男の子

 授業も終わり、放課後。


 おれはいつものようにカバンを掴み、足早に教室を出る。

 そして、下駄箱で靴に履き替えた時だった。


「あ」


「あ」


 例のかわいい男の子とばったりあった。

 そして、驚きなのがなんと女子用の服を着ていた。やっぱり、女の子なんじゃないか……?


「その制服……」


「あ、これ?僕にはこれの方があってるってクラスのみんなに言われちゃってさ、それで着てるんだよね」


 ふふふと笑いながら、スカートを摘み上げる。

 おい、何をやってるんだ。なんか邪な気持ちになるじゃないか。言っておくが、もっと見たいなんて、これっぽっちも思ってないからな。

 というか、そんな簡単に制服って変えられるものなのか?

 まぁ似合ってるなら仕方ないけどさ。


「それより、今から帰るところ?」


「あ、ああ、そうだけど」


「じゃあよかったら一緒に帰らない?」


 いいながら、少し恥ずかしそうにもじもじと身体をくねらせる。


 おい、なんでいちいち仕草が女の子みたいなんだ。めちゃくちゃかわいいじゃないか。

 それに一緒に帰るなんて、デートみたいじゃないか。

 いやいや、待て。彼は女の子じゃなくて、男なんだ。デートって言い方はおかしいだろ。


「あ、ああ、じゃあ帰るか……」


「あ、うん。良かったー」


 ほっとした様子で彼(彼女?)は靴に履き替えた。

 その途中でスカートの中が見えそうになり、おれは慌てて顔を背けた。


 いやいや、別に顔を背ける必要はないじゃないか。なのに、どうしてこんな気持ちになるんだ……


 おれはどくどくと激しく鼓動を刻む心臓を抱えながら、揃って学校を出た。


「そういえば、名前聞いてなかったな」


「あ、そうだね。僕は新堂 香澄って名前だよ」


「香澄か……おれは、来ヶ谷 京介だ」


「京介君だね。よろしくね」


「あ、ああ、こちらこそ……」


 ニコッと微笑む新堂を見て、おれはこんな子が本当に男の子なのかと思ってしまうのだった。

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