大晦日

 12/31。大晦日。今年も今日で終わってしまう。全然実感ないけど。


「はっはっは!いやー、楽しいなー!!」


 おれはリビングにあるソファに座りながら、昌樹さんが昼間っからやけにご機嫌な様子で缶ビールを大量に開けて、ガブガブと湯水のごとく飲んでいる様子をぼーっと眺めている。

 なのに、顔は全く赤くならず、酔っぱらっている感じは全くない。

 っていうかまだ昼間なのに飲みすぎだろ……


「ちょっとお父さん……休みだからってあんまり飲みすぎないでよね」


 おれの隣に座っている遥香がそう釘を指す。


「おいおい。せっかくの休みだからこそ、こうやって楽しむんだろうが。それに京介君……いや、婿殿がこうして我が家にいる……」


「「誰が婿殿だ!!」」


 昌樹さんの発言に2人揃って盛大に突っ込む。


「はっはっは!息ピッタリだな!」


 そんなおれ達を見て昌樹さんは更に豪快に笑いながら、ビールを飲んでいた。


「はぁ……全くお父さんったら、冗談きついわ」


「……」


「ねぇ、あんたもそう思うでしょ?」


「……」


「ねぇ、きいてんの?」


「いや、その前に……」


「何よ」


「なんでおれ達、二人で出かけてんの?」


 そう。おれと遥香は何故か二人きりでリア充どもでごった返しているであろう繁華街にやってきていた。

 大晦日の繁華街、絶対に来ないと決めていたはずなのに何故、おれはここにいるのだろうか。全くもってわけがわからない。

 それに、先ほどまでリビングにいたはずだが。

 いつの間にか、ワープでもしてしまったのか?

 もし、そうならセーブポイントはどこだ?


「そ、それはあんたがどうせ一人寂しく、やることもなくて可哀想だなと思ったから、こうやって連れてきてあげたのよ……」


 顔を赤らめ、そっぽを向きながら遥香はそういった。


「左様ですか……」


 別におれは街に出掛けたいなんて言ってないんだが。

 部屋でゲームでもしてればよかったとさえ、思っている。家の中にいれば暖かいし、リア充に会うこともない。何より、快適な時間を過ごせる。

 とはいえ、ここに来たのはおれの意志だからな。

 なんで来てしまったんだろうか。

 自分で自分がわからない。


「それでどこに行くのか決めてるのか?」


「いや、そのそれがね……」


 オレの言葉に慌てた様子の遥香。


「よし、ノープランってことね」


 雪もちらほら降っている中を目的もなく、歩き回るのはごめんだぞ、まったく。

 っていうか、毎回ノープランだな。こいつ。

 せめて一回くらい計画立ててから誘ってくれよ。


「とりあえずどっかに入ろうぜ。そこでどうするか考えればいいし」


「それもそうね」


 というわけでおれ達は都合よく近くにあった世界一有名なファーストフード店に入ることにした。

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