第12話 第2刺客

ここは魔界のあるお部屋。そこに女性が1人。今時レトロだが、水晶玉で下界の様子を見ている。


「泣ける! スーデビちゃんとナイちゃんが仲良くなれてよかった!」


「あの方」は、水晶に写る2人を見て、喜んでいた。意外に涙もろかった。そして、ふと我に返る。


「違~う!? なに涙を流して抱き合ってるんだ! 役立たず!」


水晶に写る、ナイちゃんに怒っている。


「それにしても、パロってても天使・・・なかなか強いわね!?」


「あの方」は、少し考え、閃いた。


「なら、こちらも、より強い黒の精霊を送り込めばいいんだわ!」


闇の魔法陣を描き始めた。辺りで闇色の光が輝く。


「いでよ! ドラゴン!」


竜の精霊、ドラゴンを召喚した。


「お呼びでしょうか。」

「よく来た。ドラちゃん。」


ドラゴンなので、ドラちゃんである。


「地上で、デビちゃんが正義の使いと言って、天使に寝返ろうとしている!」

「なんだって!?」

「行って、あの小悪魔を懲らしめて来て。」

「小悪魔の分際で、正義の使いだなんて、アホですね。」

「頼んだぞ!」

「お任せください。この世でドラゴンよりも強いものはいません。」


こうして「あの方」は、第2の刺客として、ドラゴンのドラちゃんを俺の元? いや正義の使いさまとして、絶好調の小悪魔のデビちゃんの元に送り込んだ。



俺は、そんなこととは知らずに、平和に暮らしていた。俺とデビちゃんは、学校に登校中である。


「ブ! ブ!」

「デビちゃん、何をそんなにすねてるの?」

「やっと冒頭の電撃ビリビリが無くなったと思ったのに・・・。」

「お約束だから仕方がないね。」

「ガーン!?」


デビちゃんは、「あの方」の電撃ビリビリからは逃れられない運命だった。


「いいじゃん、その分、人気が出るよ。」

「ナイちゃん・・・。」


悪夢のナイトメアのナイちゃん。なぜか、全話から残っている。


「今度は、一緒に真っ黒焦げになろうね。」

「それはイヤかも。」

「それでも友達か!?」

「2人は、仲がいいね。」


俺は記憶喪失で自分の性能を理解していないのだが、神人間として、精霊をかなり装備できることが分かった。普通人間は、光の精霊しか装備できないが、俺は、闇の精霊も装備できるらしい。光の正義の使いさま(小悪魔です。)と闇のナイトメアの2つの精霊を装備した。俺はナイトメアのマスター称号を手に入れた。


「あれ、小悪魔のマスター称号がある!?」

「しまった!?」


ちなみに本当は、小悪魔のデビちゃん。


「えい!」


しかし、魔力で小悪魔マスターの称号を、正義の使いさまマスターの称号に書き換えたのである。


「正義の使いさまマスター? さっきのは見間違いかな?」

「そうですよ。あなたは正義の使いの弟子なんですから。(ウソ。)」

「そうだね。ハハハ!」


記憶喪失の人間って、単純で簡単に洗脳しやすかったり、騙しやすかった。



「おはようございます! 正義の使いさま! とお供たち。」

「いきなり省略かい!?」

「おはよう、みんな。」

「おはよう。正義ちゃん。神人間くん。ナイちゃん。」

「おはようございます。よろしくお願いします。エヘ。」


教室にやってきたら、いつものように、天使4人組と挨拶を交わした。


「うわぁ!? 本当に小悪魔が天使と仲良くしている!? ナイトメアまで、天使に挨拶しているとは!? これは魔界の秩序違反だ!」


どんな秩序だ!? その様子を見ていたドラゴンのドラちゃんは、今までに見たことの無い光景に衝撃を受けた。


「惜しかったね。もう少しで真っ黒焦げにならなくて済んだのに。」

「今回は、神の怒りには触れないです。」

「おお! あれは神々がお怒りになっているのですね!?」

「ミカ子、話に入って来るな!」

「ミカ子、ウザい。」

「天使って、いつもこんな会話なんですか?」

「そうだよ。気にしないで、気軽にやってね。」

「はい! なんか楽しそうです!」


ナイちゃんは、天使とは、日々、悪魔を倒すことばかり考えている、極悪な集団だと思っていた。それが、こんなにザックバランだったので、ギャップを感じた。


「小悪魔と悪夢とはして、あるまじき行為! 許せん!」


ドラゴンのドラちゃんは、竜の魔法陣を描く。


「炎で焼き尽くしてくれる!」


竜の魔法陣から、炎が現れ、デビちゃんを襲う。


「危ない!」


ガブ子が異変に気がついた。飛んでくる炎に対し、光の魔法陣を描く。


「いでよ! バリア!」


光のバリアがあらわれて、みんなを包み込む。炎は、バリアに当たって消滅していく。それを見たデビちゃんは驚いた。


「こ、これは龍の炎!?」

「その通りだ! 正義の使いさま!」

「ドラゴンのドラちゃん!?」

「デビちゃん久しぶりだな。」


俺たちの前にドラゴンが現れた。もちろん人間の顔と同じくらいの大きさである。デビちゃんたちと同じ大きさである。


「本当に天使と一緒にいるんだな。」

「ドキ!?」

「それでいいと思っているのか?」

「みんないい人達ですよ。ねぇ、ナイちゃん。」

「うん、楽しいかも。」

「ズコー!?」


小悪魔と悪夢は、天使との共同生活を楽しんでいた。それが魔界でも最高の種族のドラゴンには理解できなかった。ズッコケもするが、背中がかゆくなる。


「「あの方」のご命令だ! 正義の使いには死んでもらう!(誤解。)」

「やっぱり「あの方」は、怒っているのね!? ギャアアアア!?」

「あの、ナイちゃんのことは、「あの方」は、なにか言ってましたか?」

「いいや、何も。」

「フ~、良かった! キャハ!」

「裏切り者!?」


所詮、小悪魔と悪夢の友情は、こんなものであった。


「ハハハ! 正義の使いさまは、神の使い! 我々が正義の使いさまには指1本、触れさせはしないぞ!」

「おお!」


4天使がドラゴンと対峙する。


「おお! 神よ! デビちゃんをお守りください! 4人の天使に祝福を!」


小悪魔は、完全に身も心も、正義の使いさまになりきっている。小悪魔の祈りに、神が宿り始めたかもしれない。


「ハハハハハ! ドラゴンよ! おまえに勝ち目はないぞ!」

「なに!?」

「このミカ子に勝つことはできないからだ!」


ミカ子は、ドラちゃんに襲い掛かる。剣を振り回し、攻撃する。カキン! と剣でドラゴンの皮膚を攻撃するが、まったく傷がつかない。


「あれ!? 」

「フン! そんな鈍ら刀でドラゴンの皮膚が切れるもんか!」


ミカ子の攻撃は効かなかった。そこへ、ウリ子が光と火の魔法陣を描く。


「いでよ! 神の光! 神の火! 竜を焼き払え!」


光と火がドラちゃんを襲う。しかし、ドラゴンはビクともしない。


「あれ!? 丸焼きにならない。」

「フン! そんなちゃちな魔法でドラゴンの皮膚が焼けるもんか!」


ウリ子の攻撃は効かなかった。そこへ、ガブ子が光の魔法陣を描く。


「なら、押し潰せばいいんでしょう! 光の重力! ドラゴンを踏み潰せ!」


ドラゴンのドラちゃんに光の重りがのしかかる。ドラちゃんは、フン! っと重りを弾き飛ばす。


「なんですって!?」

「フン! その程度の重りなど、ドラゴンには軽いのだ!」


ドラゴン、全世界で最強の種族である。


「私の回復魔法は、ドラゴンまで届きません・・・。」


ラファ子は、役に立たなかった。


「天使とは、こんなものか? 口ほどにも無い。」


ドラちゃんは、竜の魔法陣を描く。


「大きくなって、一気に勝負を着けてやる! 巨大ドラゴン化!」


小さかったドラちゃんが、巨大なドラゴンに変身した。


「なに!? ドラゴンが巨大化した!?」

「天使の我々が負けると言うのか!?」

「食べられちゃうよ!?」

「短い人生でした。うるうる。」


天使たちは、絶望のどん底にいた。


「静まりなさい!」


その時、正義の使いさまが大きな声を上げた。みんなが視線を向ける。


「正義の使いさま!?」

「神々が我々の危機に、救いの手を差し伸べて下さいました。(ウソ。)」

「おお! 神々が!?」


正義の使いは、俺の方を見つめる。


「神は、あなたに、ドラゴンと戦うための剣を与えてくれました。(ウソ。)」

「俺に?」


天が裂け、光の中から、剣が、ゆっくりと舞い降りてくる。


「おお! 神々の輝きだ!」

「悪魔でもなんでもいい! 助かれば!」

「正義の使いさまは、何でもありだな!?」

「正義ちゃんは、救いの神ね!」


よく見ると、空から降ってくる剣は、2本ある。そして俺は剣をつかむ。


「それは竜退治の剣、ドラゴンスレイヤーと、ドラゴンキラーです。」

「ドラゴンスレイヤーと、ドラゴンキラー・・・。」

「神が、我々に生きろと言っているのです!(ウソ。)」


本当の所は、ドラゴンスレイヤーもドラゴンキラーも元々、俺の持ち物である。しかし、記憶喪失の俺は、それを知るすべはない。


「すごい、これならドラゴンに勝てるかもしれない!?」

「神のおまけ(ウソ。)で、あなたは片手剣を2本装備でき、二刀流で戦うことができます。」

「ありがとう! 神様!」


本当の所は、記憶を失う前の俺は、6本腕のガイコツ剣士と戦うために、両腕を利き腕にする特訓をして、二刀流を会得したのであった。


「さぁ! 地上をドラゴンの魔の手から救うのです!」

「分かりました! 正義の使いさま!」


俺は、光の魔法陣を描く。


「飛べ! 俺の体! ドラゴン目掛けて飛んで行け!」


俺は、巨大化したドラゴンのいる上空に飛んで行き、ドラゴンと対峙する。


「そ、それは!? ドラゴンの苦手な剣!?」

「神々が、俺たちに味方したのだ!(思い込み。)」


ドラゴンは、竜の魔法陣を描く。


「クソ! 人間なんか炎で焼いてやる!」

「うわぁ!?」


口から吐いた炎が俺を目掛けて飛んでくる。


「何も恐れることはありません。あなたは剣で炎だって斬ることができます! 神に祝福されているのです!(ウソ。)」

「炎が斬れる!?」


本当の所は、火を吐く魔人と戦う時に、特訓して、炎斬りの剣技を会得したのである。もちろん、記憶喪失の俺は、自分が剣術がすごいなんて知らない。


「よし! 炎なんか! ぶった斬ってやる!」


俺は、炎に向かって行き、2本の剣を炎に振るった。ズバっと、炎は真っ二つに斬れた。


「やった! 斬れた! 炎が斬れた!」


俺は、ドラゴンの炎を斬り裂いた。


「なに!?」


ドラちゃんは、想定外の出来事に衝撃を驚いた。


「おお! さすが神人間くん!」

「まさに、勇者だわ!?」

「神のお力だ!」

「すごい! 神人間くん!」


4天使も、俺の剣技に驚いた。


「竜退治の剣で細切れにしてくれる!」

「ヒイイイイイ!?」


俺は、ドラゴンの背中に乗り、剣を振り上げる。さすがのドラちゃんもビビる。


「もう、やめて下さい!」


その時、正義の使いのデビちゃんが、俺を止めた。


「ドラちゃんは、ただの使い魔です。ドラちゃんが悪い訳ではありません。」

「正義ちゃん・・・。」

「もう許してあげて下さい。」

「デビちゃんが、そういうなら・・・。」


俺は、デビちゃんの優しさに、振り上げた手を下げた。


「もう、みんなに悪さをしないでね?」

「わ、わかりました。」


俺の問いかけに、ドラゴンは平和に暮らすと約束してくれた。


「デビちゃん、ごめんね。」

「いいよ、ドラちゃん。私たちは友達です。」

「デビちゃん! ウエエエン!」

「ドラちゃん! ウエエエン!」


2人は泣きながら抱きしめ合った。小悪魔とドラゴンの友情である。


「よかったね。デビちゃん。」

「ナイちゃん、どこに行ってたの?」

「夢の世界。」

「自分だけ逃げるなんて、ずるいぞ!」

「キャア!? 許して!?」

「ハハハハハ!」


ふざけるナイトメアを見て、みんなで仲良く笑った。ふとデビちゃんの顔が寂しそうになる。


「どうしたの?」

「どうしてるかな~と思いまして。「あの方」も本当は寂しがり・・・。」


その時だった。正義の使いの体に、ビリビリ電撃が走る。


「ギャア!!!!!!!!!!!!!!!!!」


正義の使いは、真っ黒焦げになってしまった。「あの方」のことをしゃべるのはタブーなのである。


「ゲフ~。」

「エンディングのお約束です。」

「心配しただけなのに・・・。」


これで12話連続の小悪魔の真っ黒焼きの完成である。


つづく。


あらすじ。


「おまえは何を忘れた?」。女性の声で夢から覚めた俺は、名前も、どうやって生きてきたのかも、全ての記憶を失っていた。そんな俺の前に、正義の使いが現れた。小悪魔のデビちゃんに騙されているとも知らずに・・・。「あの方」とは、いったい誰なのだろう!?


「自分の名前も思い出せないのか?」。サタン、俺の名前が決まった。正義の使いさまが、神々と交信をしてつけてくれたらしい。この正義の使いさまは、「あの方」のことを話そうとするとイカズチが降り、書こうとすると炎で燃える、そして人を騙すと傷が回復する。人を騙すことは、まさに! 悪魔のささやきだった!?


「私のことは覚えていないのか?」。学校に、転校生として転入した俺。記憶が無いので、分からないことだらけである。忘れ物が多い俺に、隣の席のカワイイ女の子がペンや消しゴムを貸してくれた。忘れ物も悪くはない!? しかし、この状況に正義の使いさまは、「あの方」がお怒りになると、気が気ではないのだった!?


「私を忘れたら、許さない!」。俺は、学校生活を楽しんでいた。俺の席の隣のカワイイ女の子、天使ラファエルのラファ子ちゃんがいるからだ。俺は、忘れ物を記憶喪失のせいにして、ラファ子ちゃんに近づくという。まさに! 悪魔も驚く、外道ぶりを発揮していた俺の前に、正義の使いさまが立ちはだかる!?


「あなたは、○○なのよ!」。まだ俺の記憶は戻らない。「あの方」についても謎。まさに、ミステリーである。ラファ子の友達のウリ子が現れて、正義の使いさまの正体を悪魔と見破った!? 正義の使いさまと天使ウリエルとの命をかけた戦いが繰り広げられる!?


「あなたがしたことは、思い出さないで。」。俺は、なにをしたというのだろう? 正義の使いさまは、呼びにくさから、正義ちゃんに改名。あくまでも、天使のラファ子とウリコに遊ばれる!? ガブ子とミカ子も名前だけ登場し、俺は、天使に囲まれた!? これを「あの方」が知ったら、怖すぎる!?


「早く、私に会いに来て。」。この物語は、元○○の俺と「あの方」の壮大なストーリーだったはず!? それなのに、小悪魔のデビちゃんを正義の使いさま化して遊ぶ方がおもしろいなんて!? ついに見た目まで正義に目覚めてしまった!?代わりに俺の存在が、ついに忘れ去られた!?


「おまえ、しばくぞ!」。俺が、かわいい天使4人とハレーム状態で「あの方」が怒っている!? ついに現れた最強の天使、ミカ子。ミカ子のウザさは、ウリ子を越え、他の天使も巻き込んでいく!? 俺の名前もサンタに変えられた。そんなミカ子を天使の使いさまは乗りこなしていく!? 恐るべし、正義のチカラ!?


「私より、天使の方がいいのね・・・クスン。」。「あの方」が泣いた。俺は通常生活のはずなのに!? かなり感情の起伏か喜怒哀楽が激しいらしい・・・。俺はついに、モンスターと戦うことになった。「あの方」との契約に基づき、俺は痛恨の一撃を繰り出す!? 俺は人間のはずなのに!?


「もうすぐ、会いに行くね。ウフ。」。ついに「あの方」が始動宣言。記憶を取り戻せない俺は、ウザいミカ子と決闘することに・・・。正義の使いさまは、俺の記憶が無いことをいいことに、神の剣、浮遊魔法を全て、神のおかげ(ウソ。)と言いまくる。少しづつだが、俺の性能が公開されてきた!?


ついに「あの方」が登場。俺のことを水晶玉で監視していた!? そして、小悪魔なのに、正義の使いさまとなって、調子に乗っているデビちゃんに、抹殺命令が下る!? 第1の刺客として、送り込まれたのは、悪夢のナイトメアのナイちゃん。デビちゃんは天使たちを悪魔のささやきでたぶらかし防衛する!?


第2の刺客として、ドラゴンのドラちゃんが、「あの方」から送り込まれた。ドラゴンの皮膚は固く、天使たちの攻撃をことごとく跳ね飛ばす。ピンチに、正義の使いさまが、神々から救いの手を差し伸べてもらう。俺は前回の神の剣、浮遊魔法に続き、ドラゴンスレイヤーとドラゴンキラーの二刀流で立ち向かう!?


終わる。






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