寝間着はかわいい

「はぁ……」


 ベッドの上に横になり、ため息を一つ吐く。

 ちなみにこのベッドはおれの私物だ。

 部屋自体は使っていなかった部屋を使ってくれていいからと貸してくれた。

 業者に運んでもらった荷物もそんなに多くなかったので、1時間程度で荷ほどきは終わった。


 そういや、運ぶ時に気づいたが、上手い具合に普段、使ってたソファとかテレビとか家電や家具が綺麗に無くなってたな。どっかに売られたか……

 まぁ、おれと親父が生活してたマンション自体が引き払われたみたいだから、当然といえば当然か。


 そんなことを思いながら、ベッドの上で携帯のディスプレイを点灯させると、今は夜の11時25分だった。

 そろそろ寝ないと明日の朝、起きれなくなるな。

 その前に風呂借りるか……

 荷ほどきで汗もかいたし、このまま寝るのはどうにも気持ち悪い。


 ベッドから降り、寝間着を持ってから廊下に出て、階段を下り、リビングに顔を出してみるとそこでは昌樹さんと京香さんがテーブルでちょうど晩酌をしていた。


「お、荷ほどきは終わったのかい?」


 おれに気づいた昌樹さんが声をかけてくる。


「はい。あの、お風呂借りていいですか?汗かいちゃって……」


「借りるも何もここは君の家なんだから、遠慮することはないよ」


「はは……ありがとうございます」


 昌樹さんにそう言われ、風呂場へと向かう。

 それにしても、ここの家族もよくおれを迎え入れたな。

 普通なら断るだろうに。いきなり息子を預かってくれなんて。まぁそれだけ、親父と昌樹さんの仲が良いってことなのかもしれないけど。


 そんなことを考えながら、シャワーをささっと浴びると素早く風呂場から出た。

 ちなみに小さい頃、よく遊びに来てたので家の勝手はある程度わかっている。


「お……」


 タオルで頭をごしごし拭きながら、風呂場を出ると、遥香とばったり廊下で出くわす。

 手には寝間着を抱え込んでいるのが見えた。


「ちょっと、見ないでよ」


 おれの視線に気づき、抱えていた寝間着を身体で隠すようにしながら、腹立たし気にこちらをキッと睨む。


「あ、ごめん……」


 その迫力に気圧され、反射的に謝る。


「……」


 おれの言葉に納得したのかわからないが、遥香はそのまま、無言で風呂場に入っていった。

 その姿を見送り、ばたんとドアが閉まると同時にため息を吐く。


 はぁ、やりづらい……

 こんな中でこれから生活していかなきゃならないかと思うと、先が思いやられるな……

 おれは今日何度目かになるため息を吐きながら、階段を上っていった。

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