読書老人
80歳くらいのおじいさんが
本屋さんで一人、黙々と立ち読みをしていた。
まるで宝の地図を見ているかのように
熱心に、何度も何度も読み返していた。
たまに笑顔をのぞかせながら、そして渋い顔をしながら
その本の世界に完全に入りきっていた。
少し離れていたところからその老人の姿を見ていた本好きな私は
その老人が読んでいる本が何なのか、すごく気になった。
何度かチラ見をするも私の距離からは
その本が何であるかは分からなかった。
そこで私は、お目当ての本を探している素振りをしながら
少しずつその老人に近づいていった。
その老人の目には本以外に何も見えていないのは明らかだったので
ものの数秒で、私はその老人のすぐ隣に陣取ることができた。
そしてその老人の読んでいる本の背表紙が視界に入るように
何かを探しているふりをしながら
書棚の下の方から、少しずつ上の方へと目線を動かしていった。
ウンウンと、頷く老人の持つその本の表紙の一部がチラリと見えた。
そこには太字で「終活」と書かれていた。
この老人は死ぬ準備をするための本を読んでいたのだ。
老人は前に読んだであろうページを読み返しながら、
小さくため息をついた。
そこに何が書かれていたのかは分からなかったが
少し寂しい気持ちになった。
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