第38話 神7

堕天使ミカ子のガトリング砲が、神デウスに炸裂した。ガチャッてた、正義の使いさまが、ついに邪神の剣を引き当てた。俺とデウスの最終決戦が始まる!?


「デビちゃん、ありがとう。」

「頑張ってくださいね、正義の名の元に。(ホント。)」

「おお! 正義の名の元に!」


もうデビちゃんの正義の言葉の後に、(ウソ。)と書けなくなってきた。それほど正義の使いさまらしくなっているのだ。


「神である私が・・・私が負ける訳がない!? これは何かの間違いだ!?」


俺に切り付けられたダメージと、ミカ子のガトリング砲のダメージで、瀕死の状態だった。なによりも神である自分が、自分よりも劣る人間や天使に負けるのが許せなかったのだ。


「いくぞ! デウス!」


俺は、デウスに向けて飛んでいく。邪神の剣には、禍々しい闇のオーラが満ち溢れている。


「これで、終わりだ!」

「ギャア!?」


剣でデウスを串刺しにする勢いで突撃する。さすがのデウスも死を覚悟した。


「おやめなさい。」


その時だった。天界から神の声が聞こえる。


「か、体が動かない!?」

「ゼウスさま!?」


俺の体は動かなくなった。それどころか、デウスと距離を空けるように後ろに移動させられる。これも神の力なのか!?


「我は、神の王、ゼウスだ。」


声の主は、神王ゼウスらしい。


「まず、神デウスの愚かなる行いを、同じ神として、皆にお詫びする。申し訳なかった。」


ゼウスは、神らしかった。その低姿勢な態度に、俺や天使たちは驚いた。ゼウスは、神の威厳に溢れていた。


「正義の使いよ。」

「は、はい。神さま。」


神ゼウスに、デビちゃんは指名された。少し緊張している。


「神になる気はあるか?」


ゼウスは、ストレートに質問してくる。


「はい、神になりたいです。(ホント。)」


デビちゃんは、本当は小悪魔だけど、素直にそう思えた。


「どうしてなりたいのだ?」


神の質問に、デビちゃんは考えることなく、すぐに答える。


「私は、いたずらや人を陥れることばかりしてきましたが、みんなに出会って、困っている人間やモンスターたちを助けて、自分の知らない世界を知ったんです。正義って、すごいな! って。だから、神になって、もっともっと困っている人を、いっぱい! 助けたいんです!(ホント。)」


この小悪魔、悪魔失格です。


「ハハハハハ! 愉快じゃ! まずは転職をするために、神の神殿を目指せ。そうすれば、神になれるだろう。」

「ゼウスさま! ありがとうございます!」

「頑張るのじゃぞ。」

「はい。」


デビちゃんは、神へ、一直線だった。


「天使たちよ。」

「はい、神さま。」

「これから、正義の使いには、天界からも、魔界からも、存在を妬むものが邪魔をしてくるだろう。おまえたちで守ってやってほしい。」

「はい。分かりました。」

「ラファ子、正義ちゃん大好き。」

「旅は道連れ世は情けってね。」

「うむ。」


ゼウスは天使たちを、正義の使いのお供に命じられた。


「だるいんですけど・・・。」


ミカ子は、堕天使に堕ちて、堕落していた。ゼウスは、神聖な魔法陣を描く。


「天使に戻れ!」


ミカ子から、闇のオーラが抜けていく。天使に戻った。


「あれ!? 私はどうしていたんだ!?」

「ミカ子、ウザい・・・。」


ミカ子は、堕天使のままが良かったのかもしれない。


「次に、シル子。」

「はい。ゼウスさま。」

「悪魔にまで堕ちたそなたは、本来なら、打ち首獄門の刑なのだが、天使に戻れたのだ、罪を償い、若い天使たちに力を貸してやってはくれないだろうか?」

「そんな、もったいない、お言葉を。微力ですが、私にできる限り、正義の使いさまをお助けいたします。」

「うむ。」


シル子の罪は、神の寛大な心に許された。天使になったシル子が仲間になった。


「最後に、デウス。」

「ゼウスさま! 私のボロボロの姿を見てください! こいつらは、神に歯向かう危険分子です! 消滅させましょう!?」


デウスは、まだ俺たちに敵対しようとしていた。その姿を見たゼウスは悲しがる。


「デウスよ。」

「はい。ゼウスさま。」

「おまえは、神、失格だ。」

「え!? ええ!?」

「おまえを天使デウ子に降格する。」

「そんな!?」


神が天使に降格するなど、聞いたことが無い。前代未聞であった。デウ子は、頭に輪っかを乗せ、背中に羽根のランドセルを背負った。天使デウ子になってしまった。


「正義の使いよ。」

「はい。神さま。」

「天使になったデウ子も仲間に入れてやってくれ。」

「ええ!?」


デビちゃんだけでなく、俺や天使も驚いた。


「嫌です! こんな性格の悪いヤツ要りません!」

「デウ子、帰れ!」

「デウ子、寺へ行け!」

「デウ子、反対!」

「これ以上、増えたら私の出番が減るじゃないか!」

「今度こそ邪神の剣を突き刺してやる!」

「・・・。」


全員がデウ子のパーティー入りを反対していた。シル子だけは、自分のことを言われているようで、耳が痛かった。


「ショボン・・・。」


デウ子は、自業自得ではあるが、自分が嫌われていることに、ショックを受けた。


「正義の使いよ。」

「はい、神さま。」

「デウ子を受け入れるのも、神になるための、第1の試練だ。」

「え?」

「おまえの寛大な心が試されている。デウ子1人を助けられないものが、多くの困っている人間たちを救うことができるだろうか?」

「そ、それは・・・」


デビちゃんは、神デウスの言葉に心が締め付けられました。


「すいませんでした。私が間違っていました。デウ子を受け入れます。」

「おお! そうか! さすがは神候補生だ。」

「はい、正義の使いですから。(ウソ。)」


小悪魔は、神をも欺いた。やはり、小悪魔は小悪魔である。


「ありがとう、正義の使いさま。」


デウ子は、受け入れてくれると聞いて、デビちゃんに泣きついてくる。


「はい、正義の使いですから。(ウソ。)」


小悪魔は、笑顔で救いの手を差し伸べる。そして、心の中で蔑む。


(おまえなんか、嫌いだ!)


これでも正義の使いさまである。


「それでは、さらばだ! 正義の使いたちよ!」

「神さま、さようなら!」


神ゼウスは、いなくなった。


「みなさん、神の神殿に向けて、出発しますよ!」

「おお!」


正式に神候補生になった正義の使いさまのデビちゃんの号令に、俺、天使たちは一致団結した。


「正義ちゃん、神さまになるんだね。」

「みなさんのおかげです。(ウソ。)」

「今度こそ、光と炎で燃やし尽くすんだ。」

「ハハハハハ! ミカ子の冒険は、まだまだ続くのだ!」

「私がいないと、司会役がいない。」

「フっ・・・まさか天使に戻る日がこようとは・・・。」

「みなさん、待ってくださいよ!」

「デウ子、嫌い。」

「確かに、ミカ子並みにウザいな。」

「こら! 私はウザくないぞ! 正義の使いさまをお守りする天使になるのだ!」

「やっぱり、ミカ子はウザい・・・。」

「ハハハハハ!」


俺たちは、新たな冒険を始めることになった。


「デビちゃん。」

「なんですか?」

「戦いが終わったんだけど、「あの方」について教えてほしいんだけど?」

「そうですね。「あの方」は、捕らえられて・・・。」


その時だった。正義の使いの体に、ビリビリ電撃が走る。


「ギャア!!!!!!!!!!!!!!!!!」


正義の使いは、真っ黒焦げになってしまった。「あの方」のことをしゃべるのはタブーなのである。


「ゲフ~。」

「ははは・・・、まだ「あの方」のことは話せないんだね。」

「デビちゃんは、呪われています・・・ガクン。」


15回目の正義の使いさまこと、神候補生の小悪魔の真っ黒焼きの完成であった。正義の使いさまの神になるための試練は、まだまだ続くのだ。


つづく。


















  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る