Story:1

今日からわたしには、「JK」というブランドがつく。昨日、『入学おめでとう』と電話をかけてきた祖母になんとなく「明日からJKだよ。JK。花のJK。」と言ったら『あぁ。じぇ、じ、じょ、じぇーあーる?電車通学がんばってね。』と言われた。日本旅客鉄道株式会社ではない。女子高生だ。

まぁ、JKとは言ってもここはド田舎。しかもわたしが行く高校は偏差値57の一応進学校。紺色のスカートの長さはひざ丈だし、ネクタイは何の柄もなく地味な、くすんだブルーのような色。中学の制服のほうがまだマシだったような気もする。

朝、自転車で最寄りの駅に向かう途中、歩道の真ん中を茶色い毛虫がうにょうにょと這っていった。わたしは慌てて急ブレーキを踏んだ。そして、ぼーっと空を見ながら毛虫が通り過ぎるのを待った。わたしは、虫や動物を簡単に轢けるタイプではない。虫はそんなに嫌いじゃないし、動物は好きだ。

駅舎は四畳半ほどしかなく、ホームもたった一つの小さな無人駅に着くと、これから同じ高校に通う同中の先輩がいた。一応

「おはようございます。」

と挨拶しておいた。中学時代、先輩はなぜだか知らんがバカみたいに敬わなければいけない存在だった。そう、バカみたいに。気に入らない後輩がいると脅してくるようなやつ...じゃなくて先輩もいた。まぁ、今目の前にいる黒いリュックを背負った先輩はそんな人ではなかった記憶があるが。初日だし、挨拶しておくに越したことはないだろう。

駅には他にも高校生らしき人が5、6人と大人が3、4人いた。わたしがこれから通う高校の制服を着ていたのは、わたしとその先輩だけだったが。

五分ほど待っていると電車が来た。あ、いや、正確には電車ではない。レールバスだ。線路の上に電線は無いし、車体の上にパンタグラフもない。小学生のとき、社会科見学で鉄道会社に行ったとき聞いた話だと、ディーゼルエンジンなるもので動いているらしい。...よくわからない。とりあえず、電車ではない。あ、ばあちゃん。そういえば、わたしが乗るのはJRじゃなくて、穂灘鐵道ほなだてつどうだったよ。


わたしはこれから、高校生活という世にも奇妙な(?)時間に足を踏み入れる。

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