第5話『鮮度抜群の大衆寿司! ランチタイムセール中! 大賀寿司』
今回ご提供頂けたのは『大賀寿司』から鉄火巻(太巻き一パック一本入り600円)である。
アジ、サバ、アナゴなどのご提案もあったのだが、青魚は意外と好き嫌いのある方が多い。
そしてアナゴは意外とお高いこともあって、ここはやはり巻きずしの大御所たる鉄火巻のご登場と相成ったのだ!
寿司。
特に持ち帰りのできる寿司といえば、誰しもが思い浮かべるであろう昭和の風景、ネクタイを頭に巻いた酔っぱらいが千鳥足で家路につくときに持っている十文字の紐でくくられたアレ。
アレが寿司…折り詰めにされ持ち帰りやすくした、いわゆる寿司折りである。
何故寿司折りが、酔っ払いが帰宅するさい、家族への迷惑料としてお持ち帰りされるようになったのかは定かでない。
だがまず昭和以前の時代では、酔っ払いが発生するような時間帯に営業している店舗でご家庭へのお土産となるようなものを販売してる店はことごとくが営業時間を終了しており、
「遅くなって心配かけたのに手ぶらで帰っては家族の視線が痛い、ひいては一家の大黒柱としての尊厳が危ぶまれる。解決策としてここは1つ何かお土産を買って帰らねば!」
と、血中アルコール濃度高めの頭で必死に考え辺りを見渡した結果、意外なことに”結構夜深くまで営業している”寿司屋の存在に気がつくことになるだろう。
これは『酒の肴』という言葉もある通り、寿司というのは酒と共に売り出すものであり、当然酔っぱらいの発生する夜遅くまで営業することになるからだ。
よって、家族への贖罪のお土産を求める酔っ払い達は、夜遅くまで営業し、持ち帰りまで出来る寿司屋に立ち寄って(もしくは寿司屋で飲んでから)寿司折りを買い求めると、あの昭和のTVで幾度となく繰り返された、
『ネクタイを頭に巻いた酔っぱらいが千鳥足で家路につくときに持っている十文字の紐でくくられたアレをブラブラさせながら帰宅する』
という風景を繰り広げることになるのである!
ビバ! 寿司屋!
スポンサーである『鮮度抜群! 大衆寿司! ランチタイムセール中! 大賀寿司』のステッカーを、つまみ食いできないよう口に貼りつけたご当地ヒーロー”ハチカヅキン”は、人質の花男くん(フレンチブルドッグ 8才 ♂)の身代金を要求する怪人”犬王モノー”(イヌオウモノー)の背後から千鳥足で忍び寄ると、豪快な手つきでパックから鉄火巻を取り出し、その口元へ叩き込む!
テッカマキィイイイイイイ!
まるで生命体に鉄火巻が叩き込まれたときのような音をスピーカーが発した!
「ギョオアオモゴゴ! モグモグモグモグ。あ、お醤油下さい。ムシャムシャムシャ…あ、熱いお茶までっ!? 美味い! 美味すぎるっ!! 大賀徹平さんが40年前に創業された『大賀寿司』の、鉄火巻(太巻き一パック一本入り600円)を食べさせられてしまっては美味しすぎてほっぺたが落ちるわ! さらに満腹になって身動きも取れないではないか!? ええいこのままでは戦うことなどできんっ! 後方に向けて前進っ! 全速前進っ!!」
言い終わるやいなや怪人”犬王モノー”は、食べ物の匂いに鼻をヒクヒクさせる花男くん(フレンチブルドッグ 8才 ♂)をそっと下ろすと---花男はヒーロー”ハチカヅキン”の持つもう一本の鉄火巻(太巻き一パック一本入り600円)を狙っている---脱兎の勢いで逃走していった。
戦いは終わったのだ。
「鮮度抜群! 大衆寿司! ランチタイムセール中! 大賀寿司さんの鉄火巻(一パック一本入り600円)があれば、食べ盛りのお子様も大満足だ! さらに『酔っ払って家に帰ると奥さんの視線が怖い』そんなお父さんは『大賀寿司の寿司折り』(10貫1200円)をプレゼントしよう! ヒーロー”ハチカヅキン”のお勧めだ!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます