2. 私の名前のこと


 うちは五人家族。


 まずは私。第一子で長女の、黒川雲雀ひばり


 そして小学四年生の弟、則宏のりひろ

 二年生の弟、織浩おりひろ


 そしてパパの名前は則夫のりお

 ママの名前は詩織しおり


 分かった? 弟の則宏と織浩はパパとママから漢字をもらってるのに、私だけ、共通している漢字がない。家族の誰とも。


 私だけだよ。


 私だけ、家族じゃないみたい。



 雲雀はママが付けた名前だけど、実は則宏も織浩もママが付けた名前。どうよこれ。ママが私だけ仲間外れにしてる感じがする。



 ママにとって、私は邪魔な存在。女の子より男の子が欲しかったんだよきっと。



 私が学費が高い私立の中学行きたいって言った時も、認めてくれたパパと喧嘩してたし、結局入学が決まると、当てこすりのように専業主婦を引退して、仕事を再開した。


 私さえいなかったら、専業主婦のまま則宏と織浩をかわいがって暮らしていられるんだ。


 要するに、今日の事は卒業旅行だけじゃなくて、小さい頃から私の不満が溜まりに溜まってきた結果なんだ。




 玄関から出て、鍵を閉める。やっぱりママが追いかけてくる気配はない。卒業旅行のためにコツコツ貯めたお小遣いとお年玉、計五万円。しばらくの間家出する資金はある。



 とはいえ、家出して行くあてがあるわけでもない。取りあえず私は、駅に向かった。

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