第三十六話 救出編㊱

くく:ね、こういうのはどうかしら


 ネットの空間でくくさんが提言した。


くく:今日は金曜日よね?

NISHI:そっすね。明日は休みっすね

くく:ウィルキン君は何か部活とか入ってるの?

ウィルキン:いや、入ってない

くく:塾は?

ウィルキン:行ってない。行っても俺の頭の悪さは治らなさそうだし

くく:ということは、土日は何もないということよね?

ウィルキン:そうなるな

くく:じゃあ、明日、明後日で頭を冷やすってのはどう?

くく:来週の月曜日、休む、と決めつけないで、この土日を使って

くく:頭を冷やすの

くく:どう? ウィルキン君


 しばらくの間がある。

 ウィルキンさんが発現する。


ウィルキン:たぶん、二日間の時間があっても、俺の気持ちは変わらないと思う

ウィルキン:そんな中途半端な気持ちだったら

ウィルキン:アヤメを憎く思ったりしてないと思う

くく:やっぱり駄目か…

ウィルキン:でも、くくさんが言ったことは頭にとめておくよ

くく:アヤメさん、大丈夫?

くく:辛かったら退室してもいいんだよ


 くくさんの提案にアヤメこと女子生徒は強気な言葉をアバターに吐かせる。


アヤメ:大丈夫

アヤメ:これは私とウィルキンさんの問題だから、しっかりと受け止めないと

アヤメ:いけないって思ってる

アヤメ:それより、くくさんとNISHI君にこのゴタゴタを巻き込ませて

アヤメ:悪いと思ってる

NISHI:自分は大丈夫っすよw

くく:私も平気

くく:スズカさんは大丈夫?

くく:気疲れしてない?


 私は必死になってタイプした。


スズカ:大丈夫です

スズカ:私はアヤメさんとメル友ですから

スズカ:何かあったらLINEとかで連絡します


 ここで私は女子生徒との繋がりをさり気なく書き込んだ。

(このカフェ10代では私は新参者扱いだから、気を付けなくては)

 そう思って発言をした。

 私の発言に同調するようにして、女子生徒もアヤメというアバターを使って、私とモミカさんの関係を発言する。


アヤメ:あたしとスズカさん、モミカさんはスマホでいつでもやり取りできるから

アヤメ:心配しないでください


 思い出したようにスーツ姿のNISHIさんも発言する。


NISHI:そういえば、モミカさんの件ってどうなってんすか?

NISHI:なんか、ヤバイことになってるらしいっすけど


 くくさんが即座に対応する。


くく:モミカさんのお母様が初めてブログに文章をあげてから

くく:進展はないわね

くく:いい方向へ向かってればいいのだけど

NISHI:そっすか

NISHI:助かるといいっすね。モミカさん


(そのために女子生徒は告白され、いじめを受けている)

 そう思うのだったが、まさかそんなことを言えるわけがなかった。

 また、言っても信じてもらえないし、言ったところで女子生徒に襲いかかる苦難が軽減されるとは思えなかった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る