序章

Prolog

遥か昔、まだ国が四つしかなかった頃。

八人の偉人が、それぞれ一つの兵器を造り、国を治めた。


偉人と呼ばれた人間はいつしか他界し、そのうち「兵器」と呼ばれた彼らは「伝説」となり、ある所では恐れられ、ある所では祀られていた。

意思を持った彼らは、長く厳しい戦いの後深い眠りに着き、戦いは続くものの今の時代は以前より平和が保たれていた。


国が八つに分かれてから数百年が経った今も尚、兵器達は何故造られ、何を思ってこの世に残されたのかと真実の全てを知る者は誰もいない。

もし再び彼らが一度に目覚めたその時は、それはこの世の異変の始まり。

災いの予兆となるだろう。



なんて、そんな馬鹿げた話は今の時代では年寄り以外つまらない噂話にしか聞こえない。

俺だってそんな事は物凄くどうでもいいのさ、面白おかしく生きて派手に死ねるならそれでいい。

異変だとか予兆だとか、俺にとってはそれすら人生の暇潰しでしかないのだ。

「退屈」が、人生で一番無駄な時間なのだ。


突然、ぐーっと派手に腹の音が静かな室内に響き渡った。

そういえば花の世話に夢中になって、朝から何も食べていなかった事を思い出した。


「...飯食いに行くか。」


古い絵本を閉じてテーブルに放り投げれば、財布をポケットに突っ込んだ。

ドアノブを引いて鍵を掛ければ、人で溢れる城下町を目指して人気のない道を歩いた。



毎日が退屈でしかなかった。

俺にとって「暇」と「退屈」は、人生で一番無駄な時間でしかなかった。

平和だけでは物足りず、善悪問わず何でもいいから面白ければなんでもいい。

中途半端な期待をしながら、何か起こるのを毎日待ち続けた。



予兆も異変もない。あるのは退屈だけなのだ。

あの餓鬼が此処へ来る、その時までは。



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