でも顔や名前が一致するが、河内源氏の範疇をこえ摂津源氏となると概ね知らぬものばかりである。
酒の匂いがぷんぷんし、つい最前まで殺し合いをしてきた男たちの殺気を緩和しているものの、座は恐ろしいばかりのはりつめた気で満ちている。
さすがの、義平も手綱を締めてかかる、しかし、堂々と上座に向い真ん中に歩を進めると最前列の真ん前にざっと大刀を置くや、座し両手をついた。義平に従って上洛した坂東武者達一行が同じ姿勢になるのを待つと、しっかとした大音声で挨拶を申し述べた。
「これに侍りまする、
そして、座したまま頭を更に下げ、一礼する。引き連れてきた坂東武者たち一行も引き続き、揃って頭を下げる。
「そのほうが、悪源太か」
信頼の挨拶はこう始まった。頬を歪め、顔斜めにして義平を覗き込む。
「はっ、
「
「はっ、それも、よう言われまする」
「わしが、
調子を合わせたように、左右の公家、武者がどっと笑う。
「もう事は、済んだ」
「はっ」義平は、頭を下げたまま。
「欲しい国をいうてみよ、思いのままぞ」
「はっ、この義平、国など要りませぬ」
「ならば、官位か」
「はっ、官位はもう悪源太というものを貰うておりまする」
これは、万座すべて、受けた。今度は、本気の
「ほう、変わっておるな、、え、義朝」と言い、藤原信頼は隣に座する義朝を見る。
「ほとほと、困った息子でございまする」
「母親似か?ん?」藤原信頼は、そう訊き頬を歪めニヤリとする。全部知ってるのか、たまたまなのか、わからないのが逆に怖い。
義平は、返事をしなかった。そのことが、場の笑いにつながらなかった。ここにいる全員が知っているのである。
「悪源太よ、上洛の折には、
「はっ」今度は、返事をする。
「尋ねたき儀、誠に多く、、」そこまでいったところで信頼がうっとおしそうに手を振り遮った。
「会わせてやろう」
信頼が、片手に酒の拝を持ったまま、もう一方の手で何かを呼び寄せる仕草をすると、なにかが義平の前にごろごろと転がってきた。やや赤く黒く砂まみれの塊が。
信西の首である。
入京そうそう眼前に首である。
「首には訊けぬな」笑う信頼。
「さすがの悪源太も口が利けぬと見える」と言うやいなや、信頼は大きく笑い出した。合わせたような左右の大笑い。
「そこにおる、
義平も、
「京は怖い所ぞ、うん?、昨日まで日ノ本を取り仕切っておったものが今日には、これじゃ」信頼は手を首にちょんちょんと当てる。
「今のうちに官位を貰っておいたほうが身のためかもしれんぞ、うん?。わしはな、帝も上皇も手に入れた、国、官位並びに
信頼は狂ったように笑い出した。
まるで、
義平は、もう一度、頭を下げると大音声で言い出した。義平の頭は信西の首に当たらんばかりである。
「恐れながら申し上げまする。それでは、平清盛公を討つ
そこまで義平がいった時に信頼がまたうっとしいそうに
「ならぬ」否定は早かった。
「遅参したが故、手柄が欲しいか、悪源太、うん?」
「ちがいまする」こちらの否定も早かった。目の前に首を置かれては早くなるのかも知れない。
「この義平のように、官位、宣旨では、まつろわぬ者、それこそ、都を離れれば離れる程、いまだ多くおりまする。どうか、清盛公追討の宣旨をこの義平にお与えになれば、、
「義平!」義朝が見兼ねて、義平をいなした。
「その方、今、わしにまつろわぬと申したな、そして、更にこのわしに意見するつもりか、」
信頼が身を乗り出してきたと思ったら、
「昨夜より、張り付いておったのじゃ、流石に疲れた、わしはさがる。」と信頼は言い、上座から義平の真横をとおり下がろうとした。そのとき、
「
義平は、中腰になり両手で藤原信頼の袖を掴んだ。藤原信頼の顔が変わった。
「貴様っ!、なにか勘違いをしておるのではないか、官位も何も持たぬくそ田舎侍がしかも事の大事に遅参いたし、このような、大刀を
藤原信頼はその義平の手を大刀ごと足で踏みつけた。そして顔を近づけると
「ゲスな
「ぎゃはははは、、」と大音声で笑い声を挙げ、大広間を下がっていった。
義平、完敗である。
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