伊吹香苗物語

@maguro2000

第1話俺の名は

朝。恐らく朝だろう。多分朝だと思われる。今日は何月だったっけ、ああ今日は5月か。そんなことから朝の俺の思考は始まったのだった。5月っていいよな。冬の様に寒くもなく夏の様に暑くもなくただただ快適で過ごしやすい時期だ。クーラーもいらなければダンボーもいらない。きっとこれを読んでるそこのあなたが夏や冬だったのだとしたらさぞ羨ましく感じるのではなかろうか。そうか。ようやく思考が追い付いてきたぞ。ここは俺の家の自分の部屋のベッドだなふむふむ。俺は昨日なんとなくベッドに横になってみて知らず知らずの内に寝てしまっていたという事か。そうだよな昨日は大変だったもんな。こんな俺でも疲れはたまるという事だ。

「おーい、まさしー!朝ごはんできてるわよー!」

目を閉じもう一度眠りの世界に入ろうかと思ったその時、よく聞き慣れた女の人の声がした。いや女の人の声というのはよそよそしすぎる。何故ならその人は俺の母親なのだから。そうして俺は寝るのを諦めベッドから起き上がってみる。ってみるというのはまだこの時点においては起きるというところまで踏ん切りはついていないからに他ならない。できれば寝ていたい。あと4時間ぐらいは寝れるだろう。いっそ今日は仮病でも使って休んでしまおうかという思いが脳内を過ぎる。このまま仮病が成立したら4時間寝てそのあとは昼飯でも食べてあとは少しづつ進めていたTVゲームをしよう。正午から丸々時間をゲームに費やせるなら、かなり物語を進めることができそうだ。俺の中の仮病にしようという考えが70%を超えた所で「おーーい!まさし!いい加減にしないと遅刻するわよ!」という母親の大声がした。そろそろ返事ぐらいはしとかないと怒りそうなものだったので「はいはーい!」っと返事をしておくことにした。いやするだけではダメだろう。さぁ起きよ俺!さぁさぁ。しかし、俺の思いに反して俺の体は動こうとはしなかった。

「・・・・・・・」

動け・・・・・。動け!動け!動いてよ・・・・!!!

しかし体は動かない。本当に動かないのではない。その証拠に布団に接触している足は横にすりすりと動いている。要は動きたくないのだ。しかしそうはいかない。このままでは母親が本当に怒りだしダンダンと足音を立て我部屋に入ってくるだろう。まぁそれも悪くはないだろうが、やっぱり怒られるのは嫌だ。さぁもう潮時だ。俺よ動け!動くのだ!

「・・・・・」

動かなかった。やれやれこの小説が始まってそろそろ結構な分量になりそうだと言うのに語り部としての俺はまだほとんど起きちゃいないとわ。TVゲームで行ったらチュートリアルばっかりでさっさと操作させろやって状態だよな。でもなこういう事は小説では結構よくなあな事なんだぜ。むしろこのぐらいの分量ならまだ甘い方なのである。ほんと小説家って奴はよくもまぁツラツラとあんなにワンシチュエーションに対して語れるというものだ。多分なんだけど小説ってのは物語も大事だが実はもっと大切なのはウンチクとか雑学の部分なんじゃないかと俺は思っている。小説を読んで読者が得する部分ってそういった雑学を知識として得れるのも魅力の一つだと思うからだ。あとは人の思考はどういう風に働くのかも小説を読めばわかってきたりもするよな。そういうことがあるから小説は消えずに今のこの文明が発達した時代においても残っているんじゃないかと思われる。だって普通に考えて本を読むなら漫画の方が楽しいしアニメとかドラマならもっと楽に物語を楽しめるもんな。なんでわざわざ金を払って時間も費やして小説なんて疲れるものを読まなければいけないのか。

ゴンゴン!そこで俺の部屋のドアを強めにノックする音。

「まさし!いいかげんにしなさい!」

やべえこれはぼちぼち怒られるぜ。俺は早急に体を起こしドアを開け「ごめんチャイナ」とおどけて見せて朝ごはんが用意されてるであろうリビングへと向かった。リビングのテレビを見るなりビックリ。時刻は7時55分家を出る時間の五分前だった。もはや食ってる場合ではなかった。俺はそっこうで用意されは食事(食パンと牛乳)を1分で平らげて歯磨き、黒いランドセルを背負って外に出た。おっと言ってなかったよな。俺は小学4年生の井森まさしっていうんだ。朝日が眩しいぜ。地区ごとにグループになって登校する。集団登校を経て俺は学校へと到着する。石ノ森小学校。我校の名前である。俺は下駄箱で上靴に履き替え4年2組の自分の教室にいき。仲の良い友達と流行ってるアニメの話題を済ませて自分の席につき、いよいよ先生がやってきた。先生はいつものように出席をとりはじめ「伊吹」という名前を読んだところで俺は体が熱くなるのを感じた。伊吹香苗(いぶきかなえ)。俺はその娘のいる方を見る。髪は長く肩まであり服は白でピンク色のスカートを履いていた。でも伊吹を見ているのは俺だけではないだろう。クラスの男子は大概、伊吹が好きだ。そう伊吹香苗はクラスのマドンナである。

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