第16話 薩摩2

「城に着いたぞ~♪」


ライと海ちゃんは薩摩のお城に着いた。


「大きいな。」


ライは、お城の大きさに驚いている。


「義久様の紹介状です~♪」


門番に見せると、中から1人の武将が現れた。


「お待たせしました。私は島津の3男、歳久です。」


島津4兄弟の1人である。


「どうぞ、お入りください。」


ライと少女は城の中に通された。


「うわぁ~♪ 中も広いな~♪」


少女は見学気分だった。


「首里姫様を探さないと。」


ライは少女に耳打ちした。


「わかっているよ!」


少女の反撃にあっていると、


「着きましたよ。」


2人は中庭に通された。


「よく来た客人よ。薩摩の大名、島津貴久じゃ。」


大名の島津貴久、次男の義弘、4男の家久がいた。


(この人が姫を・・・。)


ライは複雑な気持ちになった。


「は~い~♪ 海ちゃんと、こっちはでんと言います。」


少女はライが不愛想なので、2人分の自己紹介をした。


「義久の書状には、肝付が化け物になって、子供が倒したとあるが、本当か?」


貴久は疑いの眼差しで、ライを見る。


「人間が化け物になるなど、信じがたい。」


貴久には信じがたかった。


「家久。この子供と手合わせをしろ!」

「はい、父上。」

「実力をみれば、本当かウソか分かるだろう。」


ライは4男の家久と勝負する。


「・・・。」


ライは自分が疑われていると、子供ながらにプライドが傷ついた。



「始め!!!」


ライと家久は竹刀を構え、勝負を始める。


「でやあ!!!」


家久が勇猛果敢に攻め込んでくる。バチバチ。ライも竹刀を竹刀で受け止める。


(直線的で正直すぎる・・・、実戦経験がない証拠だな。)


ライは子供の頃から、西之島のコロシアムで殺し合ってきた。バチコン!!! ライの薙ぎ払いの一振りは、家久の竹刀を宙に舞いあげた。


「な!?」


貴久、義弘、家久は、まさか! と驚いた。ドテ。竹刀は地面に落ち転がり、家久は尻餅をついた。


「やった~♪ さすがライだ~♪」


少女は大喜びである。


「いえ、まだです。」

「え?」

「あの人を怒らせたみたいです。」


ライは次男の義弘を見る。


「子供、拙者とも勝負してもらおう。」


義弘は立ち上がり、中庭に降りてくる。


「命令ですか?」


ライは義弘を戦う前から、強いと感じている。


「お願いだ。弟の敵討ちと受け取ってもらおうか。」


義弘は地面に落ちている竹刀を拾い、ライを見つめる。


「・・・。」


ライも義弘を見つめ、2人は沈黙に包まれる。


「デヤア!!!」


義弘が先に動き、竹刀をライに振り下ろす。バチーン!ライは竹刀で受け止める。


(なんてチカラだ!? パワーはギュウさんと同じ位か!?)


ギュウさんは西之島の総支配人である。


「デヤア!!!」


義弘が、さらに竹刀に力を込める。デューン!竹刀を受け止めているライが剣圧で地面にめり込む。


(ダメだ! 受け止めては!)


トウ。ライは後ろに飛び、剣圧の重力から逃れる。


「よくぞかわした。やるな、子供。」

「あなたも強いですよ。」


ライと義弘は一太刀で相手の強さを認める。


「今度は、こちらからいきます。」

「こい!」


ライは駆け足で義弘に突っ込んで行く。


(パワーで負けるなら・・・。)


ビュン! ライの姿が義弘の視界から消えた。


「なに!?」


義弘はライの姿を見失い戸惑った。


(スピードだ!!!)


ライの姿が突然、義弘の目の前に現れた。


「な!?」


剣の達人の義弘ですら、ライの速さに対応できなかった。バンバンバン。ライの早打ちが義弘を捉えた。


「うわぁ!」


義弘は片膝を地面につき、ライは勝負に勝った。


「兄上が負けるなんて!?」


家久は兄が負けるのを始めて見て驚いた。


「やった~♪ ライの勝ちだ~♪」


少女は大いに喜んだ。


「私の負けだ。」


義弘は武士らしく、自身の負けを素直に認めた。


「もう一度戦ったら、勝てる気はしませんよ。」


ライも義弘を強者と認めて、笑顔で義弘に手を伸ばす。ギュ。義弘も笑顔で手を伸ばし、2人に男の絆が生まれた。


「ワンワン!!!」


その時だった。元ライのペットの妖怪発犬のハチの霊が吠え始めた。


「どいつもこいつも、役立たずばかりだ・・・。」


大名の島津貴久の様子が何だか変だ。


「殺す!」


貴久は立ち上がったかと思うと、メキメキメキ。人間であった貴久の姿が、大きさ2倍の黒く化け物の姿になっていく。


「父上!?」


島津の3兄弟は父の変化に驚きを隠せない。


「プワー!!!」


化け物はけたたましい雄叫びをあげ狂った。


「同じだ。肝付の時と。」


ライは人が化け物に変わるのを見るのは2回目だった。


つづく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る