夏の終わりと秋の始まりは心が乱れる

夏の終わりはいつもどこか寂しい気持ちになる。

キラキラとした季節が終わりを告げて、せつない風が吹く秋がやってくる。


心のどこかで このせつない風を待ちわびている。

でもなぜかいつも心が乱れるのはこの季節。


澄んだ空気と青空が、いつも以上にまぶしく感じる。

それは太陽のせいだけではない。


一年かけて待ちわびたこの季節は、いつもあっという間に過ぎていく。

じっくりと味わう間もなく過ぎていく。


暑さの記憶が薄れる前に、いつの間にか肌寒さを感じるようになる。


金木犀の香りだけが この季節を感じる術なのだ。


そうして待ちわびた季節は 音もなく去っていく。


人は手に入らないものを欲しがるもの。

だからこの季節が恋しくなるのかもしれない。


でもなぜかこの季節は心が乱れる。

夏が終わり気持ちをなで下ろした途端に、とつぜん秋は訪れる。


受け入れる準備が整っていないのに 強引に押し寄せてくるから。


ようやく心の準備が整っても、秋の残りはわずかしかない。

そしてまた過ぎ去っていくのだろう。

音もたてずに……

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