垣間見る一場面 SW2.0

黒染めの淋し夢

第1話 宴の中で

◯注意事項

・連続しての物書きモード。内輪ネタです。ご注意を。

・いつかやった卓のその後の物語。

・今回はPC達を借りられたので、お祝い的なもの。とは言え、腕前自体は落ち込んでるので期待はしないでください。

・内輪ネタなんて見たくない人は回れ右して戻るボタンをクリックだ!


◯登場人物

イル[グラスランナー・男]

コリン[ドワーフ・女]

クレリア[ドレイク・女]

リュール[ナイトメア・女]

グローム[ドワーフ・男]

ダンリ[ハイマン・男]

ヨーニャ[バジリスクウィークリング・女]


〈亜空間・夢現の幻亭〉[tb:夕方]


「よーし、じゃあ乾杯!」

「「「カンパーイ!」」」

掛け声に合わせて、各自が持ちあわせた杯を互いに打ち合わせる。煽るように飲む者、チビリチビリと飲む者、傍にいる誰かと話しながら飲む者と、様々な光景が広がる。

ラクシアではないどこか。亜空間と呼ばれる異相次元。そこに建てられた冒険者の店、『夢現の幻亭』では、とあるパーティが、先日新たに仲間になった少女を迎え入れるための宴を開いていた。

酒を飲める者は酒を。飲めぬ者はジュースを注いだ杯を持ち、仲間との会話を楽しむ。普段は各自が好きに動いている嫌いのある自由なパーティだが、今日は多くの者が集って盛り上がっている。


騒ぎを聞きつけた他の冒険者達も混じった大宴会の中、イルとクレリアはヨーニャと杯を突き合わせていた。

「でさー、オイラが居なくなった後、斥候としての腕前はどんなもんなのさ? (*'▽'*)」

「実践する機会もあったから、鍵開けとかはそれなりに出来るようになってるわよ」

「うんうん(*'-')ノ」

ふふん、と自慢気にするヨーニャに、ほほう、とイルが悪戯っぽく笑う。そのやり取りを優しくクレリアが見守る。

傍から見ると、ちびっ子2人にお姉さんが自慢話をしているようにも見える。だが、実際には一番年少なのはヨーニャであり、ちびっ子2人のほうが年上であるのだ。……1人は、年齢不詳ではあるが。

「鍵開けと危険への感知に関しては、センセイにも負けない気がするわ!」

「へぇ、なら今度テストしてみよっか」

無い胸を張るかつての弟子に、斥候としての腕がかつての比ではなくなっている師匠は内心ほくそ笑む。今度仕掛けるテストの内容はどんなものにしようか、と彼は思考を巡らせる。

「……あんまり、酷いテスト、ダメなのです。(*'-')」

「いや、そこまで酷いテストはしないつもりだよ? (*'▽'*;)」

ヒト、とイルの額にクレリアの細い指が当てられる。まるで心を読んだかのようなその行為に、イルはドキリと顔を引きつらせた。ヨーニャを迎え入れる事となった事件の際、ヨーニャを自分の庇護下に入れると追手のバジリスクに宣言したのはクレリアである。

ある事情で幼子のような姿をしているが、それでも彼女は三桁の年数を生きてきている、上流階級の出身でもある。その言葉には、不思議と逆らい難い雰囲気がある。

「……センセイとクレリアさん、何してるの?」

小声でのやり取りが聞こえていなかったらしく、ちびちびとイチゴミルクを飲んでいたヨーニャは、首を傾げてそちらを見やるのだった。


「あっちはあっちで盛り上がってるようだの」

「そうね。話によれば以前からの知り合いだったり、共感できるところがあるって聞いているし、その分盛り上がるんじゃないかしら」

きゃいきゃいと外見年少組が話しているのを眺めつつ、パーティの中では内面大人組であるグロームとリュールは、自分たちの飲み物を飲んでいた。

片や豪快に。片や美しく。どちらも酒を飲めるクチであるが、飲み方自体は対照的。

「相変わらず良い飲みっぷりね」

「おう。そっちみたいに品よくってのはできない質でな。気に障ったらすまん」

はっはっ、と笑いながらのグロームの謝罪に、良いわよ、と苦笑してリュールは返す。

宴が始まる少し前に合流してきた彼らは、若干だが仲間たちとは離れた位置に座っている。そのため、他の仲間達の様子を見ることができた。

「そうか、それは助かる。そういえば、確かコリンの嬢ちゃんとダンリも居たんじゃなかったか? あそこに混じっていないが」

「あら、本当。多分そこまで離れていないはずだけど、どこに行ったのかしら?」

気づけば姿が見えなくなっている仲間がいることに気づき、2人は辺りを見回す。他の冒険者達の姿ばかりが目に入るが、壁際に見覚えのある黒が見えた。

「◯×◆□!?」

「おう? 今の声……?」

「……ダンリの声よね?」


時は少し巻き戻る……。

「ねえ、やっぱり私気になります」

「……何が?」

ずい、とコリンは席に座っているダンリににじり寄りながらそう言う。

「ダンリさん、本当に男の人なんですか?」

「だから、私、は、男、だって、ば!?」

しつこいよ!? とばかりに悲鳴じみた叫びで返すダンリに、ずずい、と彼女は更ににじり寄る。

……その目は、微かに据わっており、頬はどことなく赤みを帯びていた。

「だってダンリさん、さっき言ってたでしょう? 性別は不明だって」

「や、だから、それ、兄弟、達の、こ――」

「性別、不明、だって!」

ずずずい、と一気ににじり寄りながら、ダンリの声を遮ってコリンは声を張り上げる。

その気迫に押され、彼は慌てて席から立ち上がる。周囲の冒険者達はなんだなんだ、と怪訝そうな表情でそちらを眺める。

「(……顔が赤い、目が据わってる。……酔ってる!?)こ、コリン、さん。時に、落ち着け。さっき、と、同じ、で、水、飲むと、良い!?」

「私はあくまれ冷静れす! 落ち着いてまふ!」

「どこがだ!?」※魔法文明語

手をわきわきさせながら近寄ってくるコリンに対し、ジリジリとダンリは後退りする。ドワーフらしからず酒に弱く、すぐ潰れるはずの彼女がなぜ酔っ払っているのか、と彼は混乱する頭で思考を巡らせる。

ふとその目線の先に骨付き肉に酒を掛けて、口から吐いた炎で焼き上げるというパフォーマンスをしている厨房担当の店員の姿が見えた。

「……さっきコリンさんが食べてたのってあのフランベ肉かぁぁっ!!? 飛びきってなかった酒の残滓で酔ったの!?」※魔法文明語

「何言ってるのかまかりませんが、やっぱり確かめさせてください!」

「人、前、で、脱ぐな、って、フェルドナルド、さん、から、言われて、るん、だって、ば!?」

やばいと感じて踵を返し、駆け出そうとしたダンリだが、ゴツンという感触と共に足が止まる。額に走る痛みに顔をしかめて前を見ると、店の壁が目の前に立ちはだかっていた。

横に逃げようとするも、その前にガシリと手を掴まれる。そのまま彼の身体は背中が壁に押し付けられるように動いていた。

「うふ、うふふふふふ……」

「ちょ、脱げ、ちゃう、って!?」

流石に仲間を殴るわけにもいかず(多分殴っても通じないが)、めくり上げられそうになる服の裾を必死に抑えようと自由な手の方で服を掴む。だが、悲しいかな前衛と後衛の力の差。ジリジリと服は捲り上げられていく。

周囲の冒険者達は「おぉっ!?」などと驚いているばかり。内心で助けてよ、と彼は吐き捨てる。

「た、助けてクレリアぁぁっ!?」※魔法文明語

思わず助けを呼ぶが、とっさに口に出たのは魔法文明語。此の場で通じる者はそう多くはない。

……だが。

「そこまで!」

「おおい、流石にそれはアカンぞコリン!?」

先ほどの叫び声で事態に気付いたリュールとグロームが、すんでのところで駆けつけ、コリンの手を引き剥がすのだった。

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