第4話
「──……ティア」
何か、声が聞こえる。
「……ラティア!」
ハッ、と目を開けると眼前に見慣れたロッカーがあった。ラティアは少し動揺する。
「どうしたの? ラティア。ぼーっとして」
声に驚き、横を見ると訊ねたのはイルだった。
「えっ……あ、ううん、何でもないよ」
「そう? なら先に行っちゃうよ」
何が起きたのか分からずにいたけど、一つだけハッキリしている。
(……戻ってきたんだ)
イルとユリカは更衣室から出ようとしていた。慌ててロッカーを閉め、窓を一瞥する。室内に明るい光が差し込んでいた。
「待ってよ、二人ともっ」
ラティアは、先のイルの言葉を聴いたのも今の言葉を言ったのも初めてではなかった。
(戻ってきた、だけじゃなくて時間も戻ってる……?)
ざわつく心を持ちながら二人の後を追うラティアだった。
イル、ユリカと共に次の講義がある教室へと向かう。ラティアは自身の手を見つめ、これまでの事を振り返る。お爺さんを助けた記憶はあるが実感が沸かなかった。
(本当に私はあの家に居たのかな? それとも幻だった?)
疑いの心を持って教室へ入ると、何故かざわざわと騒がしかった。生徒が全員、窓辺に立っている。
「ケン、どうしたの? 何か__ 」
不思議に思ったユリカが近くにいたケンに声を掛けるも、窓の外を見るなり言葉を止めた。
「ちょっと何? ユリカまで、どうしちゃったのよ」
訳が分からないとでも言いたげなイル。窓に近付く彼女に続いて、ラティアも同じように外を見やる。
瞬間、背筋に冷たいものが走るような感覚に襲われた。
「……黒、って事は確か高価な分類に入ってるよね」
イルがボソッと呟く。
室内の生徒が注目している視線の先には。小屋から離れ、あてもなく歩き回る一頭の黒い馬がいた。
(あの馬はまさか──…… )
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