第4話 第1天使

「私を忘れたら、許さない!」


女性の声が聞こえる。


「ん、んん?」


俺は、その声で目を覚ました。夢の中の女神さまは、いつも俺に何かを投げかけてくる。でも記憶喪失なので、なんのことか分からない。


「今日は忘れ物はないでしょうね?」

「ペンも消しゴムも持ってきたよ。」

「それならいいですが。」

「あ、教科書を忘れた!?」

「ズコー!?」


忘れ物が多いのは、記憶喪失のせいだ。俺は、正義の使いのデビちゃんと一緒に、学校に向かっている。


「夢の中の女神さまが、「私を忘れたら、許さない!」って言うんだ。」

「ドキ!? 「あの方」の呪いですね・・・。」


正義の使いは、「あの方」が、「許さない!」と言っていると聞いて、恐怖で全身が震える。


「俺は、女神さまに、なぜ、怒られないといけないんだ?」

「それは「あの方」にとって、あなたが・・・。」


その時だった。正義の使いの体に、ビリビリ電撃が走る。


「ギャア!!!!!!!!!!!!!!!!!」


正義の使いは、真っ黒焦げになってしまった。「あの方」のことをしゃべるのはタブーなのである。


「ゲフ~。」

「すいません。でもお約束なので・・・。」

「こんな設定はイヤだ!」


正義の使いは、本当は、小悪魔のデビちゃんなので、俺を欺いている、天罰が下っているのだ。



「おはよう。」


俺は、学校に着いた。自分の席も覚えた。


「おはよう。サタンくん。」


隣の席のカワイイ女の子がいることも覚えた。


「あ、あの名前、なんだったっけ?」

「ええ~忘れちゃったの。ラファ子だよ。」


癒し系らしい、天使のラファエルのラファ子ちゃんだった。


「ごめん。記憶喪失だから、記憶力が悪くて・・・。」

「いいよ。記憶喪失だもの。キャハ。」

「ラファ子ちゃんは、まるで天使のように優しいね。」

「よく言われます。キャハ。」


楽しく会話をする俺とラファ子ちゃん。


「天使ですから・・・。」


正義の使いは、ラファ子ちゃんの正体を見抜いていた。


「サタンくん、お供の精霊は・・・もしかして、悪魔!?」

「ギク!?」


ラファ子も正義の使いの正体に・・・。


「違うよ! この方は、正義の使いさまです!」

「正義の使いさま!?」

「エッヘン! 我こそは、正義の使いであるぞ!(ウソ。)」


正義の使いは、他人を騙すことにより、「あの方」から受けたダメージを回復する。便利な回復能力を持っている。


「天使でもなく、悪魔でもなく、神々の使徒さまなのだ!」

「神の使徒!? 私、天使だけど知らなかった。」


天使が、正義の使いを知らないのも無理がない。だって正義の使いは、小悪魔のデビちゃんだもの。


「記憶喪失の俺のサタンという名前も、正義の使いさまが神々と交信をして決めてくれたんだ!」

「すごい! 正義の使いさま!」

「その通り!(ウソ。) ワッハハハハ!」


記憶を失っていたり、相手が知らないことに関しては、簡単に洗脳しやすい。悪魔の豆知識である。


「正義の使いさま、仲良くしてくださいね! キャハ。」

「こちらこそよろしくお願いします! アハハ・・・。(いいのかな? 悪魔と天使が仲良くして・・・。「あの方」に知られたら、殺されそうで怖い・・・。)」


成り行きだが、悪魔と天使は友達になった。



授業が始まった。


「しまった!? 教科書を忘れたんだった!?」

「情けないですね。」

「これも記憶喪失が悪いのだ!」


俺と正義の使いさまが、グダグダしていると、


「はい、一緒に見ましょうね。」


ラファ子ちゃんが机を引っ付けて、2人の間に教科書を置いてくれた。


「ありがとう。」


忘れ物は無い方がいいけど、忘れることによって、俺とラファ子ちゃんの距離は、近づいた。


「なんというラブラブな雰囲気・・・、まさか忘れ物をこんな風に悪用するとは、まさに悪魔的行為!?」


もちろん俺は、教科書よりも、ラファ子ちゃんのきれいな横顔に、エヘっと見惚れていた。


「こ、殺される!? デビちゃんは殺されます!? あ、「あの方」が知ったら、嫉妬の炎で燃やされてしまいます!?」


正義の使いは、気が気ではなかった。


「私も勉強します!」


正義の使いは、2人の間に邪魔をするように教科書の上にやって来て、俺の視界を邪魔する。


「正義の使いさまは、勉強熱心なのですね。」

「はい、神々と交信するために勉強は大切です。(ウソ。)」

「正義の使いさま、そこ勉強の邪魔です、どいて下さい。」

「あなたね! あなたには「あの方」が・・・!?」


その時だった。正義の使いの体に、ビリビリ電撃が走る。


「ギャア!!!!!!!!!!!!!!!!!」


正義の使いは、真っ黒焦げになってしまった。「あの方」のことをしゃべるのはタブーなのである。


「ゲフ~。」

「正義の使いさま、何があったんですか!?」

「神々が怒っています・・・(ウソ。)」


こうして俺の楽しい学園生活が始まった。


つづく。


あらすじ。


「おまえは何を忘れた?」。女性の声で夢から覚めた俺は、名前も、どうやって生きてきたのかも、全ての記憶を失っていた。そんな俺の前に、正義の使いが現れた。小悪魔のデビちゃんに騙されているとも知らずに・・・。「あの方」とは、いったい誰なのだろう!?


「自分の名前も思い出せないのか?」。サタン、俺の名前が決まった。正義の使いさまが、神々と交信をしてつけてくれたらしい。この正義の使いさまは、「あの方」のことを話そうとするとイカズチが降り、書こうとすると炎で燃える、そして人を騙すと傷が回復する。人を騙すことは、まさに! 悪魔のささやきだった!?


「私のことは覚えていないのか?」。学校に、転校生として転入した俺。記憶が無いので、分からないことだらけである。忘れ物が多い俺に、隣の席のカワイイ女の子がペンや消しゴムを貸してくれた。忘れ物も悪くはない!? しかし、この状況に正義の使いさまは、「あの方」がお怒りになると、気が気ではないのだった!?


「私を忘れたら、許さない!」。俺は、学校生活を楽しんでいた。俺の席の隣のカワイイ女の子、天使ラファエルのラファ子ちゃんがいるからだ。俺は、忘れ物を記憶喪失のせいにして、ラファ子ちゃんに近づくという。まさに! 悪魔も驚く、外道ぶりを発揮していた俺の前に、正義の使いさまが立ちはだかる!?


おしまい。

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