NAMELESS

@aya08

第1章

第1話

「助けて……! 助けてよ……! 」


辺り一面が漆黒色の世界の中で、そんな不明瞭な声が響く渡る。とても弱く儚い少女を想わせるその声は、泣きそうな、今にも消え入りそうな声だった。


私はその声の聞こえる方向に向けて走る。


「助けて……! 助けて……! 」


私がその声に近付くと共に、声の大きさも大きくなっていく。


後少し……。

後少しで手が届く。

そんな気がした。


だから私はその声が響く方向に手を伸ばそうとする。だけど手を伸ばそうとすると、私の体は漆黒の闇の中に落ちていく。


手を伸ばすと、私とその声の距離が、とても手が届かない距離にいることをはっきりと理解してしまう。


あなたは一体どこにいるの?


その声への疑問を心の中で問いかけながら、漆黒の闇へと落ちていった。


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