第9話 友達の行方
「フレア、おーい。どこだよ!」
「フレアちゃん!」
コロセアムの町の中を走り、フレアを探し回る。
けれど中々、見つけられない。
「足早いな、アイツ」
「フレアちゃんどこに行っちゃったんだろうね」
周った店や歩いた場所を手当たり次第に探していくが、それらしき人の影はまるで見つからない。
探し回っている内に体力が尽きて、いったん息を整えていると、ナナキに肩を叩かれた。モカもだ。
「……。お二人とも、少し静かに、声が聞こます」
「声、フレアか?」
「いえ、これは……」
その声の主は近づいてきているのか段々とルオン達の耳にも入るようになったきた。
「ターゲットを捕獲しました。これから本部の方へと移送します」
ナナキに引っ張られるようにしてちょうどよく傍にあった建物の影に隠れ、近づいてくる一団を観察する。
寄せ集めの集団でない事は一目で分かった、統率が取れていたからだ。
彼らは一人の……リーダーらしき男に確認をとったり、情報を伝えたりして指示をあおいでいる所だった。
その一団の存在は、一筋縄ではいかないような荒れくれものばかりのコロセアムの町ではかなり浮いている。ようするに目立っていた。
しかし、本人達はそんな事を気にしていないのか、周囲にまったく関心を示さず話を続けている。
余裕の無さそうな様子だった。
一体何をしているのか、と観察を続けていると、赤い髪色が目に入った。
「あっ、あれは……!」
「フレアちゃん!」
「駄目です、お二人共」
リーダーらしき男が、捕獲したとか言っている女性の腕を掴んで運んでいるのが見えて思わず動こうとしたが、当然ナナキに制止された。
赤い髪の露出の多い踊り子の服を着た女性、あれは間違いなくつい先程までルオン達と行動を共にしていたフレアだった。
「フレ……」
叫びそうになったルオンだがその口をナナキによって塞がれる。
「むぐぐ……」
ナナキはルオンの耳に顔をよせて囁く。
「こらえてください、ルオン様」
……ち、近い。あと耳がくすぐったい。
……いや、そんな事考えている場合じゃない。
「もご、もごごご……」
「駄目です。大人しくしてください」
「もごもご」
……フレアを放っておけって言うのか。
「おそらくあいつらは
「もご……」
……でも。それじゃあこのまま見てるだけのつもりかよ。
フレアはぐったりした様子で使徒達にどこかへと運ばれていってしまう。
「今俺達が出ていっても、彼女を助けるこ事は出来ません」
駄目押しにナナキに言われた事に、抵抗を諦めて力をぬく。
ようやく、口元から手が離れて息苦しさから解放された。
「だけど、諦めろって言うのかよ。ここで見送ったら、フレアの行方が……」
連中に聞こえないように声のボリュームを落として反論する。
そうだ、フレアがどこに連れていかれるか分からないと、助ける事ができないのだ。
焦燥にかられていると、そこに声をかける者がいた。
「焦っていても仕方ないぜ」
「お前は……」
「あ、あの時のルオンちゃんをイジメてた人だ」
そこにいたのは、元
ナナキがその姿を見て、剣呑な声音で相手へ問いかける。
「フラト、何の用だ」
「そう身構えんなって、ナナキ。別に今日は戦いにきたわけじゃないんだからな」
身構えるルオンと巫女達二人の前に立つナナキ。
モカは後ろで、いーっとする役目だ。
そんな万全(?)の態勢で警戒されているフラトはというと、相変わらず軽そうな態度でいて、何が本心か掴みどころのない様子だった。
「ったく、親切心を働かせにきたってのに、俺も警戒されたもんだな。あーあ、良いのかよ。せっかくお得な情報をもってきてやったのになーあ」
やれやれと肩をすくめられるが、それやる立場逆じゃないのか。
……ナナキも
……そりゃあ、こいつのおかげでピンチを切り抜けられたこともあったけど、だけどナナキをクビにしようとしたり、あたし達の情報を使徒に売ったりしてたし……。
「おたくら、フレアって言う女の子探してんだろ? 良かったら力になるぜ?」
「な、何でお前がそんな事知ってるんだよ。お前ひょとして今まで」
「待って、ルオンちゃんそれはないよ。モカの耳にも、ナナキの感覚にもひっかっからなかったんだもん」
そうだ、ルオン達の周辺にいたというのなら二人が気が付かないわけがない。
ということは別の所から得た情報という事だろう。
「ま、旅をしている連中とかこっちにも色々筋があんのさ」
「ひょっとしてフラトさんはフレアちゃんの行き先に心当たりがあるの?」
「ああ、そうだ」
そう言ってフラトは、にやにやと表情に笑みを刻んでいく。
……こいつ、あたし達が食いつかないわけがないって知ってって言ってるな。やっぱり性格悪い、ヤな奴だなお前。
「どうする?」とこちらの反応を楽しんでいる様子のフラトだが、そんなの最初から決まっている。
「教えてくれ、頼む」
ルオン達はそう言うしかないのだから。
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