第9話『大好評写真はんこ! はんこ名刺もあり升! 大黒印章堂』

『大黒印章堂』


 ご当地ヒーロー”ハチカヅキン”は正義の味方である。


 今回は特別に、そのパワーアッププロセスを余すところなくつぶさに観察していただこう!



ゴトウチヒーローハチカヅキンヒーローショーガハジマリマスゥウウ!


 人の少ない時間帯にご当地ヒーロー”ハチカヅキン”のヒーローショーが始まるかのような音が商店街のスピーカーから飛び出すと、ヒーロー”ハチカヅキン”は、スタッフと共に各店舗の皆様にご挨拶をして回るのだ!


 道行く人々にアピール。

 子供には握手とヒーロー”ハチカヅキン”ステッカーをプレゼント!


 そのまま本日予定の店舗前へゆっくりと近づくと突如


「ピーピーピーピーピー!」


 と鳴り出すブレスレットを耳に当て、大きな声で応答する!


『もしもし、こちらヒーロー”ハチカヅキン”!

 なんだって!? 怪人”犬王モノー”が人質(フレンチブルドッグ 8才 ♂)を取って立て篭もり、商店街に身代金を要求しているだって!?

 それは大変だ! ”犬王モノー”は凄い強さの怪人で、特に犬を抱っこしているときはこのヒーロー”ハチカヅキン”だって勝てないほどパワーアップするんだ! 

これは私もなにか凄いパワーアップアイテムを身に着けないと、商店街の平和を守れないかもしれない!

 ……だけど、パワーアップアイテムなんてどこにあるんだろう!?』


 ヒーロー”ハチカヅキン”が、周囲のお客様に大変弱ったアピールしながら崩れ落ちた。


 だがそこで、ヒーロー”ハチカヅキン”の背後のお店の自動ドアが開く!


イラッシャイマセー。


 よもや合成された電子音声がいらっしゃいませを告げるような音が鳴り響く。


 そのお店、『大黒印章堂』から出てきた店主(吉田 卓さん 67歳)は、スタッフの掲げるカンペをジッと見つめ、かねてより用意されていたセリフを一字一句間違えぬよう細心の注意を払って喋る!


「お、おお、店の前で泣いているのは、誰かと思えばご当地ヒーロー”ハチカヅキン”じゃないか! なになに? パワーアップアイテムがなくて困っている? よーし。それなら私の店の大ヒット商品”プリクラ写真はんこ”(写真代込1800円)を持っていくといい! これさえあれば、きっと怪人”犬王モノー”にも負けないぞ!」


 言い終わるやいなやプリクラ写真はんこを手渡した『大黒印章堂』店主(吉田 卓さん 67歳)は店にそそくさと引っ込んだ。

やはり恥ずかしかったらしい。


「ありがとう! 『大黒印章堂』さん! この大ヒット商品”プリクラ写真はんこ”があれば、”犬王モノー”だってへっちゃらだ!」


プリクラ写真はんこに、

『大好評写真はんこ! はんこ名刺も! 極秘ルートで象牙も入荷! 大黒印章堂』

の大きなハンコが押されたステッカーを貼り付け、ヒーロー”ハチカヅキン”は決戦の地『スーパー億万』駐車場へ駆けつける。


 今や遅しと待ち受ける怪人”犬王モノー”のホッペタへ、プリクラ写真はんこ(おめめパッチリハチカヅキンバージョン)を叩きつけるためにだ!!


 戦いは始まる前なのだ。


「ご当地ヒーロー”ハチカヅキン”は、商店街の皆様の温かいご支援で成り立っております! 励ましのお便り、疑問、質問等ございましたら、『駅前商店街 ご当地ヒーロー”ハチカヅキン”係』までお送りください。抽選で10名の方にサイン入り色紙・ステッカーセットをプレゼント致します!!」

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