猫人小伝妙その1
ヘンネンホーファーという猫の話をしよう
ラウプホルツ公国に仕えた軍人で、1兵卒から少佐にまでなった人物だ
(退役後も「少佐」と呼ばれていた)
そして、ルードウィヒ公の元で諜報活動を任せられていた
彼は娼婦を貴族に斡旋して、そこから得られる情報でルードウィヒ公やその側近達のゴシップを握ることで、のし上がったようである
というのは、同時代の資料に、ほとんど痕跡が残されていないのだ
(公側も、このいかがわしい人物を利用していた)
さて、当時のラウプホルツ公国では、不可解な事件が起こっていた
公位に就くはずの人物が、次々と謎の死を遂げたのである
そして、ルードウィヒ公1人だけが残った
1説によれば、自分の息子エドムンドに公位を継がせようとした、ルイーゼ
(彼女はルードウィヒ公の継母であった)
の陰謀とも言われる
ルードウィヒ公の死期を察したヘンネンホーファーは、おそらく陰謀を知っているこをちらつかせて、ルイーゼ側に近づいた
ルイーゼ側も、この人物の利用価値を見抜いていたらしく、ルードウィヒ公の死後、外務大臣に出世している
やがて彼は、1人の少年の運命に関わる事になるが、それは別の話
憎まれっ子世にはばかるというが、彼も外務大臣を引退した後は、悠々自適の暮らしをしていた
やがて、ラウプホルツ公国に革命の嵐が迫った時、彼は
『お前はあの少年を殺したニャ』
と群衆に囲まれたが、泰然としていたらしい
群衆は使い走りだと思った彼が、そういう『秘密』をもって立身出世をとげた人物とは、ついぞ気付かなかったのだ
ヘンネンホーファーは61歳で亡くなった
死因は心臓発作で、穏やかな顔をしていたという
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