先生
小学校3年の頃、遥香は今と違って、すごく大人しい引っ込み思案な女の子だった。
ある時、クラスの一人の男の子の持ち物が無くなった。
それは流行りの筆箱で色々と機能がついていたものだった。
それがなくなったことにその子は大騒ぎし、誰かが盗ったんだと言い出した。
そして、遥香が、その子の筆箱を触っているのを見たと言った子が現れたため、遥香がその犯人なんだと言われ出した。
もちろん、おれはそんなわけないと言い、遥香を必死に庇ったが、クラス全体が遥香が犯人なんだと決めつけ出した。
自分が勝手に犯人にされたため、遥香は泣き出してしまった。
その時だった。今でも忘れない。おれ達の担任は守屋さんという、男の先生だった。もうかなり長いこと先生をやっているようで、おじさんと言ってもいいくらいの見た目だった。
守屋先生は遥香にゆっくりと近づいてくると、頭をポンと撫で、大丈夫だよ、大丈夫だよと優しく宥めた。
そして、犯人は遥香ではないと言い、クラス全体でその筆箱を探そうと言ってくれた。
結局、探しても見つからず、その日はそのまま帰ることになったのだが、翌日、筆箱がなくなったと言い出した男の子の母親が学校に現れた。
運の悪いことにPTAの会長であり、自分の子がいじめられていると思い込むなど中々のヒステリックの持ち主だったらしい。
そんな母親が現れ、守屋先生となんと遥香まで呼び出し、問い詰めたそうだ。
なんで、犯人の言うことを信じるのか。
うちの子は大事じゃないのか。など散々と言いまくったらしい。
守屋先生はそれを聞いた上で、なんと言われようと私は生徒を信じます!ときっぱりと言ってくれたそうだ。
その後、無くしたと思っていた筆箱は別の教室に置きっぱなしになっていたそうで、無事に見つかった。
守屋先生はその後、病気にかかったとかで翌年、学校を辞めてしまったが、遥香は今でも先生のことを尊敬していて、そんな先生になりたいと心に誓ったそうだ。
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