第16話 もう一人の異母弟登場

「おはようございます、ミレーヌ様」

「おはようシェリル。エリーシア、仕事はどうですか?」

「私までお招きに与りまして、ありがとうございます。色々覚える事があって大変ですが、やりがいのある職場だと思っています」

「それは良かったわ」

 ミレーヌに目線で促されたエリーシアは、抱えていたシェリルをテーブルに下ろして自身は椅子に座った。それを確認したミレーヌが、徐に自分の隣に座っている女性を紹介する。


「二人に紹介します。こちらが陛下の第二側妃である、レイナ・マルテ・リーヴァンです」

「初めまして、レイナ様」

「宜しくお願いします」

 神妙に二人は頭を下げたが、対する女性は朗らかに笑いかけてきた。


「王妃様やレオンから話は聞いていましたが、噂通り可愛らしい方ですね。お会いできて光栄です、シェリル姫」

「ありがとうございます」

「エリーシア殿は、女性ながら他を圧倒する程の能力保持者と伺いました。素晴らしいですわ」

「いえ、滅相もございません」

(王妃様とは、また系統の違った美人……。生気溢れると言うか、赤に近い濃い金髪だからかしら? レオンの顔立ちは、間違いなくレイナ様系統よね)

 シェリルがそんな事を考えながらレイナの顔をまじまじと眺めていると、侍女に先導された十歳前後の少年がレイナの所にやって来た。


「初めまして! カイル・シーガス・エルマインです! あなたがシェリル姉上ですね?  宜しくお願いします!」

 子供らしく元気一杯な自己紹介をして頭を下げたカイルを、シェリルは微笑ましく思いながら頭を下げた。


「はい、そうです。シェリル・グラード・エルマインです。初めまして、カイル殿下。猫の姿で失礼します」

「うわぁ、本当に猫だ。真っ黒で艶々で、綺麗だなぁ」

「えっと……」

 自己紹介が終わったと思ったら、期待に満ち溢れた目でにじり寄ってきたカイルに嫌な予感を覚えたシェリルは、多少後ずさりした。すると予想通り、カイルが喜色満面で尋ねてくる。


「姉上、抱かせて貰って良いですか!?」

「ええと……、エリー?」

「良いんじゃない? 子供だし、潰されたりはしないわよ」

 唐突な申し出をされたシェリルは思わずエリーシアを見上げたが、苦笑いで返され、色々諦めて了承した。


「どうぞ、お好きなだけ」

「それから、身体を撫でても良いですか!?」

「構いません」

「やった――っ!!」

 歓喜するカイルをレイナが「いい加減になさい」と窘め、シェリルに向かって頭を下げたところで、それまでとは打って変わった冷え切った声が室内に響いた。

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