孤独潰し

とりをとこ

何故か。

ニタニタ笑うおっさん。

キャバクラで働いているような女性。

ピアスをたくさん付けている蛇のような少女。

電車がやってくる。

僕は早朝の人が疎らに散乱する大きな駅のホームにいた。

電車の強化硝子にはなんとも気にくわない顔の男がいた。

僕はその人をすっと見つめて、夜風に吹かれて頭がはっきりしてその人が僕なのだと気付く。

警備員。

ケバい化粧のオバさん。

駅員を模した録音の音声が他のホームから聴こえてくる。

何故か、ホームにいるホームレスの男。

歩き方がおかしい。

風が冷たい。

今は冬だった。

何故ホームで電車を待っているかを思い出そうとしている男。

これから起こることを思い出そうとしている男。

両方とも僕を指している。

とうとう、僕のいるホームに録音が流れる。

ごうごうと、それはやってきた。

鈴の清らかな音がどこからか聴こえてきて、数多くの人たちと共に僕は乗り込む。

中は暖かかった。

気分に余裕が生まれて僕は周りに視線を移した。

皆、談笑していたり1人でスマートフォンに没頭している人。

多くの人。

僕は何故か怖くなって、目を閉じた。

レールを走る音。

次の駅を伝える録音。

次に目を開けると、何故か吐く息が白くなっていた。

あんなに暖かかったのに凍えるような寒さに瞬間的に切り替わっていた。

談笑していたり1人でスマートフォンに没頭していた人たちはみんな凍え死んで、生きたままの形で残っていたミイラのようになっていた。

僕は何故か列車の床に伏せて電車が地をかける音に聴き耳をたてた。

目を閉じて鼓動を感じとる。

僕はその音に包まれて。

何故か、僕ら存在して、何故か、僕らは死んでいく。

何故か、何故か、何故か。

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