第15話『商店街冬の防犯・防火対策名誉委員 ヒーロー”ハチカヅキン”』
本日は『駅前商店街』より火災予防にかかせない拍子木をお貸しいただいた。
「火の~用~心! マッチ一本、火事の元~!」
キンッキンッ
駅前商店街に、怪人”犬王モノー”(イヌオウモノー)の邪悪な叫びがこだまする。
足元には人質の花男くん(フレンチブルドッグ 8才 ♂)が付き従い、たまに立ち止まって道端の匂いを嗅ぐのである。
エチケット袋の準備を怠らない怪人”犬王モノー”は、花男くん(フレンチブルドッグ 8才 ♂)のふんばる気配がないかを確かめる……今回は大丈夫のようだ!
12月ともなれば空気の乾燥は激しく、今でも暖房に火を使う家は思いのほか多いのである。
だからこそヒーロー”ハチカヅキン”は古来より伝わる防火アイテム”拍子木”を打ち鳴らし、油断大敵を呼びかけるのだ!
「火の~用~心! マッチ一本、火事の元~! あ、差し入れどうもありがとうございます!」
キンッキンッ
駅前商店街に、ヒーロー”ハチカヅキン”の正義のおたけびがこだまする。
そこに、商店街では数少ない夜も営業している『大賀寿司』さんから、売れ残りの鯖寿司と(少し乾燥した)アボカドの乗ったカリフォルニアロールを差し入れに頂きお礼を述べるヒーロー”ハチカヅキン”である。
「『大賀寿司』の鮨詰めは10時以降半額! 冷めても美味しい鮨詰めは夜食や夕食にもぴったりだ! そして火の~用~心! マッチ一本、火事の元~!」
キンッキンッ
帰宅路のお父さんに『大賀寿司』をアピールしながら防災の仕事もこなすヒーロー”ハチカヅキン”はデキる男である。
ヒノヨウジンマッチイッポンカジノモトー。
火の用心を呼びかける声が夜空に煌めいて消える。
一通り商店街周辺を回り終えた『商店街冬の防犯・防火対策名誉委員 ヒーロー”ハチカヅキン”』は懐に拍子木を仕舞うと、『商店街冬の防犯・防火対策名誉副委員 怪人”犬王モノー”』が待つ休憩所へ、直し差し入れを両手に構えて侵入する!
サバズシーカリフォルニアロール♪
鯖寿司とカリフォルニアロールが休憩所に並べられるアトモスフィアが伝わる音がした。
「グワアアアアア! 鯖寿司が美味しいっ! だがこちらも『上田酒店』からまたも甘酒(1升ビン)を差し入れていただいたのだ! 灼熱の甘酒を喰らうがいいヒーロー”ハチカヅキン”!」
言うが早いが、怪人”犬王モノー”がストーブの上の鍋で温めていた甘酒をコップに注いでヒーロー”ハチカヅキン”へ気を付けて手渡すのだ!
「ウォオオオ! 熱い! 熱いぞ甘酒! だがカリフォルニアロールは冷たい! 一緒に食べればこの問題は解決だ! ゴクリ カリカリ フォルフォル !? なんと鯖寿司が残り2切れっ!? まだ私は1切れしか食べていない……! 許さんっ! ヒーロー”ハチカヅキン”は8切れの鯖寿司を正しくはんぶんこできる優しい皆を応援するそ!! 怪人”犬王モノー”ゆるさんっ!!!」
その夜。
集会場の戦いは、花男くん(フレンチブルドッグ 8才 ♂)を迎えに---花男はアボカドをもらって嬉しそうだ---商店主の福本さんが来るまで続いたのである。
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