テスト対策

今、テスト期間真っ最中だ!

テスト期間中はノルマを出しはするものの、

ほとんどの生徒は、自習をしている。


うちの塾では映像授業を採用していないから

全員が紙とシャーペンで

カリカリと問題を解きまくる。


問題を多く解くのを生きがいとしている生徒であれば、

1時間でプリント20枚くらいをこなす。


そんなこんなで、テスト週間の間は、私たち講師は

授業をするわけではないので、とても暇だ。


そこで私は、テスト勉強を黙々とやっている生徒たちの様子を

ずっと観察していた。


すると、以前から成績がずっと伸びていない生徒と

やたらと目があうことに気づいた。


私はその生徒に向けて

「オレを見るな、プリントをみろ!」と

言うのだが、数分するとまた目があう。


これはもしかすると

私が何かヘンテコなオーラを出しているから

いけないのかも、あるいは気づいていないけど

私の鼻から鼻毛が出ているとか

もしかすると、歯に海苔がついているのかもしれない!?と、

急に恥ずかしくなってきた私は、

教室の後ろに移動して生徒に隠れて身だしなみチェックをした。


するとそのやたらと目の合う生徒の視界から私が消えたからか

彼女は集中してプリントに向かってカリカリとシャーペンを動かし始めた。


やはり私が原因で集中できなかったのかなと思いつつも

何がいけなかったのかなと考えた私は

そっと彼女の背後に近寄って

何の勉強をしているのかを覗き込んでみた。


するとそこには、とても上手に描かれた

美少女とアンパンマンの絵があった。


そこにいたアンパンマンは、どうやらお腹をすかせた美少女に

顔の一部を恵んであげたようで、頭が少しかけていた。


とても上手にかけていたので、私は彼女の手元にあったプリントを彼女から奪い取り

他のページも見て見た。


するとそこには、明朝体で「薔薇」という美しい文字が

描かれていた。


私は思わず「うまい!」と感心の声をあげそうになったが、

それをぐっと飲み込んで、そのプリントにはなまるをした。


彼女は申し訳そうな目で私を見ながら、にっこりと微笑んだ。


高校入試にデッサンやら漫画を作る問題が出たら

きっと彼女は抜群の成績で合格できるんだろうなと思いつつ

監督席に戻った私は、机にあったメモ用紙に

ドラえもんの絵を描いた。


そして私は彼女には負けたくないと、

心の底でメラメラと闘志を燃やした。

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