第273話「タイトルコール」


「まず、誤解の無いように言わせて頂けるなら、私以外にあなた達の事を詳しく知るのは組織の幹部と呼べるような者のみに限定されている。此処に私はあなた達を脅したり、また力を求めたり、協力を申し出たりという事の為に来たのではない。それを心に留め置いてもらいたい」


 ブラウンと名乗った年齢不詳の二枚目金髪軍人は未来人等という相手を前にしているとは思えない程に落ち着いた様子でそう話し始めた。


「真に恐縮だが、あなた達の身分を照会させて貰った。が、二人しか分からなかった。魔術の名家、亜東家の長女。亜東千音さん。そして、の息子……カシゲ・エニシ君」


 千音は身バレが『キタァアアアアアアア!!!?!』と泡を喰った……様子ではなく。


 静かにその話を聞いていた。


 どうやら、こういう土壇場での肝は老人が認めるくらいには座っているらしい。


「オレが未来人だとして、今のオレがこの世界にいるという矛盾をお前らの組織はどう解析する? ブラウンさん」


「私が所属する組織は大昔からこの地球上の出来事を記録しているが、オブジェクトについても色々と研究させて貰っている。私が君達の解析をして頂いたに拠れば、君は世界の構造に付いて重要な示唆をその身で行ってくれる存在であり、従来のタイムパラドックスのような概念では括られない時間渡航技術を用いている、と言われた」


「正しい解析だ。その博士の方がオレらより百倍はこっちが使ってる技術に詳しそうだな」


「いやいや、君の母上の方が君の使う技術に詳しいはずだよ」


「どうやらウチの母さんは買い被られる性質らしい」


「君の母上と比べられたら、大抵の研究者や博士と呼ばれる人達は大いに面子を潰されるだろう。私自身もそう思う……あの人の息子ならば、さもありなん、と日本語なら言うべきかな」


「ずっと前から思ってたんだが、オレの母親知らないところで褒められまくりなんだな。つーか、本人は至って天然だから、そんな崇められそうな事言われても何この人達言ってるのかしら? くらいにしか思って無さそうなのがまた……」


 ブラウンが苦笑した。


「違いない。だが、事実だよ。彼女は正しく人類の技術進歩を万年進められる逸材だ。嘗てインドで0が発明された時以来の発見と研究を行ったのだから」


「アンタと母さんはどんな関係なんだ?」


「パトロンと言えば、聞こえはいいが、直接の面識はない。ただ、二度か三度、君の母上の研究室を見させて貰って通信機越しに会話を聞いた事があるというだけだ。複数の組織を経由して資金提供していたものでね」


「で? ウチの母親が造ったモノがやがてはタイムマシン染みたものになると予想はしてた、と」


「その通りだよ。だから、君がカシゲ・エニシである事そのものが時間と空間を人類が制御した証拠とも言える」


「なるほどな。それでブラウンさん。あんたはオレと接触して、どんな未来を?」


 僅かにブラウンの目が見開かれる。


「……失礼した。そうか……を基準にしていたようだ」


「これでも人生経験だけは無駄なくらい豊富になった後だからな」


「そうだな。君が私の考えている事を何となく理解しているように、私も君の事を何となく理解出来ていると思う。理由は単純だ。君はからな」


 それに思わず他の連中がこちらを見る。


 今の発言だけでブラウンという相手が少なからず切れ者なのは理解出来た。


「オレの中身を少しでも言い当てたアンタは大した玉だ。実際、恐らくアンタ以外にそれをこの地球上で知ってる、もしくは予測出来た人間なんぞ極々少数だろう。もしかしたら、アンタ以外にはいないかもしれない。カマを掛けたって風でも無いしな。その結論に至った理由を聞いてもいいか?」


「凡そ、君の情報が出揃った時に思ったのだよ。この人物は過去を変えたいような生き方はしていない、とね」


 拍手しておく。


「じゃあ、オレが何でこの時代に干渉してると思う? 過去を変えたいというのが本命じゃないとしたら、オレは何の為に此処でこんな事をしてるんだ?」


「君のお仲間の前で話してもよい話題なのだろうか?」

「ああ、そのウチに言おうと思ってたしな」


「では、結論を先に。君は未来を変えたいのだろう? それも君が到達した時代を」


「それは過去を変えるのと同じ結論じゃないのか?」


「いいや、違う。君は君の未来をこのような場所で情報を収集しつつ、人類を救済している。違うかね?」


「………」


は違うのだ。そして、今、とは違う」


 溜息を吐く。


「大当たりだよ。ブラウン大先生。それに言及出来る奴は未来じゃ唯一神を名乗ってる奴やそいつと同格辺りの奴だけで、此処にそんなのいないと思ってたんだがな……」


「どういう事か説明を求めてもいいかね? 若者よ」


 老人がこちらを真剣な瞳で見ていた。


「盛大なネタ晴らしだな。だが、こんなの言っても仕方ないと思って黙ってたんだが……アンタはそれでいいのか?」


「別に構いはしないよ。我々とて、自分の事を本当に知ってるのかと言われて、他人に指摘されるまで気付かないくらいには微睡みの中で生きて来た、そういう事なのだろう」


「エニシさん?」


 千音がこちらを見やる。

 静かに息を整えた。


「騙し絵なんだよ。この世界……恐らくはオレにとって」


「騙し、絵?」


 千音に瞳を向ける。


「宇宙の構造に付いて、幾つかの輪や紐で形作れるってな話がある。そして、未来でその紐を完全に解析してのけた天才がいた。オレが使ったタイムマシンはオブジェクトの完全な模造品だそうだ。つまり、オカルトを科学で完全にコピーしたもの。で、その天才はな……紐の先を覗いたらしい。その結果としてオレはこんなところにいる……この事実を教えてくれた奴曰く。紐の先はアカシックレコードとか呼ばれるようなものなんだと。ついでにそれは過去とも呼べるそうだ」


「い、言っている意味が、その……」


「要約すると此処は…………なんだよ。オレにとって」


「紐の先?」

「何て言えばいいかな? 簡単な例にすると……こうか?」


 テーブルの上に魔術コードを起動。

 一瞬でホログラムがこちらの意図した物体を生み出した。


 それは無数の細い網目状の紐で幾つも薄いアクリルのような板を繋いだ代物だ。


「これは?」


「オレには学が無いから、オレに分かる範囲でのこの宇宙の概略だ」


「う、宇宙の概略?」


 千音が今にも目を渦巻きにしそうな様子で固まる。


「そうだな。この板が宇宙だ。だが、真空があって、ブラックホールや恒星が広がってる宇宙の図じゃない。ちょっと神様の視点で見た場合の宇宙だ」


「神様の視点……」


「一つ一つの宇宙は紐、つまり物質で繋がってる。見掛け上の宇宙とは違って、この視点での宇宙ってのは一つの場面を顕してる。そして、その場面を生物は認知機能の許す範囲で連続した代物である、という錯誤を夢見てる。これが現実ってやつだ」


「もう、半分くらい何を言われてるのか分かりません……」


「普通、この宇宙の場面は一方通行なんだよ。これが時間て呼ばれてる。連続した場面の一つながりだ。アニメを動かすのと同じ。場面を丁寧に描き込んでパラパラ捲ってるようなもんだ」


「そ、それなら何とか……」


「で、この場面を繋いでる紐を解析した馬鹿がいた。そして、気付くわけだ。この紐、続いてるところまで辿れたら、宇宙の大規模構造が分かるんじゃね?ってな」


「それって、過去の場面を見るって事ですか?」


「いいや、それより性質が悪い。宇宙の始まりと終わりまで物質が存在している限り見える、らしい」


「そ、それって……」


「オカルトでもあるだろ? 未来や過去を観たりする力とか。無いか?」


「一応、聞いた事はあります」


「で、生憎と時間を移動するオブジェクトと言われてるものが存在した。そういうオカルトがあったわけだ。こいつをその天才はどうやら完全に理解し、模倣した。で、完全にの点が問題になった」


「完全にが問題?」


「もしソレが粗悪品みたいな代物なら、オレは此処に来るどころか。失敗して元の世界で元気にやってただろう。だが、天才は天才の仕事をした。そういう事だ」


「……エニシさんにとっては失敗してくれた方が良かったと」


「ああ、今こうして面倒な事になってるからな。で、そのオブジェクトはオレの推測だと一方向にしか辿れない紐を横方向や斜め前みたいな感じで進む事が出来る代物だった」


「……それって未来に向かってるんですよね?」


「ああ、そうだ。実体としては微妙に傾斜した横のうちゅうに繋がってる」


 新しい板が出来て、其処に前の板の紐が繋がる。


 千音が板と紐の集まりを眺めてコレが宇宙か~と何だか複雑そうな顔となった。


「だが、それは並行世界みたいもんじゃないんだ。可能性の分岐した姿ってのでもない。本来、この網目状の宇宙の場面は三次元的に恐らく宇宙の果てまで広がってる。あくまで物質だからな。有限ではあるが、人類の知覚的には果てが無い感じに見えるのかな? それで恐らくだが……この宇宙の果てまで行った奴がいる。この視点を持ったままな」


「………」


 ブラウンは興味深げにこちらを見ていた。


 だが、その瞳にはまるで全てを見通しているかのように動きが無い。


「宇宙がどんな形だろうと果てがあるなら、果てのはなぞれると思わないか? そう、外側があるとすれば、それを辿る事は可能なはずだ。そして、その先からまた宇宙内部の場面にシーンを移す。いや、入る。それも宇宙内部の絶対座標に対して侵入出来る機能を有してる乗り物があったとしたら、それはタイムマシンと呼べないか? 紐は一方向にしか流れないから、後ろの方に回って、果てから一気に途中の宇宙へ、微妙に斜めった蚊の針みたいにシーンインするわけだ」


「それって、結局は過去、ではないのですか?」

「此処で重大な事実が発覚する」

「重大な事実?」


「宇宙=物質で物質=紐で紐=宇宙なわけだが、宇宙はこの視点で見た場合、流動状態の泥みたいなもんだ」


「泥……」


「一方向へ流れる泥の河。同じ絶対座標に入ったはいいが、それは一回目の歴史と同じじゃない。何せ、一度世界の外に出てるんだ。紐を辿った先にあるのは同じ場所かもしれないが、同じ中身じゃないんだよ」


「………それって」


「あくまで前にしか進めない。螺旋階段を上がるようにな。一回りして同じ場所に戻るような構造だとしても、同じ位置にある風景を同じ人物が認識していたとしても、本当に同じなのか? だって、空気は流動してるはずだろ? そこにあるのは自分が通った後に出来たへの相乗りなんだ」


「同じように見えてもそうじゃない、という事ですか?」


「ああ。絶対座標って言葉を使ったが、これは時間的な流れ、歴史が殆ど同じようなって意味だと思ってくれ。でも、時間の流れ的には同じような場所に出られても同じではない。オブジェクト事態はその内部に乗った人物と紐付けられてるおかげか。そのオブジェクトによって伸ばされた紐の始点には戻れるようだがな」


「ええと、過去に戻ったと思ってる場所は同じような並行世界みたいなものであって同じ歴史じゃない。それで自分が元いた場所には自分という物質があるから、そのオブジェクトとかいうタイムマシンに乗れば戻れる。で、合ってます?」


「大体それで合ってる」

「それって……でも、つまり……」


「オレにとっての過去はもう戻れない時代にしか過ぎない。オレが戻れるのはオレがそのタイムマシンに乗った時間だけって事だ」


「……過去は変えられない……のですね」

「ああ」

「でも、それならどうして……エニシさんはこんな事を?」


 千音の言い分は最もだ。

 過去は変わらない。

 いや、もう二度と戻らない。


 なら、どうしてこの世界でこんな事をするのか、と誰だって気になるだろう。


 此処でブラウンが僅かに身をテーブルに乗り出す。


「だから、私は君に会いに来た。この事実を知りながら、それでも君は過去を……いや、同じような単なるを、救おうという。それは一体どのような心情からなのか。私はそれが知りたかった……である君の意見をね」


「神?」


 千音が再び首を傾げる。


 そこでブラウンが静かにこちらの底を見透かすような瞳になる。


「先程、騙し絵と語った時にようやく確信が持てた……だから、敢て訊ねる無礼を許して欲しい。君はを望んでいたのか? カシゲ・エニシ君」


「ど、どういう事なのですか!? 神って、確かにエニシさんは神様の手先的な詐欺を世界に対して働いていましたけど!?」


 千音の忌憚ない本音にブラウンが苦笑した。


「いや、亜東千音さん。あなたの言うところの詐欺師の口上は……本当のところ


「え?」

「先程、エニシ君は一つ重要な事を敢て言わなかった」


 こちらを千音が見やる。


「……エニシさん?」

「はぁ、アンタ性格悪いって言われるだろ?」

「残念ながら」


 ブラウンが悪びれる様子もなく肩を竦める。


「……さっき、世界は泥って話をしたが、実際には混沌と言い代えていい」


「混沌?」


「日本神話。オレには今なら全部内容がSFに見える。特に矛で泥を掻き回して初めから日本を造ったところとか……」


「その、どういう?」


 千音が


「簡単に言うと認識する者がいない世界ってのは存在しないも同然なんだ」


「認識……」


「ああ、認識だ。そして、過去も未来も世界の外からじゃ違いなんて分かりゃしない要素だ。そういう状態を混沌とか无とか、そういう風に呼べばいい。で、だ……そうだな」


 適当に今まで在ったホログラムを消して、紅茶のカップを前に映し出す。


「この世界がティーカップだとするならば、構成する要素、中身はお茶にしよう。紅茶とミルクが入ったカップを見て、オレはミルクティーだと思う。だが、この世界カップの中にいる連中にとってはミルクと紅茶は別れてて、自分はミルクと紅茶のどちらかだと分かる。自分が西暦何年のどういう人間か。あるいは紀元前のどのような地位にある誰かか。そういう自己言及が可能って事だ」


 横に置かれた小さな粉状ミルクの入った紙製スティックを破って、琥珀色の中身にザラザラ投入して、スプーンで掻き回す。


「さて、じゃあ、オレがミルクティーの中に入ったとしよう。そうするとな。不思議なことにミルクと紅茶が半々の世界にオレが来たせいで、この世界をミルクティーとしか認識出来てなかったせいで、此処が


「は?!」


「オレの認識が過去と未来を選別し、過去ならば、……ええと、オレが来た場所は絶対座標ではあっても、特定の時間ではないって事になるかな? だから、物質的な存在はオレを指標にしてさっきの板の中身が再編される」


「ッ?!!?」


「世界の外からの視点が世界を確定して、変化させる。これは量子的な状態に似てるな。オレの母親曰く。中身を覗いたら、見たいものじゃなくなる箱。それがこの世界だ。悪趣味な猫の入った箱みたいなもんだ。本当はその逆、箱に入った猫こそが世界を確立するべきだが、オレが知る宇宙だと神の視点を持った存在の認識が優先される事になる」


「……エニシさんの認識が、世界を変えた? いえ、創ったと?」


「……認識の主体となる知的生物に沿って世界は再編され、混沌は秩序として再生される。そして、その初めて世界を認識した者は……まぁ、今まできっと色んな名前で呼ばれて来たんだろう。魔術もオカルトも超科学も全部全部、いつかのどこかにいる……の過去に似てるはずだ。


「―――そんな!?」


 これだけはあまり説明したくなかったのだが、ブラウンはようやく自分の訊きたい事が訊けた様子笑みを深くした。


 そうして、やってきた料理を前に良い匂いだ、なんてお盆片手の女性店員に微笑んでいる。


「神は泥から人間を造ったって話だが……人間て本当は何だったんだろうな……知りたくも無い事実って奴だ」


 千音は呆然とした様子でこちらを見ていた。


「じゃ、じゃあ、エニシさんが私達の神様って事ですか?」

「さぁな。全部が全部、オレの戯言かもしれないぞ?」


 そう言うとジト目が返って来る。


「……じゃ、じゃあ、戯言にしておいて下さい!! そんな事言われたって、エニシさんが神様とか。あ、いえ、神様だったとしても到底受け入られない人達が一杯いますから。特に私とか私とか私とか!!」


「あ、はい。自覚はあるから、そのディスりは甘んじて受けるけどさ……」


「ふぅむ。まさか、若者が神様とは……いやはや、吾輩も祖国で自分を『神である!!!』くらい設定を盛っておけば良かっただろうか?」


「いや、絶対、途中で破綻するだろソレ」


「ふん。随分と人を働かせてくれる神なようだ。軍ならば、もうとっくに憲兵へ突き出す頃合いだな」


「御尤も……」


 何やら今までの話を聞いていたのかも怪しい老人と巨漢の素っ気無いツッコミに……本当に救われた心地になる。


「ははは……そうか。カシゲ・エニシ君……君は恵まれた人で……何よりも人をようだ」


「何だ。その結論?」


 一口も料理に手を付けず。


 立ち上がったブラウンが全員を見渡して、瞳を僅かに閉じた。


「私はこの世界に神がいるなら、なんて酷い神だと愚痴くらい垂れてやるつもりだったが……君を見ていて思ったよ。君の経験した世界は……残酷なのだろうな。たぶん」


「分かったような事言われてもリアクションしようがないな。だって、そうだろ? オレが知らない事だってこの世界には五万とあるはずだ。指標となったオレによって決められた事がどの程度なのかなんて、あんたらもオレ自身も知り様がないだろ? 何せ世界の何処にも全知全能なんてもんは無いんだ」


「……さて、どうかな。だが、この世界が幾分か救われている事を私は知った。だから、今日はもうこの辺でお暇しよう」


 相手が誘発させたい未来とは何だったのか。

 結局は分からずじまいとなるらしい。


「最後に一つ聞かせてくれ。アンタの所属組織は? それとはこの件に介入する気があるのか?」


 こちらの問いに外へ出ようとしていた男がピクリと反応し、背中だけを向けて立ち止まった。


「そうか。未来の我々とも面識があるのか。それに我々の組織構造にも詳しいようだ」


「生憎とお前ら滅びるぞ。オレのいた時代だとな」

「そうか。それもまた一つの結末だろう」

「驚かないんだな」


「……の名は……これでも欧州からユーラシアに掛けて戦争抑止の活動をしている」


「―――そうか」


 思わず出掛かったリアクションを全部呑み込む。


「我々の一部は動くだろうが全体的に号令は出ていない。出す組織も無い。理由は純粋にこの私がだ」


「……もう行け。アンタが陰謀屋らしく、誰かの陰謀で死ぬ前にな」


「ああ、そうするとも。答えは得た。そして、世界は続く。良き旅を……よ」


 恐らく。


 この一件で二度と会う事は無いだろう相手。

 その背中が店先の道に消えていく。


 そうして、ようやく大皿小皿合わせて全ての料理がテーブルに並べば、食事時が始まる。


 今さっきまでの話なんて無かったかのように。

 いや、全てを知ってもただ己の内に呑み込んで。

 恒例となった挨拶が全員で唱えられた。


「「頂きます」」

「いただきます」

「イタダキマス」


 こうして今日の夕食は開始される。


 料理は……ちょっと口に合わなかったのだが……出されたバナナのデザートは美味しい夜に違いなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る