順列救済

ろく

プロローグ 救済編

 私は夢を見た。

 次に助けることができる女の子の夢だ。

 夢の中の彼女はお世辞にも美人と言えなかった。何よりも太っていた。

 しかし、そんなことは関係ない。

 次に私がなすべきことは彼女を導いてやり、助けることだ。それが私が、いや、私の好きな人を救ったこの事象への恩返しである。

 夢を見た次の日。

 私は制服を着て、家を出た。が、高校へは行かなかった。

 彼女が通っている高校の近隣のファミリーレストランへ入る。

 ドリンクバーを注文し、時間を潰した。昼時にはピザを店員に頼んだ。

 長時間、居座り続ける私に店員が何か話し掛けてくるかもしれないという恐れはあった。が、私が店員に長時間、店に滞在していることを指摘されることはなかった。

 夕方近く。

 季節柄、日が沈むのが早い。すでに、外は薄影になっている。

 私は席を立ち、会計を済ませた。ファミリーレストランを出る。

 私は真っ直ぐに彼女が通う高校へ行き、校門の前に立った。

 校門からは次から次へと生徒達が吐き出されていく。

 校門の前で十分ほど待っていると、目的の女の子が見えた。私はあわてて、彼女の後を追う。

(ここは冷静に。そして、静かに話し掛けるんだ。油断してはならない)

 私は彼女の背後からゆっくりと声を掛けた。つとめて静かに。

「ちょっと」

 そんなふうに私は声を掛けた。

 彼女は怪訝けげんな顔付きで私を見る。私と面識があるかどうか記憶を探っているようだ。勿論もちろん、彼女との接触は今回が初めてである。

 不審な彼女に対して私は淡々と言った。

「誰かを守りたいと思わない?」

 私は彼女の瞳をジッと見つめた。

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