第3話『新製品タラバ蟹使用クラブサンド! 本日は絶品プリン100円引き! 喫茶神音(かのん)』

 喫茶店『神音~かのん~』


 本日のパワーアップアイテムは喫茶店『神音~かのん~』から提供いただく手作りプリンである。


 甘くて柔らか、バニラの匂いがほんのり香ってお口でとろける、それがプリン。


 プリンの定義は”主な原材料がタマゴと牛乳で甘いこと”だが、それゆえに作成方による種類の違いを知る人は少ない。


 第一の作り方は焼きプリン。

 太古の昔から伝わる伝統的な製法で、タマゴ:牛乳を1:2で混ぜて砂糖を加え、水を張った下板に乗せてオーブンで焼くだけである。

 火加減が大事だ!


 第二の作り方は蒸しプリン。

 これも大昔からの製法で、上記のタマゴ・牛乳・砂糖を合わせて、蒸し器で蒸すだけである。

 こちらは弱火で蒸せばOKで、焦げることもないぞ!


 第三の作り方は冷やしプリン。

 近代作成された製法で、ゼラチンなどでタマゴ・牛乳・砂糖冷やして固めるだけである。

 冷蔵庫があればいいのだ!



 今回特別に喫茶店『神音~かのん~』のご主人(神田 太さん 41歳)のご厚意で、厨房をお借りしてご指導までお願いできた。


 ご主人の神田何度か注意を受けながらもヒーロー”ハチカヅキン”は、やっとの思いで『茶碗蒸しの入れ物に入ったプリン』を完成させたのだ!


 中には『栗きんとん』、『カットしたパン』など具材っぽく見えるものと、『代用品が見つからなかったのでそのまま乗せた小エビ』を散らして蒸し上げた一品である。


 さっそくご主人(神田 太さん 41歳)にお礼を告げ、まだ熱々の『茶碗蒸しの入れ物に入ったプリン』に『新製品タラバ蟹使用クラブサンド! 本日は絶品プリン100円引き! 神音~かのん~』のステッカーを巻きつけてカメラスタッフの目の前でグルグル回したヒーロー”ハチカヅキン”は、寒空の下で人質の花男くん(フレンチブルドッグ 8才 ♂)の身代金を要求する怪人”犬王モノー”(イヌオウモノー)の横に、そっとスプーンと『茶碗蒸しの入れ物に入ったプリン』を添えた!


チャワンプリィイイイン!


 まるで茶碗蒸しと思ったままプリンを食べてしまったようなトンチンカンな音がスピーカーから弾け飛ぶ。


「ギャアアアアアアアアアア!? あ!? !? あま、あまいっ! 茶碗蒸しだと思ったのに凄く甘い! おのれ”ハチカヅキン”! クンクンッ パクッ あ、これ パクパク ムシャ ……プリン!? 茶碗蒸しと思ったのにプリン!! クワイかと思ったら栗きんとん、生麩かと思ったらカットしたパン。ここまでは素敵なサプライズだと褒めてやろう”ハチカヅキン”! だがなんで小エビだけはそのまんま小エビなのだっ!! すっかりプリンだと思って食べていた所にこの仕打。もはやメンタルポイントがからっけつ……ダメだ……戦う気力が全く湧いてこない…撤収…撤収しよう……」


 ゆっくり言い終わるやいなや怪人”犬王モノー”は、まだ抱えていた花男くん(フレンチブルドッグ 8才 ♂)をグッタリと下ろすと---花男は茶碗蒸しの容器に鼻を突っ込んだ---日陰のカタツムリのような速さで逃走していった。


 戦いは終わったのだ。



「新製品タラバ蟹使用クラブサンド! 本日は絶品プリン100円引! 喫茶神音~かのん~さんの絶品プリンは、新鮮な牛乳と契約農家のタマゴを使用! 滑らかで重厚な味わいはきっと皆をとりこにするぞっ! ヒーロー”ハチカヅキン”からのワンポイントアドバイス:バニラエッセンスは入れすぎると物凄く苦いぞ。皆は気をつけようね!!」

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